迷宮の帰りに小っちゃいゴーレムを作って遊んでたら小っちゃい小動物が対抗心を燃やしていた。
４８日目 昼 洞窟 ４６F
「大儲けだー。伝説の金属だー。異世界素材だー。今夜も内職だー？でも絶対内密ものだー？寧ろ内密だよー？寝不足なんだよ？マジで。」
甲冑委員長さんにもいいお土産が出来たよ。ミスリルだよ、装備の性能アップだよ、でも内職が止まる事を知らないんだけど？睡眠時間が殆ど無いんだよ？壮絶なブラック異世界だよ！いやきっと無理なんて嘘つきの言葉なんだよ！なにも食べなくても感動を食べれば生きていけるんだよ！って感動は食べちゃだめだよ？マジで。
さて迷宮も死んだことだしそろそろ夕方になる位だろう、帰るのにちょうどいい時間だ。
ああ、でも隠し部屋みたいなのが有ったんだったよ、宝箱も有るかも知れない。５０階層の迷宮装備なら期待しても良いかも知れない。
「ああああ、こんなところに偶然にも～「「「もうそれいいから！」」」、、、隠し部屋です。」
怒られた。俺の好青年で好感度急上昇な報告書が書いて貰えない、よし後で尾行っ娘にお菓子をあげよう。頭がちょっと可愛そうな娘みたいだからお菓子をあげたら好青年って書いてくれるかもしれない、って言うか書かせよう。一回好青年って書く度にお菓子一個で良いだろう、完璧だ。好感度アップだ。
遂に宝箱に、宝箱に鍵がかかってるよ！遂に鍵がかかっていたよ！って副委員長Bさんが叩き壊しちゃったよ？うんそーだね？いちいち鍵開けなくても普通壊すよね？何のためにマジックキーは存在しているんだろう？あれって大迷宮の下層アイテムだったよね？レアなんだよね？レア過ぎて使うところが無いくらいにレアなの？いるの其れ？
中身は、えっ！「ゴーレム・メーカーの指輪 ゴーレムを作成、操作、支配する。」これが有ればやれるだろう。あの地形なら決め手になる？かも？
「お願い！これ譲ってくれないかなー？譲ってくれたらお礼にミスリルのオーダーメイドを無料受けつけするよ？駄目？だったらオーダーメイドで洋服も作るよ？何なら指輪のオーダーメイドも受け付けようか？それとも、、、」
「「「「譲る！譲った！！オーダーメイドのお洋服！！て、手造りの指輪！？」」」」
「あ、ありがとう？みたいな？って良いの？ゴーレムさん造れちゃうんだよ？」
聞いて無い。キャーキャー言いながら洋服会議が始まったみたいだ？指輪も悩んでる？ミスリルさんは良いの？伝説の異世界金属だよ？装備のグレードアップもミスリル装備やミスリル武器持造れちゃうよ？ミスリルだよ？貴重で希少で貴金属だよ？うん、聞いて無いね。
「報告。女の娘をお洋服で誑かす、手作りの指輪で籠絡する、好青年ではない。（書き書き）」
そして後ろでは尾行っ娘が報告書と言う名の悪口を書いている、尾行っ娘を籠絡する為に大量のお菓子が必要そうだ、また内職が増えていく。俺、生産職じゃ無いんだよ？無職なんだよ？朝から晩まで無職な戦闘職で、晩から朝まで内職で生産職ってブラック企業も真っ青なダーク企業間違いなしだよ？
迷宮を上って帰る。
偶に湧いて復活しているゴーレムさんを壊しながら上がって行く、みんなお洋服の話に熱狂してて誰も戦ってくれない。一人でコツコツと壊して行く、一人でポツポツと魔石を拾う、そして宿に帰ったら延々と内職だよ？それなのにお金が無い！街に現金が足りてない、だから俺にお金が回ってこない、もう隣りの領地潰しちゃう？岩山に上ってお家を造ってそこで暮らしながら一週間くらいずっとメテオの連射を降らしたら消えて無くなるよね？隣りの領地？だって俺のお金をあそこが堰き止めちゃってるから俺貧しいんだよ？良いよね、滅ぼしても？だって勤務時間０時間のにーとが２４時間残業なんだよ？もう残業が忙し過ぎて勤務する暇が無いからにーとなんだよ、きっと？
「おーーーい、遥くーん、独り言が物騒になってるよー？お隣りの領に住んでる尾行っ娘ちゃんが脅えて涙目だよー？隣りの領地の前に好感度さんが消えて無くなるよー？あとあるだけ全部使っちゃうんだから隣りの領地が無くなっても貧乏さんだと思うよ？間違いなく！」
あれ？声に出てた？好感度さんが消えて無くなっちゃった！？
「大丈夫だよ？きっとすぐ湧くよ、隣りの領地。俺のお金を堰き止めてる領主を毎回半殺しで止めとけばその内復活するよ？きっと？多分？」
「「「復活して湧くのは迷宮だけだよ！なんで隣りの領地が湧くの？領主を毎回半殺しって全殺しより非道だよ！もう尾行っ娘ちゃん泣いちゃってるよ！」」」
