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~TAKETORI~千三百年の時を越えて  作者: 秋実 怜土
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5:私は神様仏様?

今や時代は平安京、仮の名前はかぐや姫、どう考えても信じられるような話じゃない。ただ単に平安時代に来ただけならまだしも、かぐや姫ときたらもう竹取物語しかないだろう。しかし、竹取物語は創作のはずだ。どういうこった。

もし仮に、ここが本当に平安時代なら、もしかしたら竹取物語は創作ではなかったのかもしれない。名前が思い出せないのもきになる。お父様のいたずらだけなら名前すら思い出せないなんてことはないだろう。それに規模が大きすぎる。全ての人が、着物を着ていたし、建物もそうだった。たかがいたずらでそんなことするだろうか。

と、そこまでいって少し落ち着いたので、外に出る。相変わらず靴下のままだが。まぁ、もうだいぶ汚れてしまっているので関係ないだろう。

秋の風が心地よい程度に吹いている。

キョロキョロと当たりを見渡すと、隣の畑で作業着をきたお婆さんが畑仕事をしていた。どうやら、収穫をしているようだ。お婆さんがこちらに気がつき、手を振っている。

「おーいこっちだ、どうだい、落ち着いたかい。」

「ええまぁ。」

「そいつぁよかった、で、何か思い出したことは?」

私は黙って首を横に振る。もう少し何か思い出せれば名前も思い出せるのに。

「……そりゃ大変だねえ、ああ、そうだ、ちょいと手伝ってくれんか。」

私が頷くと、お婆さんがいろいろ入って重そうなかごを指差す。

「ちょっと手伝っとくれ、じゃとりあえずこれ家の中まで運んどくれ、今日はよくとれてる、まだまだいけるとおもったがぁ年にはかなわんでな。」

渡されたかごには、芋や大根、人参が入っていた。

山盛り一杯、というイメージ通りの量が堆く積まれている。自慢じゃないが私は米袋(10キロ)より重たいものを持ったことがない。正直、運べる自信がない。それでも、頼まれたらやるしかないだろう。

「はい…………………重っ。」

予想通りといったその重さ、ギガ重い。いつももっていってる鞄の三倍は軽くありそうだ。何度でもいうけどそんな重たいものをもったことない私にはとてつもなく重く感じる。私は紅茶の入ったマグカップより重いものをもったお姫様なの!

「はっはっは、良くできた証やな。今年は実に出来がいい。何度か枯れかけたけども、ちゃんと生ってくれてよかったよかった。」

いえ、それ以前にたくさん入りすぎているのが問題だて思います。こんなに山盛り詰めるとかどうかしてます。というより崩れないのが不思議。

そんなことを思いながらもえっちらおっちら運んでいく。畑を抜けて、(ここで息が切れる)角を曲がって、(ここで一回休憩)玄関前まで。

あと一息………はあ。

家の中までかごを運び、降ろすとどしんと音がした。それだけの重さが、この大根と芋の山にはある。

そこに座ってちょっと休憩。肉体労働なんて全くといっていいほどやってこなかった身にとっては少ししんどい。

―もう少しぐらい運動しておくんだった………………。

真面目にやったことのあるスポーツといえば幼い頃に護身用としてやった柔道剣道なぎなたぐらいしかない。体育はよくいえば冷静に周りを観察していた。悪く言えば、もとい普通にいえばちゃんとやってなかったorサボっていたor不真面目だった…………あらどうして悪い言い方の方が沢山思いつくのかしら。

一息ついていると、ドタバタと走ってくる音がする。

「たいへんじゃったらたいへんじゃ、ばあさんやったらばあさんや!」

お爺さんが息を切らして走ってきた。背中には鉈だか斧だかそんなかんじのを背負っている。おそらく夫婦だろう。

「そんなにあわててどうしたんだぃ。また空から人でも降ってきたか。」

どうやら私は空から降ってきたことになっているらしい。そんなはずはない。

「竹の中から……。」

「竹の中から?」

「金が…………。」

「金が?」

竹の中から金………確かに、竹取物語に沿っている。けど、到底信じられる話じゃないし、私的にもそうであって欲しくない。あくまでもお父様の度が過ぎた悪ふざけという形で収めたかった。お婆さんも同じような感想だ。ひとまず家の中から覗き見る。

「いやねぇ、竹の中から金がでただなんて、そんなことあるわけねぇだろ。」

「それが本当に本当に金が金が。」

壊れたレコード爺さんになったお爺さんが、慌てふためきながら隣の竹藪を指差す。

「そんなねぇ、竹から金だなんて。」

「でもでもでもでも。」

お婆さんが根負けしたのか、ため息をついて言う。

「やっぱしみねぇとわからんよ。」

「こっちじゃ、ついてくればわかるさ。」

そこまで話が進んだところで外にでる。

「私にも見せてください。」

すると、お爺さんが少し驚いたようにこちらを見てから言う。

「おや嬢ちゃん、目が覚めたかい。」

「ああ、ついさっき目が覚めたみてぇだ。名前は思い出せねぇし、どこからきたかもわかんねぇ、おまけにいろいろとわからんこともあるが元気やで。」

「名前も住居もわからないってのはまた難儀な。なんて呼べばいいのじゃ。」

「あしが「かぐや姫」って決めただ、そんでいいだろ。」

私からみればどうかと思うというかその名前はまずいというかなんというかなんじゃもんじゃ。あんまりよろしくない。このままだと、私が本当に「かぐや姫」になってしまうような、そんな一抹の不安がある。でも、今はそのほうが話がわかりやすくていいのかもしれない。

