復讐が復讐を呼んでる様な気もするが痛い代わりに気持ち良い。
43日目 朝 オムイ 冒険者ギルド
やはり朝のお出かけ前に毎日恒例のあれをやる為だけに冒険者ギルドに立ち寄る。
だって朝のジト目はここから始めないとね~?
「何でずっと依頼が全く変わっていないの、やる気あるのかなーこのギルド? 掲示板係働いた事が無いよね? ニートより働いてないよね? 毎日来てるのに毎日無駄なんだよ? 何で一度も変わらないの? 何時になったらちゃんとした俺がお大臣様になれる依頼が出て来るの? 俺の一攫千金は一体何処にあるの?」
「ほんとに、何時になったらちゃんとコソコソしてくれるんでしょうか? 何で毎日来るんですか? 儲かる依頼は冒険者の物って毎日言ってますよね? 冒険者に成って無いですよね? 何で毎日来ちゃうんですか? 実は掲示板に文句言う為だけに毎日来てるんですよね!」
今日もモーニング受付委員長のジト目だ。いやー、宿で女子達のジト目、携帯用の甲冑委員長のジト目、夜のムフフなジト目とジト目パラダイスと言っても良いだろう。ジトられた事だしお出かけしよう。
貯まった魔石を買い取りカウンターに預けて、一応下流にある村の傍のダンジョンを殺したことを説明しておく。ギルド長のおっさんまで出て来たので言うだけ言って逃げ出した。なんで「ダンジョンは溺れ死んだよ?」って何度も言ってるのに分からないんだろう? 3回は説明したしもう良いだろう。
さあ、森だ、我が家だ、お泊りは様子を見て考えれば良いだろう。ジャグジープレイは捨てがたい物が有るんだが行ってから悩もう。
草刈りだ、目指すは庭園付きの一戸建洞窟だ。
昨日も村から帰るついでに「デモン・サイズ」達で森の木の伐採を試して見たんだけどかなりの大木でも伐採してたから草刈りなんて楽勝だろう。
これでついに洞窟の周りの草刈りが出来る、結構気にはなってたんだけど面倒そうで手付かずだったのだ。でも「デモン・サイズ」は自動制御で自動回転機能付き回転大鎌さんだ、命令一つで根こそぎ伐採、ゴブ達も伐採、これで庭園が造れて俺も万歳? いつかは田園も造れるかも? 取り敢えずは周りの伐採をお願いしよう。
サクサクと森を進むが「デモン・サイズ」3体が飛び回ってゴブやコボを狩ってしまうんで甲冑委員長さんは退屈そうだ。いつも自分が同じ事を俺にしてるよね? 毎日欠かさずしちゃってるよね? 昨日もしまくってたよね? 俺なんか昨日のダンジョン攻略で何もする事無かったんだよ、マジで降りて上がって来ただけだよ? 「来たな、やるか。」って身構えたら全滅してた時は悲しかったものだ、樹の杖を伸ばして終わりだったんだ……格好良く身構えたままで終わりだったんだよ、昨日の出番って。
しかし魔の森の魔物は本当に少なくなってる、兵隊さん達や冒険者達も間引きに来ているらしいし浅い所ではもう儲からないだろう。まして浅い所は茸も少ないんだからさっさと洞窟にに向かおう、しかし時々デモン・サイズが魔石を持ってくるんだけどいったいどうやって持ってるんだろう? 手が有るの?
我が家に到着しデモン・サイズ達に伐採を頼んで俺と甲冑委員長は森の奥に向かう、茸狩りとゴブ掃除だ、コボもお掃除だ。やっと練習ができそうだ、宿の裏で甲冑委員長さんにボコられるのは練習にはなるけど練習とは呼べないんだよ、あれは武術の訓練じゃなくて生き残る訓練だったのだ……基本ボコだから。
委員長達もお風呂の前に稽古と言う名でボコられてるみたいで、一度裏庭に見に行ったら月夜の下で29人が目をばってんにして山積みされ、その横でパニクった看板娘がおろおろと不思議な踊りを踊る光景はかなりシュールだった。マジで。
さあ練習だ。
さて、「魔纏」っと。体が無理やりに魔法とスキルに包まれ無理矢理に強化される、下手に身体を動かすと自壊で自滅してHPが減っていく、身体と魔力とスキルを同調させ一つに纏め練り上げる。これが無意識に瞬間的に息をするかのように出来れば完成だろう、そんな事が簡単に出来れば誰も苦労しないんだよ? 動きを制御できないと自分の筋肉が引き裂かれて骨も砕けていく。それがスキルで「再生」されながら回復する。動けなくなるまで動く練習をする。
俺の低いステータスが強制的に外から引き上げられているのだから無理矢理過ぎる無謀なスキルだ、使えば自滅していくが使えないと魔物に殺される。だから遣り繰りする、無理矢理辻褄を合わせて良い所取りで誤魔化しながら使いこなす。痛いのさえ我慢すればそのうち慣れて使えるだろう、使えないと訓練と言う名目でボコられて痛い思いをするのだからどっちにしても痛いのだし同じ事だ。
Lv15を超えたゴブでも一撃だ、まあいつも一撃なんだけど後ろから襲ったりしなくても一撃って言うのは凄い進歩だよ? いちいち気配消して隠れなくても良い、普通に正面からいけるんだから充分に進歩しているが自滅も進行していてじわじわと自滅でHPが減っていく。痛いんだよ? 結構?
