所詮は女子校生に侘び寂の理解はできぬか。
15日目 洞窟前 テント
さて、今日もオークだろう、リベンジらしいし。
昨日も帰ってからミーティングして、模擬戦までして頑張っていた。
これが終われば街にいけるのだ、気合も入っているのだろう。
森で一番速いコボはもう敵じゃない、ゴブなら群れでも戦える、あとはオーク。
この森で最強の魔物。
街に行けば良い武器も手に入るだろう。
戦い方だって学べるかもしれない。
それに、俺と違ってLvはどんどん上がっていく。
オークまで倒せるようになれば、もうこの森で学ぶ事も無いだろう。
「今日で終りかなー」
まあ、街までは送っていく事になった。俺も町は見てみたいし、街までに何があるかも判らない。
魔物ならまだしも、盗賊、人間相手に委員長達が戦えるのか分らない。
未見の魔物もいるかもしれない。
オタ達は街にいるんだろうか?ビッチ達はその為だけに生きてきた。
でもオタ達だと街から追い出されてそうだよ?
朝御飯のお呼びがかからない、軽く稽古でもしよう。
杖を持って、歩きながら振る、振りながら歩く。
止まってはいけない。
力も弱い。
打たれ弱い。
だから速く。
手数を、
技を。
杖を伸ばす。
両手で中心を持ち、両端で突き、払う。
端に持ち替えて振り切り。
また、持ち替えて突く。
歩みは止めない。
一歩踏み出す勢いで振り。
横に踏み込む勢いで突く。
止まればやられる。
勢いが無くなれば倒しきれない。
止まれば囲まれやられる。
速く。
鋭く。
動きを止めない。
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「「「おおおぉ~、ぱちぱちぱちっ」」」
見られてたらしい、、、ちょっと、集中し過ぎてたみたいだ、、、ポーズとか付けないで良かった、、、ツケテナイヨネ?
「遥君は何か武術を習ってたんですか?」
武術に見えたらしい、杖を伸ばしたんで少林寺とか西遊記とかイメージで稽古したせいだろうか?
「いや、何もしてないよ。自己流?」
「そーなんだ、、、なんか様になってましたよ。」
時々、一人でカッコイイ殺陣考えて、やっていたのは内緒だ、決めポーズも秘密だ、マジで。
「朝御飯?朝御飯なの?」
「もちろん、お魚ですよ。」
今日も、良い日だ。お魚が美味しい。
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ゴブやコボを狩りながら森を進む、今日も茸は大漁だ。
「多分、茸が魔物の餌なんだと思うよ、その魔物を絶滅させちゃう人がいるから、茸が沢山あるんじゃないかなー?」
なるほど、それで魔物が多いし、洞窟の周りにはHP、MP回復の茸が有るから魔物が強い。筋は通っている。
「茸が多いから魔物が多くて、魔物が多いから動物が少ないのかー?皆殺しだな。お肉食べたい。」
そんなこんなと話しながら狩を続け、奥に進む。
もう、みんなLvは30を超えている、洞窟周りはLv上げに良い様だ。ここに住んでて上がらないんですけどね、俺だけ。
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ようやく見つけたオークはLv16、ちょっと強すぎ?
「いた、一匹目は貰って良い?」
「うん、気を、、、付けて?」
何故か疑問形で見送られた。
普通に歩きながらオークの前に出る、奇襲も強襲も無しだ。
杖を伸ばして右端で振り下ろされる棍棒を払いながら、左端で撃つ。
そのまま、身体ごと反転しつつ脚を凪ぐ。
倒れないがよろめいた、目を狙って突き棍棒で守ればがら空きの足を切り付ける。
オークの足を止め、後ろに周り込みながら棍棒を持つ手を突く。
繰り返し、攻め続ける。
狙いは目、足、武器だ。此方から攻めてオークに守らせる。
委員長達は決め手が無いことを悩んでいた、決め手が無いなら搦め手だ。
1つずつオークの選択肢を潰して行けば良い。
相手から来ない時は、奇をてらい、崩す。
オークの顔面にファイアを投げつけ、怯んだ隙に打ち込む。
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すでにオークは眼を潰され、棍棒も無くし、両手も動かず、足も引きずっている。
「止めは任せるから、大技を試してみ」
「ありがとう遥君、今日のはちゃんと参考になったよ。」
そう言って、オークを囲みに走っていった。飽きたから替わったのは内緒だ。内密だ。
今日のはって?昨日のあれは俺のせいじゃ無くない?
