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~TAKETORI~千三百年の時を越えて  作者: 秋実 怜土
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8:かぐや姫、本気出す

紅大納言に蹴られ、殴られ、ついでに起きてきた女官四人にも蹴られる。

痛みなんて殆ど感じない。起き上がろうと思えば起き上がれる。でも、私は地に倒れ伏したまま動こうとしなかった。


―…………このまま死ぬ?それならそれでもういいか。

どうせ起き上がったって殺される。このままなら、すぐに殺されるということはないだろう。

ドンっと紅大納言に蹴飛ばされる。それ自体はほとんど痛くない。そのくらい馴れているというか、前の訓練に比べればましなもんだ。



転がるうちに、急に体が軽くなる。

ジャバッ

冷たい。息ができない。水の中に落ちたようだ。

―あ………このまま起きあがらなければ死ぬかな………。

水の中にいれば息ができなくなって酸素が取り込めなくて死ぬ。当たり前の道理だ。

―でもなんかなー……………。

いざ死を前にしたときの違和感。悔しいというか、悲しいような。

―ん~………。

思い切って起き上がる。

「はあ…………はあ………………はあ。」

体の中に冷たい空気が突き抜ける。


―ああ、やっぱりこんなことか。


私はまだ、´最高の楽しみ`とかが足りないんだ。最高だ、って思えた瞬間が何度あっただろうか。幸せだ、って思えた瞬間が何度あっただろうか。

つまりはそういうことだ。人間は幸福や快感のため、自分の欲望のために生きる。まだ私にはそれが足りていない。幸せが足りてない。だから、後悔がある。やり残したことっていったらへんだけれど、そんな感じの何かが残ってるんだ。

だから、今はまだ「生きなきゃ。」


さて、もとに戻す。もう手段はない、そう思ったが本当にそうだろうか。これは現実の世界ではない。物語の世界だ。そして私はそれの主人公だ。ならば、主人公補正的な物があったっておかしくない。そして、外にはおじい様もいる。なら、お爺様が何かしら手立てを打っていると考えるのが普通だ。現実だったらそんな巧いことはないだろうけど、物語だったらあってもいい。

私がする最善の手立ては―――――。



時間稼ぎ。


いいでしょう。幸いここにはいろんなものが揃っている。そのくらい、やってやろうじゃないの。

「水のなかは気持ちいいか?もうそろそろ終わりにしようか。その池をお前の血で染めてやるよ。私の好きな紅色でな。」

「そう。それは無理。諦めることね。」

「は?」

そういやさっきまで完全にぐでてたんだ。こんな急に起きたらまぁ、こうなるわな。

「残念ね、ぐでるのやめたの。」

「…………なんだかよくわからないが、まあ、どちらにせよやることは変わらない。私が刀を振るう。お前には受ける手がない。最も、摩訶不思議な月の力を使うとでもいうのなら別だがな。」

「あら、そんなもの使わないでも止められるわよ。」

「ほぅ………ならばやってみるがいい。」

紅大納言が刀を構えて切りかかってくる。

それと同時に、私は脱いでおいた上の羽織もの?を丸めて手に持つ。

刀は叩きつけるものではなく、引いて切るものだ。とすれば、着物でも受けきれるはずだ。

「覚悟!」

刀が振り下ろされた。

バフッ


結果は思った通り、刀はしっかりと固められた着物に受け止められている。紅大納言は驚きの色を隠せない。でも、ちょっと考えれば簡単なこと。洋服に包丁叩きつけても切れないでしょ?そんなことよ。

「さぁ、次はあなたが地に伏す番よ。」

そう言って、思いっきり紅大納言の腹を蹴っ飛ばす。

「はぐぅ!」

紅大納言が地面を転がる。人をいじるのって、やっぱり楽しい。いじってるのか?これは?

次に、急いで松ノ木によって枝を三本おって地面に生えている雑草で結ぶ。これで簡易な剣の完全だ。少なくともさっきの竹槍よりはかなり丈夫のはず。

そこに怒りのこもった声が響く。

「貴様………ここまで私を愚弄したのはお前が初めてだ。」

女官が竹槍を構えるのを手で制す。

「お前等は邪魔だ!なにもできないから帰れ!こいつは私がやる!」

かわいそうな女官。実際そのとおり。だから余計に惨めに思える。まぁ、さしになったのはありがたい。

「ここからは剣技の勝負だ。お前にも分かるな?」

言っていることはわかります。ただ、そんなことをする気はありません。

「ええ、いいわ。」

口は適当に。

距離は十メートル程。

「いざ覚悟!」

紅大納言が走り寄ってくる。私は即席剣を構えずに、地面の砂利掴んでを投げつけた。

「っつふぁ!?」

慌てて紅大納言が後ろに下がる。その隙に一気に迫って、即席刀ではなくまた足で一撃。

「貴様、正々堂々と戦う気はないのか!」

「ありません。」

断言します。時間が稼げればいいんです。そのためだったらどんな手でもいとわない。

「貴様………!」

もう一度切りかかってきたので――――今度はさっき脱いでおいた羽織ものを紅大納言の上から被せる。

「!」

これで紅大納言から私の姿は見えない。今度は即席刀で紅大納言を突く。「っぐ。」

くの次に折れた頭の上にかかと落とし、そのまま頭を踏みつける。

「あの、紅大納言がこんな風になるとはね。他の人にも見せてあげたいわ。」

紅大納言が刀をふるう前に私は足をどけて即席刀を構える。

緊張の瞬間が流れたその時

「待った!」

突然、どこからか男の声がする。

「女性がそんなことするもんじゃありませんよ!」

は?

誰ですかあんたは?

若い少しイケメンな男だ。かなりいい着物……………だと思う。良し悪しなんぞわっからん。

「ああ、そうだ紅大納言様、あなた様に収賄と殺人の嫌疑が掛かっております。ご同行願えますね?」

「拒否したらどうするつもりだ?」

「いいえ、これは帝御自身の命です。」

「………ふん、そうか、いいだろう。」

紅大納言が若い男の後ろにいた衛兵のところへいく。

私の横を過ぎるときに小さな声でいった。

「最後の打ち合い、あそこまで熱くなったのは久しぶりのことだ。」

「それはどうも。」

そして紅大納言は衛兵と一緒に角を曲がって見えなくなった。

「はぁ~………。」

私はその場に倒れ伏す。緊張が抜けてもう泣きそうだ。

「姫様!大丈夫ですか!」

「やっぱ無理……………。」

「姫様!こんなところで倒れては………聞いてますか!」

「聞いてません…。」

「とりあえず立ち上がってください!姫様!姫さ…………!」

うるさいな、今は寝かせて欲しい。砂利の上だけど………………。

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