「魔纏」は使い熟せてないけど使えてはいる。これからが問題だ、恐らく真の問題は「転移」だ。「魔纏」は武技だが「転移」は魔法だ、「魔纏」は魔力やスキルや魔法を纏う、つまり「転移」まで纏ってしまう。動きに瞬間移動が入ってしまうから制御が凄まじく難解になっている、だが恐ろしいまでに速い虚の動き。消える様に速く動く、って言うか一瞬消えてるのだろう。極めれば消えるのだから防御不可能の必中だ、使いこなせれば瞬間移動で回避不可能の瞬殺だ。問題は極める処か使い難い事極まりない極悪スキルなんだよ。
だがこれが纏まり「虚実」になれば迷宮皇とも戦えるだろう、ボコられずに済むようになるかも知れない。それでもきっと勝てない様な気がするのは何なんだろう? もしも、あの暗い地の底で闇に完全に喰らわれていれば魔王どころか魔皇とかなっちゃって世界なんか一瞬で滅んでたよね? 絶対? だって使役でステータスがLv1まで下がってからの状態であれなんだから、完全状態だったらあれは絶対に勝てないし倒せない。マジで。
でも今は楽しそうに軽やかに舞う様に森の中を駆け回っている。兜の中はきっと笑顔だろう、周りにはゴブとコボの死体が敷き詰められてるけど楽しそうだから良いだろう。また俺の練習相手達が目を離した隙に絶滅してるけど良いだろう。ついでに森林破壊されて更地になりかかってるけど良いのだろう。でも茸が採れなくなるから程々にしてね?
延々と懐に飛び込み斬る。それを一つの動作の様に、何もかもを一纏めに、一挙動に纏め上げる……予定だったのだが魔物さんは全滅した様だ、上流に移動しよう。もうキングすらいないから用は無い。上流なら数だけは沢山いるのだから少しは甲冑委員長さんを引き留めてくれるだろう。
まあ本当は期待もしてなかったんだけどね? でももうちょっと粘れよ! 何で全員で突っ込んでいって返り討ちにされてんの? 馬鹿なの? ゴブなの? コボだろ! コボルトならちゃんと連携しろよ、何でみんな揃って甲冑委員長に突っ込んじゃうの? 集団自殺なの? 集団自滅なのには間違いなかったようだ、もう突っ込んだ時点で結果は解ってるんだから時間稼ぎにすらならない使えない魔物達だった。
後はオークさんの棲み処で終わりだけど、戦ってるよりずっと茸を採ってる時間の方が長い、このままだとジョブに茸採りとかついちゃいそうだ。それでも無職よりは良いのかも知れないんだけどさ~、木の棒持って戦う黒尽くめの茸採りって……おかしくない?
まったく人が一生懸命に「転移」を纏って超高速で転んだり、転がったり、木にぶつかったり、ぶつかった木と一緒に倒れたりしてる間にオークまで全部倒されてるんだよ? 途中で衝突して何匹か撥ねちゃったけど一匹も戦えなかった、マジ瞬殺でした。コロコロと森を転がってる間に終わっちゃったようだ。
戦闘の練習をする予定がコロコロと転がる練習で終わる、いやコロコロは訓練しなくて良いんだよ?
結局お情けでオークキングを一匹分けてもらいました。マジでお願いしてみました。あとは全滅してます、犯人の白銀の甲冑の人は俺が戦ってるのを首をウンウンしながら監督しています、纏って縺れて転がるとヤレヤレってされちゃってます……滅茶気が散るよ!
やっと……7撃目でやっと虚実の様なものになった? オークキングを一撃だからできていたんだと思うんだが「フッ。」って感じで身体が動いたと思った時には既に斬り終えていた、これで終わりなの? 実感が全然ないんだが練習したくても相手が全然残っていない。
しょうがないからお泊りで夜までボコられた、伐採されで奇麗になった庭園でボコられた、「フッ。」ってなかなかならないままボコボコにされ、「フッ。」ってなっても決められないでボコられる。瞬間移動の速さは回避不可能でも直線的な動きのままだと読まれちゃうみたいだ、そうやって夜までずっとボコボコボコボコとボコられて夜が更けた。
夜が更けてからは夜中まで全力で復讐した、全力だ! きっと明日またその復讐でボコられるだろう。
だが悔いはない、とても良い復讐だった。復讐が復讐を呼んでる様な気もするがとても良いから良いだろう。うん、良かったです。