因みに甲冑隊長の方がダイエット効果も凄いと20名ほど証言していた。
48日目 深夜 路上 ナローギ
走りながら注意して釘を刺す。だって手加減に不安満載なんだよ?白銀の甲冑の中の人。
「って言う訳で殺しちゃ駄目だからね?助けるだけで逃がすだけだよ?出て来ても街から誘き出せれば充分?みたいな?」
甲冑委員長はウンウンしてるけど本当に大丈夫なんだろうか?しかし、尾行っ娘は思ったよりも足が速かったんだよ。
独断で動くのも拙いのでメリお父ーさんに会いに行って話し合いをしている間に尾行っ娘はお隣領まで戻ちゃってて慌てて追いかけてるんだよ?だって辺境から出た事も無いから道も知らないし?土地勘が無いし?甲冑委員長さんがどうしても付いて来るらしいから飛ぶわけにもいかないんだよ?
「此処が一本道かー?結構長い?この先がお隣の街だけど深夜だからお店は空いて無いだろうし一気に突破しちゃおう。一本道を抜けたら飛ぶから背中に負ぶさってね?」
おお!女子を負んぶだよ!まあ、甲冑を着込んでるから負ぶっても楽しくなさそうだけど男子高校生的には初負んぶだよ!甲冑だけどさー?こー、感触的な物がさー?
しかし本当に長いよ一本道?そしていまだに追い付かないし、後ろ姿も見えないって事はもう街に入っちゃってる?拙いよ?怪我なんかしたりしてたら絶対俺が怒られる、お説教だけでは済まないだろう、お小遣い減額も有り得るのだ。そしてすっかり尾行っ娘と仲良しになった看板娘なんて二度と口を利いてくれないかもしれない。急がないと宿から追い出されるかもしれない、ツケも多いしヤバいんだよ?
ようやく街の入り口が見えた頃に尾行っ娘の気配を捉えた。
あっちっていう事は城の中?お城の中とかって探すのが大変そうだよ?最悪間に合いそうになかったら城を吹っ飛ばそうかと思っていたがもう無理だよ、見取り図とか案内表示とかはは無さそうだし?だって観光名所と言うには城がしょぼい。でもあれなら案外簡単に見つかるかも?見た目は頑張ってるが張ったりお城って感じ?お城の形っぽく作った領館だよ、まあ辺境よりはずいぶん立派だけど辺境の領館はぼろいが戦闘用だったけどこっちは奇麗で大きいが壁も薄そうだし、窓も多すぎる、何より無駄な装飾が登り易そうだよ?
羅神眼の千里眼で街の中とお城もどきの位置は確認できたしそろそろ街の入り口だ。
「はい、背中に負ぶさってしっかりと摑まってね、マジ乗り心地は期待しないでね?」
まったく迷宮で「ゴーレム・メーカーの指輪」が都合よく出てくれた。だから守れる可能性が出来た。殺し殲滅するしか手段を持っていなかったのに守れる可能性を見つけた、だから最期通牒を出して押し留めらる可能性が出来た。隣り街の領主にもそこの住民にもだ、やっと隣り街を滅ぼさないで済む可能性が出来たんだよ?きちんと領主と街の人達に報告するだけで良いんだよ?何か仕出かすのはこっちの仕事なのに、ただの尾行専門の諜報員だと思っていたのに大失敗だよ。全くいつでも俺の周りは莫迦ばっかりで、俺はいつも大馬鹿だよ。この可能性なんて考えても無かったんだ。
都合よく「ゴーレム・メーカーの指輪」を手に入れて焦ってしまったんだ。
守れる可能性を見つけてしまい舞い上がって判断が甘々になる程惚けていたんだ。
そして二つの街の沢山の住人の危険に焦って、たった一人の尾行っ娘の危険を見逃していた。大馬鹿さんだ。
だから間に合うかどうかとかなんてもうどうでも良いんだよ、無理矢理にでも間に合う。
失敗なんて許さない、可能性がちょびっと有れば良い、後は豪運さん任せで良い。だから、
「転移。」
尾行っ娘の所へ飛ぶ。
空なんか飛んでももう間に合いそうにないなら、空間を飛ぶ。ぶっつけ本番だよ?壁の中にいたら嫌だ、なーーーーっ、っ!
