四月 入学式
みなさん初めまして、如月海人です。
この作品は大学の卒業制作で書いているもので、
少しでもたくさんの人に読んでもらいたいと思い投稿することにしました。
高校時代こんなことがあったなぁとか思い出しながら読んでもらえるとすごく嬉しいです。
毎週水曜日に更新する予定です。
春、桜が舞う季節。まだ着慣れない制服に身を包んで、新しい物語に期待を膨らませる。そう、今日から私、岩崎雅の輝かしい高校生活が始まるのだ。
「雅ー、そろそろ学校に向かわないと遅刻するわよー。」
「分かってるよ!もう準備できてるから!行ってきます!」
学校へ向かう道すがら、周りを見渡すと同じ制服に身を包んだ学生ばかりだった。それもそのはず。今日は私がこの春から通う桜月高校の入学式だからだ。入学式に向かっているたくさんの生徒たちに囲まれ、私はこれからの学校生活に思いを馳せた。
学校へ着き昇降口に入ると、クラス分けの紙が貼られていた。入学式が始まる前に生徒を一旦教室に集めるための配慮だ。私はすぐに自分の名前を探し始めた。岩崎という名字のおかげで、クラスの最初の方を見ればすぐに自分の名前を見つけることが出来る。1組から順番に見ていき、2組に岩崎雅の名前が書かれていることを確認した。
「さて、楓はどこのクラスになったのかな?」
中学の頃に仲が良かった、坂下楓。彼女も私と同じこの桜月高校に入学している。彼女の名前を探している途中、その本人に中断させられることになった。
「よっ、雅!私も同じ2組だぜ!今年も1年間よろしくな!」
「やっぱり今回も同じクラスだったんだね。ここまで来ると腐れ縁なんていうレベルじゃないね。」
楓とは小学校からの付き合いだが、今まで別々のクラスになったことがないのだ。もはや運命すら感じる。
「そうだな。ここまで来たら運命なんじゃないか?…ってどうした?ぽかんとして。」
「ううん、なんでもないよ。同じこと考えててびっくりしただけ。」
さすが幼馴染み、考えることまで同じとは恐れ入る。
「雅も同じこと考えてたのか!いやー、やっぱり幼馴染みなだけあるな!っと、そろそろ教室に向かおうぜ。クラスのみんなで集まってから体育館に向かうらしいぜ。」
「そうだね。じゃあ、教室に向かおう。」
1年2組の教室に着いた私たち二人は、クラスのみんなが揃うまで待つことになった。教室の黒板にはどの席に座ればいいか分かるように、クラス全員の名前が書かれていた。私は、入り口に一番近い席だった。楓の席は少し離れた位置になった。少し離れたとはいっても、列を1つ挟んで向こう側の席なので、ちょっと動けばすぐに喋ることができるちょうどいい距離だ。徐々に席が埋まり始め、全員揃ったところで、担任の先生らしき人が現れた。
「全員揃っていますね。私がこのクラスの担任です。これから一年よろしくお願いします。これから体育館で入学式が始まるので、貴重品だけ持って移動し始めてください。」
担任に指示された通りに、私たちは体育館へ向かい始めた。隣の教室の生徒たちもざわつき始めたので、これから向かうのだろう。体育館は、校舎から出て裏側の階段を降りたところにあった。中に入ると、舞台に近いところから、新入生、保護者、そして、舞台横の壁際に来賓という配置で席が用意されていた。新入生が全員席に着いたところで、入学式開始のアナウンスが流れた。校長からの式辞、来賓からの祝辞を終え、生徒会長の歓迎の言葉が始まった。
「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。在校生一同、皆さんの入学を心待ちにしておりました。新しい環境に戸惑うこともあるでしょう。私も入学した頃は同じでした。右も左も分からないことばかりで、不安になることも多々ありました。しかし、先輩たちがしっかりと支えてくれたおかげで、徐々に慣れることができました。先輩たちに倣い、私たちが皆さんの不安を少しでも軽くできるようにサポートしていきますので、学校生活を大いに楽しんでください。改めまして、ご入学おめでとうございます。」
生徒会長のその堂々とした態度と演説に、私は心惹かれていた。言葉だけで心を動かされたことが衝撃的だった。
「すごいね、なんか上級生って感じだね。」
「確かにな。私たちと学年が1つしか変わらないのにすごく大人っぽく感じるな。」
この学校での生活が先輩をそうさせたのか、それともそうなろうと思ってなったのか、今の私たちにはわからない。でも、ただ一つ言えることは、私もこんな風にかっこ良くなりたいってこと。
「ねぇ、私たちも先輩みたいに格好良くなれるかな?」
「どうだろうな。それはこれからの私たちの行い次第なんじゃないか?」
「そうだね、よーし、頑張ろうっと。」
入学式は滞り無く進み、その後自分たちの教室へ戻ることになった。戻ってからすぐに、HRで今後の予定を知らされ、その後自己紹介をするように告げられた。出席番号が1番の私は一番始めに自己紹介をすることになった。
「出席番号1番、岩崎雅です!特技は短距離走です!学校生活を通して、クラスのみんなと仲良くなっていきたいと思っています!一年間、どうぞよろしくお願いします!」
私が自己紹介を終えると、次は後ろの子の番になった。黒髪セミロングの、少し大人しめな感じの子だ。
「出席番号2番、内田詩織です。趣味は読書です。よろしくお願いします。」
言葉少なに終えた彼女に、私は少し興味を惹かれていた。こういう子とも、積極的に仲良くなっていきたいと思っていたからだ。それから、順番に紹介をしていき、楓の番となった。
「えー、出席番号14番、坂下楓っす。中学の頃はバレーボールやってました。高校でもバレー部に入るかはまだちょっと決まってません。岩崎雅とは小学校からの幼馴染みです。雅ともどもよろしくお願いしまっす。」
全員の紹介が終わるとともに、HRも終わりとなった。私はすぐに楓の元に向かい、一緒に帰ろうと提案した。
「クラスのみんなと仲良くなろう計画第一弾!詩織ちゃんと友達になりたいと思います!」
帰り道、私は楓にそう宣言した。それを聞いた彼女は特に驚いた反応を見せるわけでもなく、ああいつものが始まったかという表情になった。
「はいはい、いつものやつね。まずは後ろの席の子から仲良くなって、それから徐々にクラスを侵略していこうっていう魂胆だろ?」
「侵略って!そんな人聞きの悪いこと言わないでよ!」
悪い悪い。そんな風に楓にあしらわれている間に、学校の最寄りの駅に着いた。電車に乗っている間、私は明日からの学校生活に思いを馳せていた。
本文を読んでくれた皆さんも、後書きから読む派の皆さんも、
この小説を選んでいただきありがとうございます。
本文を読んでくれた人はいかがだったでしょうか?少しでも面白いと思ってもらえたなら幸いです。
今回は入学式のお話でしたが、皆さんは高校時代の入学式のことを覚えているでしょうか?
私は、隣に座った人がずっと小説を読んでいて、(何だこいつは…)と思ったのが印象に残っています。
そう思っていた私ですが、今ではその人が親友になっています。世の中何があるかわかりませんね。
さて話が脱線してしまいましたが、このあと雅・詩織・楓の3人がどうやって生徒会と関わっていくのか、
いかにして成長していくのかを見守っていてください。