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そんな偶然が有る訳が無いなら其れは必然なのだから俺のせいじゃない。


39日目  夜 宿屋 白い変人



 部屋に戻ると甲冑無しの甲冑委員長さんも付いて来たので隣りに座らせてお話しする、ベッドに座らせたことに深い意味は無い。とても浅い意味は有るかもしれないがお話だ。


 未だ上手くは喋れないだろうからリハビリもかねていろいろと話し合う、お互いにお互いの事が知らない事だらけだけれど急がなくても良い、やっと明るい所に、人が沢山いる所に出てこられたのだから。


 だからお喋りだってしたいだろう、だから練習がてらにお話だ。未だうんううんといやいやの首振りでの会話だけど、「……はい」とか「……わ、かり、まし、た」とかゆっくりと少しずつ言葉少なだけど頑張って言葉にしている、その度に頭を撫でると喜んでいるようなので他の所を撫でるのは我慢しよう。やっと明るい所に来れて喜んでるのに部屋を暗くするのは拙いだろう、俺も頑張っているんだよ? かなり一生懸命に頑張って我慢だ。


 まず真っ先に話し合ったことはこれからの事、そう「使役」。


 もう魔物じゃ無いのだ。人が人に使役されるなんておかしいのだから使役は解除すべきだ、魔物を使役するスキルに縛られている事がおかしいのだから……ビッチ達の事は置いておこう、きっと人じゃ無いんだよ? スキルさんにも魔物と判断されたのだろう、だって怖いもん。って言うか外せないんだよ? 使役者から一方的には解除できないらしい?


 これからは使役も外して自分のしたい事をして良いんだと、もう自由なんだと、今まで出来なかったこともしたかった事も行きたかった所にも帰りたかった所にだって何だって自由にして良いんだよと言い聞かせた。何でも好きにして良いんだから使役なんかしていなくてもこれからも手助けでも何でもするよと話して説明する、ちゃんと説明したんだけど瞳に涙をためていやいやしている? 俺の目を見ながら必死に「いや、で、す」と繰り返す。


 話が上手く通じていないのかと思って何度も話し直してみてもいやいやしちゃう? まじ泣きしそうなので「じゃあ外してって言うまでこのままで良い?」と聞くと、やっと笑ってウンウンしてくれた。


 ずっと1人ぼっちだった、もうこの世界にも誰も知っている人は居ないのだろう、だから例えそれが「使役」何て言う碌でも無い繋がりであっても誰とも繋がりが無くなってしまうのが不安なのかもしれない。


 だから、もうちょっとだけこのままでも良い。俺の好感度的にはとっても良くないのかも知れないけど良いだろう、俺の好感度はもう今更ちょっとやそっとの事では落ちない所にいる気がする、落ちようにももう下が無いのかも知れないからきっと大丈夫。って大丈夫なの、それ?


 次に何でスケルトンさんを辞めちゃったのか、って言うか辞めれるのスケルトンさんって? 辞めたからって人間に戻れるものなのだろうか? だが甲冑委員長さんには過去にも迷宮皇を辞めリッチを辞めデュラハンを辞めノーライフキングすらも辞めた輝かしい実績があるのだ。バックラーだ、バックラーなのだ、スケルトンすらバックレてもおかしくは無いのかもしれない。


 たどたどしい言葉で身振り手振りを交えて何が有ってどうなったのかを、何が起こってどうなったのかを1つずつ1つずつ話してくれた。


 そして原因と理由と犯人が解かった、謎は全て解けたし証明終了だしミッシングリンクもパズルの最後の一欠けらも纏めてひっくるめて全部丸っと解き明かされた! 原因と理由と犯人は俺だった! なんで!?


 まあ当たり前だが死んでしまうと生き返らないしアンデッドでも魂しかないうえに呪われていて生き返ったりはしない、生き返れない、不可能なんだそうだ。


 もともとスケルトンと言うのは骨を魂と魔力で覆って骸骨を動かしているらしい、それに「白銀の甲冑 「完全無効」「全強化」「スキル 守護者」? ? ? 「呪い 血肉と同化する」」を着せたから甲冑と魂と魔力の血肉部分が同化して一体化したんだそうだ。そこに「祝福のバングル 呪い、災いを昇華する(着用1回限定)」を持たせたんで呪いと災いが昇華され肉体が戻って来た、死んではいるが骸骨と魂と肉体が揃ったのだ。その状態で「ネクロマンシーの宝玉 生死を司る 即死 即死耐性」を渡した奴がいるらしい、そりゃ~その状態で生死を司ったりしちゃったらそれはもう生き返っちゃうよ! もう生き返らない訳が無い! 誰だよそいつ? しかもそいつは「巡幸の指輪 LuK増強(大) 幸せを呼び、不運を退ける」まで渡しちゃったらしい。それ絶対生き返るから、間違いないそいつが犯人だ。そう、俺だった!?


 魔剣とマント以外のアイテムが全員で手を組んで奇跡を起こしたみたいだ、それで感謝して助けてくれているのだろう。でもそれは俺のせいでも偶然でも何でもない、そんな特殊で貴重なアイテムが全てあの迷宮にあった事こそが奇跡だったんだから。だからそれはきっと必然だったのだ、俺が何かした訳じゃ無い、あれは全てアンジェリカさんの為にあそこに有った、ずっと待っていた。だから世界中を探し回ったって見つからない様な秘宝が全てたった一つの迷宮に集まっていた。だったらそれは必然なんだよ。


 そう言うと泣いてしまったけど、そんな偶然が有る訳が無い、無いのならそれは必然だ。だからあんな所でたった一人で悲しいままで死んじゃいけなかったんだよ。


 随分長い間泣いていた。きっと今までどんなに辛くても、苦しくても、痛くても、虚しくても、寂しくても、悲しくても、泣く事が出来なかったのだから。ずっと涙なんて流せなかったし寄り掛かる相手すらいなかったのだから、だから沢山泣いた。今までの哀しみを全てを流し尽くすみたいに泣いていた。やっと泣きたいときに泣けるようになれたんだからいっぱい泣けば良い。

 

 それからは甲冑委員長さんが聞きたがるので俺の話、俺たちの話をして聞かせた。


 こことは全然違う別の世界から来た事を。


 白い部屋と爺の話。


 ジャンクなゴミスキルの話。


 一人で洞窟で暮らしていた話。


 初めて戦った時の話。

 

 茸ばかり食べていた話。


 オタとゴブが騒いでウザかった話。


 杖で戦い始めた頃の話。


 女子達と合流し、テント暮らしになった話。


 街を探して森を彷徨った話。 


 街を見つけて、街で暮らした話。


 貴族の間で地団駄が流行っている話。


 莫迦達がどれ程莫迦かと言う莫迦話。


 そして死ななかった、死に逝く物語。


 それで迷宮に行った事、落ちた事、出会えた事、みんなの話、全部話した。

 

 話してみると全部ずいぶん昔の話みたいだ、まだ一ヶ月ちょっとの話なのにいつの間にか昔の話になっていた様だ。


 何とか君の話の時はなんだか凄く怒ってた、泣きながら怒ってた。そう言えば帰って来た時も女子達が泣きながら怒ってたのを思い出した、なんだかいつも怒られている気がする?


 でも今はみんな笑えているんだから、そしてみんなが1人増えたんだから良いよね? って言うか俺悪くないし?


 そうして夜も更け、お互いに話疲れて語り疲れて……やる事をやって眠りについた、疲れ果てるまで。いや、ほら? 男子高校生だし? しょうがないんだよ?


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