いや、だってさーオタ達の情報とかさー、、、、委員長だってさー、、、、とか、グチって居ると。
「離れてー、えいっ。」
魔法部隊が大技を決めたようだ、貯めに貯めた攻撃魔法の一斉攻撃、オーバーキルだ。
「お疲れー」
みんなに木の実のジュースを振舞う、さすが女子、速い。甘い物の時は反応が違う、一人まじで縮地使わなかった?
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2匹目のオークはLv10、お手頃だ。納得価格だ。
女子達が囲んで戦っているが、危なげが無い。
連携も取れている、昨日と違ってお互いの役割を理解している、外連味がない良い攻撃だ。
弓と魔法で目を狙われ、目を庇えば足を滅多刺し。
足を守ろうと棍棒を振るえば、目をやられ、手もズタズタ。
これは、勝ったな。誰もああって言ってくれないが勝っただろう。
お昼にしよう、昨日はBBQして怒られた。今日はお魚と茸の塩汁にしよう。
昨日は何故かお花を飾ったら怒られた。同じ間違いはしない、オタ達と違って俺は空気が読める男だ。
そう、華やかさじゃないんだ。日本人なら侘び寂だ。
枯れ木を集めて燻蒸する、綺麗に洗ってから温度魔法で完全乾燥させる。
細い枝は梱包魔法で真っ直ぐにしてから先を削り、お箸に。
丸太は削り出してお椀にする。
テーブルと椅子も丸太で造る。
終わったみたいだ。
「お帰りー、ご飯出来てるよー」
手が洗える様に水を用意する。
「「「ただいまーって、何で戦ってると、いつもいつも美味しい匂いがしてくるの!?」」」
怒られた?所詮は女子校生に侘び寂での御持て成しは理解できぬか、え~い、板前を呼べっ!って俺だった、、。
何で毎日怒られるのだろう?
木偶の坊の効果だろうか?
怒ってる割には、みんな御代わりだ。そろそろ称号にいじめられっこも付きそうだ。
そうして、Lv8、11と連戦で倒し、今日最後のオークはLv13の大物だ。絶倫もLv5だ。
「ちょっとー、何か目がエロい?」
「こいつ、、、胸の大きい娘狙い?」
「きゃ~、、、ってこっち来ない!どういう意味よ!!」
「ふふふふっ、、、絶対殺す。」
「あれ~、何で、、、私の方、、、ばっかり来るのかな~?」
「「「「へー、ソウデスカ、タイヘンデスネ。」」」」」
「、、、裏切り者め。」
「ふふふふふふっ、、、マジ殺す。」
「何で、、、コッチ、、、ガンムシ?、、、、。」
駄目だ、仲間割れが起こってる。
オークは崩れ落ちた、友情も崩れ落ちたようだ。
犯人が副委員長Bなのは言うまでも無い。
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もう大分暗いし、さっさと帰ろう。何か怖いし、、、。
「まったく、誰かといい、さっきのオークといい、そんなに大きいのが好きなら、おっぱい星にでも転移すればいいのよ。」
「ガンムシ、、、サレタヨ?オークニマデ、、ガン、、、ムシ、、。」
「あれー?どうして私?無視されてるのー?あれー?」
「「「「へー、ソウデスカ、タイヘンデスネ。」」」」」
やはり、女の友情は脆いらしい。森の中とおっぱい星なら俺もそちらに転移をお願いしたい。マジお願いします。
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夕食も終り、順番にお風呂に入りながら会議だ、女子会20+ぼっち、だ。
「明日は朝から川を下ってみて、昼過ぎても森の中だったら一旦此処に戻る、、、、で、いいのか?」
「うん、いきなり街が見つかるか分らないし、半日だけ捜索して街か道か見つかればそのまま移動かなっ」
「じゃー、一応フル装備で出かけよう。荷物はアイテム袋に入れていくから纏めといて。」
「「「「はーい。」」」」」
まあ、女子20人纏めて村人Aさんの魔力テントに放り込んで、俺が寝袋か普通のテントで野営は充分だろう。
お魚さんの干物も充分作った。茸は充分だ。21人で長期間遭難しても茸だけは充分だ。もうアイテム袋の限界容量VS茸、って感じだ。
