経済循環の流動性に対する刺激効果は考慮されないの?
40日目 夜 オムイのギルド
また御2人で会議を始めたようです。忙しいのに毎日毎日。
領主様がいらっしゃると必ずギルド長と会議を始めてしまわれるのです。
街への辺境への予算と人員の配分、急激な仕事の増加と人手不足。
今まで手も付けられなかった公共整備に、街の人達への分配。
会議する内容は尽きないでしょう。
でも、あの二人は最後は必ず黒髪の少年の事ばかり。
無駄な話し合いを始めてしまうのです。
曰く、街を救ってくれた少年?
曰く、街を幸せにした少年?
曰く、辺境を生まれ変わらせた少年?
挙句、報われない少年?
挙句、幸せを受け取る事の無い少年?
挙句、周りの幸せの為に自らを危険にさらす少年?
一体全体、何処の少年の話をしているのでしょう?
無駄にも程が有る無意味な会議です。そんな少年いません。見た事ありません。
黒髪の少年は毎日見るんですがそんな不遇な少年見た事ありません。
舐め過ぎなのです、あれはそんな生易しい少年ではありません。
そんな少年ならとっくの昔に魔物に殺されています。
あの少年は殺される事無く魔物を殺し尽くしているんです。
たった一人で? たった一人で全ての魔物を殺し尽くしているんです。
自らの危険も顧みず? 危険なのは殺し尽くされている魔物の方です。
全てを救う? あれは全てを殺し尽くしたから魔物がいないだけです。
何も報われない? 殺し尽くしているだけで何も求めてません。
幸せにして幸せになれない? 殺し尽くして幸せそうに換金しに来ています。
受け取る事無い? 毎日あちこちのお店の現金を奪い尽くしてます、それで好景気なんです。
感謝しているんでしょうお二人とも。当然でしょう、その結果だけを見れば。
でもそれは結果です。
出会った魔物をすべて殺し尽くした結果です。
領主様も、ギルド長も辺境の出身、この街が当たり前と思っているのでしょう。
この国でこれ程善良で、お人好しで、人の心配ばかりしてる住人ばかりの街なんて私は知りません。
落ちぶれ行き場を無くした私達の家族を当たり前のように受け入れて皆に助けてもらいました。
でも他の街は、ましてや王都は落ちぶれれば毟り取ろうとする人が当たり前のようにいるのです。
この街だから結果的に救われたのです。
あの少年。いえ、あの少年達は鏡です。
この街で良くされたからこの街に居ただけなのです。
この街に居たから莫大な利益がここに齎されただけなのです。
その利益の為に魔物を殺し尽くし、その結果平和になっただけです。
あの少年は結果的に街を幸せにしてしまっただけなのです。
侮り過ぎなのです、あれはそんな心優しい少年ではありません。
もし、違う街で悪意を持ってあの少年達を陥れようとしていたなら、街なんて滅んでいたでしょう。
もし、違う街で害意を持ってあの少年達に危害を加えようとしていたなら、街なんて消えていたでしょう。
もしこの街の人が少年から商品を買い叩いていたなら、少年は違う所に売りに行ったでしょう。
でもこの街の人は適正価格でお店の現金をかき集めてでも買い取るのです、お店もギルドも領主様さえも。
だからこそこの街は幸せになれたのです、だからこそこの街は守られたのです。
あの少年に善意も悪意も無いのです。
迷宮に救助に行ったからお礼として武器を置いて行ったのです。
良くしてくれた人達がいるから街の為に行動しているのです。
報われようとも、褒められようとも、称えられようとも、褒美を集ろうとも、有名になろうとも、何か与えられたいとも、何かを得たいとも、何かを望むとも、何も思って無いのです。
救うも何も未だにこの街の名前も覚えていません、感謝しても領主様もギルド長も名前を憶えられてもいません。
良くしてくれたおっさんがいるから良くしているだけです、良いおっさんがいる良い街としか思っていません。
あの少年は自分が好き勝手にやって、好き勝手に周りを幸せにして、好き勝手に幸せにやっているのです。
舐め過ぎなのです、侮り過ぎなのです、あれはどれほど不運であっても好き勝手に幸せになるのです。
そうでなければ、あの少年の周りにいる人たちがあんなに幸せそうな訳が無いじゃないですか。みんなが勝手に幸せにされているのです。そう、あれは好きでやっているのです。
舐め過ぎで侮り過ぎで崇拝し過ぎなのです。あの少年は普通に好きにやっているのです。自分を不幸だと思っている少年にこんなにみんなを幸せに出来る訳が無いのですから。
だから早く会議を終わりにして働いて下さい。無駄です。
40日目終了
感想で異世界転移はローファンタジーでは無くハイファンタジーとのご指導を頂きましたのでハイファンタジーに変更させて頂きました。カテゴリエラー申し訳ありませんでした。