うわああっ!危ないよ!誰だよ目の前に剣を置いた奴っ!めちゃ危ないよ!危うく転移衝突切断事故発生だよっ、なんで異世界って俺に衝突しようとするの?痛いんだよ?衝突すると?しかも剣とか切断事故だよ?まったく、、。
んんっ?思わず剣を摘まんじゃったけど、剣の先端が尾行っ娘に当たりそう?何してるの?危ないよ?
「おひさー?って夕方まで尾行されてたんだけど?って言うか、何でおでこに剣先引っ付けてるの?趣味?ああ、ニキビ?ニキビは潰さない方が良いんだよ?マジで。」
うん、変に潰すと化膿しちゃうんだよ?洗顔前に蒸しタオルで顔を数分蒸らしておくのがお勧めなんだよ?まじで。しかも剣先とか不衛生だよ?危ないよ?
なんか良く解らないけど泣いてるから頭を撫でておく。大体世の中で困ったときはお菓子を配って、頭を撫でて置けば何とかなるんだよ?これがお説教から逃げるコツなんだよ?逃げられて無いけど多分きっとそうなんだよ?みたいな?
「ふげっ!」
あれ?なんか鳴いた?「ふげっ!」って鳴き声は確かオークさん?おひさーなの?この足元のぶよぶよは何?
「あれ?何でオークが地面の振りしてるの?罠なの?「トラップリング 罠を自動的に解除する」の効果は無かったの?一回も出番が無いまま効果無しってフラグどころの騒ぎじゃ無いよ?大迷宮さんリコール騒ぎだよ?でも責任者バックレてるよ?
「誰がオークだ無礼な賊めがっ、さっさと足を退けんかっ!ぶっへええっ!」
オークが喋った!ゴブリン・エンペラーでも喋らなかったのに!?オークの最上級種なの?馬鹿そうな顔だけど言葉が分かるから賢いのだろうか?でもうちのゴブより頭が悪い莫迦達でも言葉らしきものは喋れてるからそうでも無いのかなー?
「えーと?その踏まれているオークみたいなのはナローギ様なんです。一応領主様でオークの仲間では無いと思います?未だ未調査ですが。」
「ナローギって誰?知らない人の名前とか急に言われても覚えられないよ?オークNとかじゃ駄目なの?それにちゃんと調査しないと街中にオークを放し飼いとか危ないんだよ?弱そうだけど。」
まあ住民が全員が漏れなく棍棒で武装しているという異世界の修羅の街ならばオークの方が危ないだろうけど、普通の街は危ないよ。うん、きっとあの修羅の街の壁は入り込んだオークを逃がさない為の壁なんだよ。怖いよ修羅の街。
「えー、えー、そのオークな感じなのはこの地の領主様なんです?」
「駄目じゃん?オークを領主にしちゃったら、ほら顔が馬鹿そうだよ?きっと馬鹿なんだよ?せめてコボじゃ駄目だったの?領主?」
この頭悪そうなオークに領主させるくらいならコボルトの方が良いよ?ちょっと賢そうなんだよコボって、もう少し賢くなったら犬みたいに芸が出来る様になりそうなんだよ。オークじゃなくてコボがお勧めだよ?マジで。
「ふざけるなあああ!この下郎が、貴族に向かってオークだ、頭が悪そうだと切り殺してしまえー!」
「、、、、。」
いや、誰に言ったかは知らないけどもしかして兵隊さん達なんだったら聞こえてないよ?きっと無理だよ?
って言うか甲冑委員長さん?殺しちゃ駄目だって言ったからって扱いてどうするの?甲冑委員長さん扱きって拷問より酷いんだから可哀想だよ?俺、経験者だから詳しいよ?あれって訓練って書いて生き地獄って読むんだよ?きっと。
もう立ち上がる気力も体力も無くなった兵隊さん達が追い立てられ這って逃げていく。うん、その気持ちは良く解るよ、辛いよね?地獄すら生温いんだよね?でも未だ準備運動前のストレッチ位なんだからね?本番の扱きはまだまだ先なんだよ?マジで。
「このオークってどうしたらいいんだろう?隣り街の領主には手を出さないように言われちゃったんだけどオークだから殺って良いのかなー?オークだし?なんかブヨブヨして気持ち悪いし?殺っちゃう?」
「ぶうひいいぃ!」
いや、まだ屠殺して無いよ?あれっ?オークが気絶?気弱なオーク?まあオークな領主らしいから気弱なオークだって居るのかも知れないんだけど、魔物なんだからもうちょっとさー?扱かれてみる?ブヨブヨも取れると思うよ?ビリー隊長ですら生温いんだから、あの甲冑委員長さんは。