毎晩が服飾業界なんだから服飾業界に対する損失に驚嘆しても無実だ。
49日目 夜 宿屋 白い変人
迷宮王が残した「攻殻虫の鎧」、滅茶虫っぽいデザインの鎧を柿崎君達と遥君で押し付け合っている。うん、あれはキモイ!無理矢理着せられそうな柿崎君が這って逃げ回ってるから相当嫌みたいだ、女子達もドン引きしている。他の迷宮装備は微妙だったらしい、まさか全部虫デザイン?わっ、グロイ槍が出て来た、女子達がドン引きしてるよ?それ虫さんの脚槍だよね?食堂で出さないでね?
そして報告。
「蚯蚓以外は全滅してたから47階層の迷宮王は何だったか不明なんだ。あとその上の46階層は虫の迷宮だったのに魔石と一緒に武器が落ちてた、蜘蛛の巣があったから蜘蛛系だと思うんだが全滅していたから分からん。」
「詐欺だよ?虫の迷宮で蚯蚓ってミミズ目への裏切り行為だよ?マジで。でも雑貨屋さんの殺虫草は凄い効くよ?中層までならG以外なら倒せるかも?みたいな?あと巨大Gが出たら俺逃げるから!絶対だ!」
またやったみたいだ。迷宮を殺して来たけど迷宮王は不明、魔物の分布も不明、未解決事件が量産だよ?前回は溺死、今回は薬殺?そもそも大迷宮では拉致だったよ!
「「「46階層に武器が落ちてたって武器だけ!?本当に鎧とかは無かったの!?」」」
あれ?小田君達が変な所に凄い形相で喰い付いてる?何か重大な事なの?異世界の事は小田君達が一番詳しい、何か深い意味が在るのだろう。みんな息を呑んで聞いているよ。
「ああ、武器だけだった。標準サイズの剣と槍とあとは盾だった?拙かったのか?」
「「「あーっ、アラクネだったかも知れないよー。全滅しちゃったよー、出会う前にお亡くなりだー。」」」
小田君達が嘆いている?アラクネ?貴重な魔物だったとか?良い魔物だったりとか?何だろう遥君まで酷く動揺している!?
「アラクネって?あのアラクネなのか!?」
「よ、鎧が無かっただと!無かったんだ、、。」
「遥!お前の血は何色だー!」
「マジで?だってアラクネって、、、。昆虫?虫のダンジョンにいて良いの?って鎧無しーーーっ!みたいなーーーっ!!」
男子がみんな動揺している!大事件なの!あ、アンジェリカさんはジト目してる、知ってるのかなー?聞いてみよう?
えーと?蜘蛛女さん?上半身が女性で、、、鎧が無し?あ~あ、ギルティーだ。
(説教中です。しばらくお待ち下さい。)
「「「最低ーっ!昆虫に何を期待してるの!?」」」
うん最低だったよ。アラクネさんは「蜘蛛女」、一般的には上半身が女性で下半身は蜘蛛って言うのが有名らしいんだよ。そして武器だけで鎧を身に付けていなかった、つまりトップレスさんです。セクシー系魔物娘さんだったようです。お説教です!会議中に不謹慎だよ!
遥君だけは例の如く罪を認めない。曰くアラクネとはギリシア神話に登場する人間の女性で機織りを司るアテーナーをも凌ぐと言う技術を持つと言われた優れた織り手なんだそうだよ。
「みんなオーダーメイドしてくるじゃん?手が足りないんだよ?アラクネさんなら機織りから出来るんだよ?生地までフルオーダーだよ!蜘蛛女さんの方なら糸から紡げるんだよ?糸からフルオーダーだよ!手もいっぱいあるんだよ?手が足りないどころか手が2本に蜘蛛の手が8本なんだよ!ほら大事な事じゃん?服飾業界に対する損失に驚いて嘆いただけだよ!だって俺って毎晩が服飾業界なんだよ?使役できてればお洋服の大量生産かも可能だったかも知れないんだよ!バリエーションも増えてお値段も安くなっちゃうんだよ!ほら、俺悪くないじゃん?」
と言い張っていた。その言葉に女子達は激しく動揺しお説教は止まった、だってお洋服がバリエーション豊富でお値段お手頃は殺し文句だから。見事な弁論だ、相手の弱点を突き自分の主張を正当化する必殺の殺し文句だ。論理も破綻していない付け入る隙の無い弁護だったよ。
でもね?「って鎧無しーーー!」って叫んでたよね?服飾業界は鎧が有っても無くても関係ないよね?実は自白してるんだよ?魔物っ娘の覗き未遂犯決定だよ?ギルティーだよっ!
(更に説教中です。もうしばらくお待ち下さい。)
お説教以外は順調に会議が進んだが49階層で階層主は危険だと判断して戻って来たグループが2つも有る。私達もなので3ヶ所が階層主戦になる。明日はみんなで階層主と連戦?あと遥君に隠し部屋探しもして貰わなきゃいけないし大忙しだよ、特に遥君が。
遥君は領主様への報告も面倒がって尾行っ娘ちゃんをお菓子で買収して代わりに報告に行かせてたりとサボっては居るがそれでも忙しい。
生産の補助が必要なんだろうが錬金持ちは居ても生産レベルなのは未だ遥君だけだ。他も手伝いすら出来ない。
服作りも何故か遥君が一番上手でセンスも良い、手伝おうにも普通の手縫いならともかく魔法で量産なんて誰も出来ない。材料を探す事すら遥君しか出来ない。
ご飯も遥君の様に食材を見つけてきたり自分で加工が出来ない、だってお料理は出来てもケチャップの作り方なんて知らないよ、まして魔法で調理が分からないの。
土木関係も遥君に依頼が来ている。土魔法持ちも四大魔法持ちもいるんだけれど誰も建築や建設なんて出来ない。まず設計が分からない。
さらに雑貨屋さんと武器やさんの仕入れに経営指導に融資に買い付けの指示に販売品の生産。無理だよ?なんで出来るの?
だから遥君が忙しい。
いっそ戦闘職では無いのだから生産職にと言っても迷宮を殺しているのはいつも遥君。殺虫剤や水攻めや金属溶解なんて他の人には無理なんだ。
そして最大戦力兼指導役のアンジェリカさんの使役者だ、アンジェリカさんも離れて行動するのは嫌みたいでちょっと拗ねている。
となると遥君が一人で朝から戦闘職で迷宮を殺し、夜は内職の生産職で街の経済を支える?有り得ない事だけどそれを毎日やってるんだよ?
それなのに、そんなに忙しいのにみんなの装備を造ってくれてるんだ。
指輪もブレスレットも、その前のお洋服だって効果付きだったんだよ?迷宮武器だって格安バーゲンしてくれてた、一人で全部支えちゃってるんだ。
でもね。
アラクネさんは駄目だからね!
アンジェリカさんもオコだよ?
島崎さん達も噛み付きそうな顔してるよ?
使役者間で序列問題に発展してるよ?
もし、もしも使役してもちゃんとお服着せるんだからね!
ううぅ、お洋服がバリエーション豊富でお値段お手頃なんて。