五月 GW(1)
更新遅くなりましたが、5話の投稿になります。
更新日をこれから月曜日に変更しようと思います。
その方が投稿しやすい環境にあるのでご了承ください。
この後すぐに6話を投稿します。
もうすぐゴールデンウィークになるので、私たちはちゃんとした予定を立てることにした。集合場所や時間などを全然決めていなかったので、そろそろ決めようと楓が提案してくれたのだ。さすが幼馴染、頼りになる。
「郊外に遊びに行くってことは駅前に集合でいいんだよな? 時間はどうする?」
「そうだね。集合時間は朝の十時かな。詩織ちゃんもそれで大丈夫?」
「大丈夫ですよ。私は駅前のマンションなので早すぎなければ時間も特に問題ないです。」
詩織ちゃんの了承も得られたので、朝の十時に駅前に集合することに決まった。今から当日が楽しみです。
「雅はちゃんと寝てくるんだぞ? 当日眠そうな顔して来たら怒るからな?」
「いやいや、遠足の前の日の小学生じゃないんだからもうそんなことしないよ。」
私がそうやって否定すると、楓は怪訝な表情をしながら私の顔を見てきた。これは信用していない時の目だ。
「本当に大丈夫なんだろうな。前に私と二人で遊びに行った日もかなり眠そうな顔してたけど。」
「えっ、バレてたの!? あの時は隠し通せてると思ってたんだけどなあ。」
「あれで隠してるつもりだったのかよ。何度も欠伸してたから、また眠れずに来たんだってすぐに分かったぞ。」
私は見えないところで欠伸して、隠しているつもりだったんだけど、楓にはバレバレだったみたい。それなら最初から開き直って寝不足だって言えばよかった。
「雅ちゃんも遠足の前日は眠れないタイプなんですか? 私も小学生の頃は遠足が楽しみで眠れなくて、当日の朝にお母さんに怒られながら起こされてました。」
「雅は前日だけじゃなくて、数日前から眠れなくて授業中にしょっちゅう先生に怒られてたよな。今回は初めて詩織と遊びに行くわけだし、今日から楽しみで眠れなくなるんじゃないか?」
「さすがにもう数日前から眠れないなんてことはなくなったからね!?」
私たちはそんな話をしながらゴールデンウィークを待つのだった。
「待ちに待ったゴールデンウィークになりました!さあ遊びに行こう!」
「雅ちゃん待ってください、楓ちゃんがまだ到着してないです。」
駅前で待ち合わせをしていた私たちは、時間通りに集合して出発するつもりだったんだけど、楓だけがまだ来ていませんでした。どうしたんだろう、いつもなら待ち合わせ時間より早く着いているはずなのに。
「あ、楓からメールだ。十五分くらい遅刻しそうだって。詩織ちゃんごめんね、もうちょっと待ってようか。」
「大丈夫ですよ。それより、楓ちゃんどうしたんでしょう。」
普段は絶対に遅刻しない楓が遅れてくるなんて、何かあったんだと思うんだけど大丈夫かな。
「今日が楽しみで眠れなかったんじゃないかな。私にあれだけ言っておいて自分が遅れてくるなんて。来たら文句言ってやる。」
「まだそう決めつけるのは早いんじゃないでしょうか。きっと何かあったんですよ。」
そうやって話しているうちに、向こうから楓が走ってきた。息が切れているのでかなり急いで来たのだろう。駐輪場に自転車を
「ごめんごめん! 二人ともお待たせ!」
「楓が遅刻なんて珍しいね、どうしたの? 私にちゃんと寝てこいって言っておいて、自分が楽しみで眠れなかったの?」
冗談交じりで言ってみると、楓は呆れた顔をした。どうやら予想は外れたみたい。
「雅じゃないんだから、そんなことあるわけないじゃん。」
「私だっていつまでも子供じゃないんだから! 今回はちゃんと寝てきたし!」
私はそう主張したが、楓には軽くスルーされてしまった。
「そんなことより、ごめんな詩織。楽しみに待っててくれたのに遅刻しちゃって。本当ならもっと早く着くつもりだったんだけど。」
「私は気にしてませんよ。あ、でも差し支えがなければ遅れてきた理由を説明して欲しいです。」
「それはもちろん説明させてもらうつもりなんだけど、そろそろ電車が来るみたいだし乗ってから話そうか。」
楓の言う通り、あと数分で電車が到着するようだ。理由を聞いていたらまたしばらくホームで電車を待つことになってしまう。私たちは急いで切符を買い、ホームに降りた。程なくして私たちが乗る電車が到着した。乗り込んでからしばらくして、楓が口を開いた。
「いやー、ホント遅れてごめんな。朝起きたら両親とも早くに仕事へ行ったみたいでさ、兄貴と妹のご飯とか色々と家事をしてたら、家を出なくちゃいけない時間になってたんだ。そういう時に限って兄貴が邪魔してくんのね。今日デートなんだけど、どんな服着て行ったらいいかなーって言われてさ。知らねーよ、自分で決めろそれくらい! って言ったんだけどしつこくて……。結局選ばせられることになって遅れたんだ。ここまで車で送ってくれたから良かったけどね。兄貴からも二人に謝っておいてって言われたよ。」
「あー、朝から大変だったねー。お疲れ様。お兄さん、また新しい彼女さんできたんだね。」
楓のお兄さんは大学に入ってから、いろんな女性と付き合っては別れを繰り返している。見た目はそこそこいい方だと思うんだけど、中身がかなり残念なせいで長続きしないようだ。
「楓ちゃんって妹さんとお兄さんがいたんですね。」
「あ、そうか。詩織には話したこと無かったね。今年で成人した大学二年の兄貴と、中学二年の妹がいるんだよ。」
「えっ、葵ちゃんってもう中学二年生になるの!? 月日が経つのは早いもんだねえ。」
小学生の頃はよく楓の家に遊びに行っていたけど、中学に入学してからは楓がバレーボール部に入って、行く機会がめっきり減ってしまったのだ。
「葵も兄貴も雅に会いたがってるから、また遊びに来いよ。弟くんも連れてさ。弟くんは今年から中学生だったっけ。確か葵の一つ下だったよな。」
「そうだよ。あいつ、中学入るからって最近生意気でさ。なんとかならないかな。」
「それは反抗期なんじゃないでしょうか。私もその頃は、姉や両親に口答えしたりしてましたよ。」
「詩織にも反抗期があったんだ。大人しいからそういうのは無かったんじゃないかって勝手に思ってたよ。」
「いえ、私も人並み程度には反抗しましたよ。」
私も楓と同じように思っていたので少し驚いた。でも、思春期だったら誰だって反抗的になってしまうのは仕方ないんだと思う。
「まあ、誰もが経験することだもんね。温かく見守ることにするよ。楓の家に行く時は引きずってでも連れていくね。」
「そんな無理やり連れて来なくても。あ、そうそう。兄貴が詩織にも会いたがってたから、遊びにおいで。」
「私もお邪魔していいんですか? ぜひ、遊びに行きたいです。お兄さんにも会ってみたいですし。」
「ロクでもない兄貴だから期待しちゃダメだよ。」
そうやって談笑していると、目的の駅にたどり着いていた。