何日間も此処を離れると茸だらけになっていそうだ、、、、、あと、ゴブも。
15日目 夜中 洞窟前 テント
夜中に外に出る、森に向かう。
深夜に洞窟に向かって、中に入ると通報されるだろう。
森に向かう、深夜のお散歩だ。
「やっほー、おひさー?」
「遥ーっ、気付いてんだから立ち止まろうよ、もう真っ暗じゃん。帰り怖いじゃん」
「いや、何で出て来ないで付いて来んの?莫迦なの?あー、莫迦だったわ、うんうん」
「うんうん、じゃねーよ。何で莫迦確定してんの?」
あー、煩い、声でかい、暑苦しい、むさ苦しい。
「お前、女子の後ろ付けて夜中に現れるとか、疑わしいにも程があるだろう?もう莫迦確定だろう。」
「別に女子を付けてないから!遥に付いて来たんだから。」
「、、、、ホモ?」
「違-よ!ホモ言うな、せめてBL、、、それも嫌だーっ!」
あー、煩い、声でかい、顔が暑苦しい、存在がむさ苦しい。
「いや、どうして、女子の前に、姿現さないの?」
「、、、信用できない。」
「オタ達も見殺しにしたって?女子たちが襲われても無視してたって?どっちが信用できないのかな?」
「、、、確かに、その通りだ。、、、でも、どうしても信用できなかった。信用できない。」
珍しく考え込んでいやがる、莫迦なのに。どうせ莫迦な考えだろう。休むより酷いんだろう。
「どんな莫迦な理由で疑ってんの?莫迦なりに。」
「莫迦なりって、、。お前も屑達の傀儡と魅了の騒ぎは聞いたんだろう?」
「聞いた。逃げてきたオタ達にも会った。」
「あの件で、完全に信用できなくなったんだよ」
「意味解らん、其れで何で屑じゃなく女子やオタ達疑ってんの?」
「お前なら分ってんだろう。」
「あー、考えてる、無駄なのに考えてる、お前らに考えて分るならゴブだって分るよ。もう、ゴブに相談に行けよ。気が合うと思うよ?馬鹿だから?」
「ひでー、っていつも通りなのがムカつく!」
一応、驚くべき事に脳筋体育会男子の、誰かの脳の中にほんの一欠けらの知能が有ったらしい。
「、、、強奪だろ?」
「ああ。なんで傀儡と魅了で大騒ぎして警戒する程頭良い奴らが、俺達でもやばいって分る強奪の事だけ何にも言わないんだ?寧ろ、あいつ等がスキルは隠しておいた方が良いって、全員に隠蔽の仕方教えたんだぞ!おかしいだろう、絶対!」
「莫迦だなー、そこまで言って、警戒し捲くって、俺が持ってたらどうすんの?隠れてる意味無いだろう?」
「お前が持ってんなら其れで良い。他の奴も何も言わないよ。遥が持ってんの?」
「無いけど使役なら覚えたぞ?寧ろお前らなら、そっちんがやばく無い?」
うん、こいつ等は絶対に傀儡より使役だ、どう考えてもゴブやオタやビッチの魔物系列だ。
「あ~、何故だろう?そっちのがやばい気がする?なんで?」
本能で危険を感じたらしい。やはりゴブと同レベル。同類らしい。
「まー、あれだ、強奪でも傀儡でも魅了でも使役、、、でもお前が、お前だけが持ってんなら良いんだよ。合流して頭下げるよ。けど、、、他の奴は信用出来ない。」
話が長くなりそうだし、テントに入れて飯を食わす。
良く食うなー。ま茸だから良いけど。
「何で俺だけ信用してんのか知らないけど、信用するんなら言っとくぞ。大丈夫だ。」
「、、、、うん、分った。」
「え、そんだけで良いの?理由とか説明とか良いのか?」
「いや、聞いても多分わかんないし?遥が大丈夫って言ったら大丈夫なんじゃねえの?多分?」
大丈夫らしい、何が大丈夫か分かって無い様だが大丈夫らしい。頭は大丈夫じゃ無いらしい。
餌付けの効果だろうか?何か、ほんとに使役できそうだ、、、しないけど、居ると煩いし、顔が暑苦しいし、存在がむさ苦しいから。
「ごちそうさん。ふー、そんじゃ、帰ってみんなに大丈夫って言っとくわ、小田達と委員長達に謝っといてくれ。改めてみんなで頭下げに来るから」
帰って行った。いいの?それで、、、?
鞄に目一杯の茸を詰め込んでおいたので買収工作は万全だ、説得は上手くいくだろう、連鎖餌付けだ。使役は断る!
15日目終了