いつも俺だけが無駄使いって言われて怒られるんだけどさー?ねー?
44日目 夜 宿屋 白い変人 女子会
我先にお風呂に飛び込み、すぐに飛び出していく。お行儀悪いけど今日はしょうがない、だってこの世界でやっと可愛いお洋服が買えたんだ。もう着たくて着てみたくてみんな我慢できないんだから烏の行水も仕方ない。
だってずっと生成り色か草色だけ、偶に高価なので濃い灰色か紺色。赤や青や水色やピンクなんて無いし真っ白な白も無い! それがようやく淡い色合いだけどパステルカラーにも程遠いけど色付きでデザインもちょっと凝っていたり、可愛かったり、リボンやフリルが付いていたりする服。これがお洋服だ。
「服買えたよ~、良かった~。でもビルだったような気が?」
「可愛い服いっぱい入ってたね~? うん、ビルだった」
「お金貯めてまた行こうね~、朝は雑貨屋さんだったよ。平屋の」
「色付きの服は少なかったからね~、これでオシャレできるよっ! 5階建てだったね」
「やっぱり綿が多いいけど生地が良いよね~、ゴワゴワしないし。地下も有るみたい」
「またすぐ入荷するみたいだからチェックしとかないとねっ。街中の人が集まって来て見上げてたよねー」
「レースも有るらしいよ! 高級品らしいから貯金しないと! この世界にビルって無いよね? 初めて見たし」
「「「犯人分かっちゃった!」」」
いや最初から犯人は分かってたよね? お洋服以外の事を無視して見なかった事にしてただけだよね? だって入る前から、遠目で見ただけでビルだった、人だかりも出来てたのに迷わずに突入してたけど絶対に見えないはずが無い。我先にお洋服に群がって試着して悩みまくって買えるだけ買い漁って、お外に出てから気付くっておかしいからね?
「バレッタ売ってたよバレッタ! 木工細工だったけどアクセだよ、アクセ! 装備品じゃ無いんだよ!」
「宝石とかなら稀に有るんだけど、宝石も装備の方が多いよね~? 可愛いよりゴージャス系だし」
「「「うん、あのゴージャスさは女子高生には厳しい」」」
でもやっと可愛い服やおしゃれな服、雑貨やアクセサリーも増えていたし、お化粧品も入荷されていた、雑貨屋のお姉さんは泣きながら商品を並べてた。並べては買われて行き、また並べては買われて行って大変そうだった……あの規模になると雑貨屋さんのレベルじゃ無いから従業員が必要だろう。あのデパート規模になってしまうと……
誰があんな大規模な店舗にしたのかは聞く前から分かっている、真実はいつも一つだ! 犯人はいつも1人だ! だってアンジェリカさんが証拠品を抱えていたし。
「時間はかかるけど王都の方からも仕入れるらしいよ。国で一番のレベルの服だよ!」
「「「きゃあああっ、欲しい!絶対に買う!」」」
それからみんなでファションショーだった。着たり見せたり借りたり貸したりキャーキャー言いながらファションショーだった。
いつもは武装ばっかりで、ローブやマントはマシな方で革鎧だの鉄鎧だので可愛げも色味も無い。装備品じゃ無くお洋服が着たかった、みんな普通のお洒落がしたかった。
確かに滅多に着る事は無いかも知れない、異世界なんだから普段から武装してないと危ないんだし、丈夫で頑丈で動き易い服じゃなきゃいけないから。
可愛い服を鎧の中に着たって見えないし、すぐ汚れるし破れちゃう。それでもとっておきが欲しかった、余所行きが欲しかった。女の子なら欲しい物なの。冒険者で戦闘職でも女の子で居たいから。
だから一晩中ファションショーだった、今晩はみんなちゃんと女の子だった。
きっと元の世界にいれば見向きもしなかった粗悪品かも知れないけど、今はみんなの宝物だ。
だって遥君が出資して、ビルまで建てて、女の子用の可愛い服を沢山注文していてくれた。みんなが困らない様にいろんなサイズを沢山仕入れてくれてたのだから……一緒にエロい服も注文していたみたいだけど。
雑貨屋のお姉さんも黒髪黒目サービスとか言って凄く安くしてくれた。お金が足りなかった娘もみんな買う事が出来たしツケでも良いとまで言ってくれていた。きっと影のオーナーさんの指図だ。
多分みんなが隠れて泣いてるから、きっとみんなが情緒不安定な事に気が付いて、笑わせて喜ばせようとしてくれている。そのせいで遥君から没収し積み立てていた貯金がごっそりと生地や建材の支払いに消えて行ったけど、きっとみんなのためを思ってしてくれた事だから。でもお金も全部使っちゃって宿代に手をつけないでね? しかも怒られるからって隠すの止めようね、溜まり過ぎててすごい金額だったんだから!
アンジェリカさんも沢山服を買って貰えて大喜びで着替えては見せ合いっこしていた。見せ合いっこしていたが、途中からエロかった! また買っちゃったの! また今晩それ着ちゃうのってもう肩は丸出しで胸元も深いし下は下で太ももさんが付け根付近まで見えちゃってるしかも内側が! 見せる気満々だ、嬉しそうだし! モデルが良過ぎるせいで綺麗で美しいが余計にエロかった。
今晩もみんな気配察知のレベルが上がるんだろう、私もMaXになりそうだ。みんな寝不足なんだけど……遥君は頑張り過ぎだから! でもアンジェリカさんはとても嬉しそうなんだ。
そして昨日の洞窟での話になり、やがて洞窟での夜の話になり、またみんなは倒された。倒されていった、倒し尽くされちゃった! だってハンモックって! ハンモックでって!! きゃあああーぁ(以下錯乱)
そうして満足げに話しきると超エロいドレスのアンジェリカさんは蕩けるような笑顔で遥君のお部屋に向かって行った。
離れて行く足音までが嬉しそうに弾んでいる。
話の最後は今日も、
「み、みんな、で、いつか、みんな、で、」
って嬉しそうに言われても……みんなでする気なの? みんなで何をする気なのかな? みんなで何しちゃう気なのだろう? みんなでハンモックなの! いや、みんなでハンモックはおかしくないんだけど……ハンモックだけだったら。
今日も誰も返事できなかった。だって、みんなでって……
アンジェリカさんはハーレム迷宮皇を目指しているんだろうか?
でももし私達がそのエロドレスを着て遥君の部屋に押しかけたら、遥君は絶対に超高速で逃げちゃうよ?間違いなく一瞬で逃げるよ? エロいけど超ヘタレだから、遥君にハーレムとか絶対無理だと思う。だって自分の家の洞窟からすら逃げ出してたんだから。逃げて一人でテント暮らししてたんだからね、その人?
超照れ屋のヘタレさんだから、ハーレムなんかできちゃったら本人だけ逃亡しちゃう気がするの?