駄目みたいだ？どうも隣りの領地は魔物では無い様だ、
「報告（泣き）。お金あげないと街が火の海になる、お金あげないと魔物扱い、絶対好青年ではない。（泣きながら書き書き）」
そして人聞きの悪い報告が書かれたるよ？お金あげないと街が火の海ってまるで悪い魔王の扱いだよ？プンプンだよ？
「普通、街に一週間くらいずっとメテオの連射を降らしたら魔王の扱いで間違い無いよ？悪い魔王より悪者だよ？魔王さんだって毎回半殺しなんて残酷な事しないと思うよ？って言うか撃っちゃ駄目だからね！」
駄目らしい？でもさー？
「こっちが何もしないからってあっちも何もしないとは限らないんだよ？少なくともメリお父ーさんでも例え魔王って呼ばれても自分の領地を守り抜くと思うよ？その為なら、領民を守る為なら悪魔にでも魔王にでもなって戦うと思うよ？守りきれないなら攻め落とすしか無いんだよ？この領地は人が全然足りていないんだから守れないんだよ、俺と同じで守る力が無いんだよ？こちらから攻めなければ何処かで誰かが死んじゃうんだよ？先手が打てなければ本当に誰かが死ぬし、何処かの村か町が滅びちゃうんだよ？看板娘一家みたいに家も街も失って流浪するんだよ？あれだって白い変人が身体を張って、命を捨てたから逃げられたんであって普通そのまま死んじゃってたんだよ？魔物じゃないからってなにも違わないんだよ？魔物の群れだって軍隊だって攻めて来れば同じような物だよ？魔物の氾濫なら止めて軍隊ならほっとくの？街の人も村の人もみんな死んじゃうよ？何故なら向こうはもう調査を始めてるんだから、戦争の第一歩は情報収集だよ？今書かれている報告書が戦争の第一歩なんだよ？それ以前に此処の領主一家は既に襲われているんだよ？兵隊に？隣りの領地なんて一つしか無いんだよ？もうお隣さんは戦争を吹っ掛けちゃってるんだよ？自覚が有るのかどうかは知らないけれど、領主を襲った時点で戦争になってておかしくなかったのにまだ懲りてないんだよ？きっと自分の身が危険になるまで理解できないんだと思うよ？だってやってる事が馬鹿すぎるから。危険な男が現れたのに、その男と仲良くやってる領主が襲われても戦争を我慢してるのに調査であれ何であれ手の者を送り込んじゃったんだよ？そこまでやって置いて街を焼かれたくらいで何がいけないの？」
みんな黙り込んでしまった。でもちゃんと報告書に書いておいてね？最後通牒だから、あとは進軍して来るか改心するかは向こうの勝手だから。
「でも、、、隣りの領地の街の人は何も悪い事なんかしていないんだよ？領主が勝手にやってるのに街の人達は関係ないんだよ？良い人ばかりかも知れないのにそんなことしたら駄目だよ。其れは絶対に駄目。」
「此処の街も街の人達も何も悪い事なんかしていないんだよ？街の人達処か領主まで悪い事なんかしていないんだよ？かも知れないんじゃなくて良い人ばかりだよ？その人達が家を焼かれたり、殺されたりするのは良いの？隣りの街が良い人達だから此処の街の良い人達は殺されて良いの？」
尾行っ娘も泣きながら、でも反論も出来ずに唇を噛み締めて黙っている。きっと隣町はこの辺境の悲惨さも、その原因の一つが自分たちの領だと言う事も知っているのだろう、なにせ隣りなんだから。
「たとえその原因が貴族であっても、その領で暮らすと言うのはそういう事なんだよ、悲惨で貧しい辺境になんて逃げたくないからその領に留まり税を納める。その税で貴族は軍隊を作る。そうして辺境からお金を毟り取り続けて発展してきた街に自覚が有ろうと無かろうとそれは充分殺される理由になるんだよ？ある朝、目覚めたら火の玉が降り注ぎ続けても何にもおかしくなんかないんだよ？死にたくないなら殺されるようなことはしちゃいけないんだよ。」
なんて報告書に書くかは分からないけど、その隣の馬鹿領主が報告を読んでどう判断するかなんて知った事じゃ無いんだしなんて書いても良いんだけれど。せめてこうして出会ったのだからきちんとこれから起こる事の意味だけは理解して欲しい、もう出会ってしまったのだから他人事なんかじゃないと言う事を。無自覚でも他人事なんかじゃないと言う事を。
みんな無言で階段を上る。
今、地上で戦争が始まっていたっておかしくもなんとも無いっていう事を理解してしまったのだから。
まあ、させないんだけどね？他人が好き勝手をするのは許せないんだよ、自分が好き勝手をするのは大好きなんだけど？でもあんまり好き勝手に大好きな事をするとめちゃ怒られてお説教されるんだよ？だからそっちも怒られても文句言わないでね？