「ふむ、じゃあかぐや、まだ起きたばっかりなら、くれぐれも体調には気をつけて。」

「はいお爺様。」

お爺様、と呼ばれたことが嬉しかったのか、笑っている。

「お爺様、か、ふぉっふぉっふぉっふぉっ、そんな風に呼ばれたのは初めてじゃゐ。ふぉっふぉっふぉっふぉっ。」

そのままお爺様一人笑い続ける。そんなに最近いいことが無かったのだろうか。たしか、本家竹取物語では竹藪を治める役人だったはずだ。もし本当に竹取物語ならば、というより竹取物語が本当の出来事を少し脚色したものかつここが平安時代なら、お爺様も役人のはずだ。というかお爺様が愉快愉快なせいで、お婆様が不快不快になっていてなんだか気まずい。そんな雰囲気をぶち壊すべく、話を進める。

「…………あの、金と言うのは。」

「おおそうじゃったそうじゃった、こっちじゃ、ついてくるがよいぞ。」


お爺様の先導に続き、私とお婆様がついていく。偶然にも陣形はドラ[?]エ方式の一列にならぶアレ。お爺様先頭の真ん中が私、後ろがお婆様。

あの並びって敵に会ったときにどう考えても不利だと思うんだけど。だって、丁字不利側じゃない。なんと!ドラ[?]エはあの東郷平八郎で有名な丁字戦法を採用していた!(ただしロシア側)

そんなどうでもいいことはさておき、竹取物語を今一度思い出す。

―最初はかぐや姫がスクスクと成長したんだっけ……それは流石に私の身には起こらないか…………ないよね?

なんだか何でもありな感じがして不安になる。

―で、かぐや姫はたくさんの男に求婚されて…………さっきされたなぁ……………で、そうそう、竹から金がでるのも確かにあった。これが起こるとなると、本当に全部起こりそうな気がしてくる。でも、全て話通りに進むなら、ちゃんと帰れるはずだ。本家ではお迎えがやってきたしね。

そんなことを考えていたら(≒ボケーッとしていた)いつの間にか竹藪の中に入っていた。やはり、竹が生い茂っている。因みに、竹藪に入るのもこれが初めてだ。初めての竹藪?ど~れみふぁそらしど~しらそふぁみれど~。

「ほれみろほれみろこれじゃこれじゃ!」

お爺様が指さす先には確かに、切られた竹の中に砂金が詰まっている。いくら砂金が安いとはいえ、これだけあればそうとうな額になるだろう。

残念ながら私はこれを見ても特に驚くと言うことはなかった。普段から見慣れているというわけではない。ただ、なんとなく竹取物語だからそうなんだろうなぁと。うん、つまりは感覚がおかしくなってるってことね。

「こいつぁ……………………。」

お婆様は口をあんぐりあけて固まっている。

「こんなことは今までで初めてじゃよ………………竹から金がでるなんて聞いたこともない。」

当たり前です。他に例があったらそっちのほうがおかしいです。

さらにお婆様がとんでもないことを言い出す。

「なぁ………もしかしたらかぐやが運んできてくれたのかもなぁ………………。」

はぁ?

なにそれ私は神様仏様?「かぐや」と呼ばれたことよりもその内容のほうが先行する。

「いや、そんなこと…………。」

「う、うむ、そうかもなぁ………ありがたや~ありがたや~。」

お爺様&お婆様が私に向かってナムナムしてきた。

「いや、違うから!」

「なんじゃ、違うのか。」

二人とも顔を上げる。

「まぁ、どっちでもいいがな。ひとまず、これ運んで家に帰るとすっか。」

………何故だろう、この二人はなんとなくお父様に似ている気がする…………。

いや、どことなくというか………この豪快さというか………全部というか………。

そんなことを考えている間に、お婆様とお爺様がせっせと砂金を掻きだしては袋に詰めている。その時、さらに私は違和感に気がつく。

「ちょっと………流石に量が多すぎない!?」

すでに袋に出した量は、明らかに地面から切られたところまでの体積を超えている。

「わしもそう思うのじゃが…………なにせ無くならないもんでな。」

お婆様も首を捻っている。

「なんでやろうなぁ。」

真面目にやってきたから………なわけないな。しかし、こればっかりは訳が分からない。いや、さっきから訳が分からないんだけど、流石に物理法則を覆すようなことはなかった。あ、でも過去に来たと考えればそっちは時間が戻っているわけで、あれ?

「おお、ようやく終わりが見えた。」

既に袋の中には竹の体積の十倍程の量が入っている。圧縮されていたではすまない量だ。竹の中を覗いても、中には節があるだけで、もしかしたら体積の二十倍程ななっていたかもしれない。

底に少し残った砂金がきらきらと輝いて見える。

「あよっこら…………………。」

袋を担ごうとしたお爺様がそのまま固まる。

そりゃそうだ、単純計算、2×2×3.14×15×20で約37キロ。

ご老体がもてる重さじゃない。因みに私は絶対無理。米袋より……ってさっきも言ったはず。

結局、私含め三人掛かりで家まで運びましたとさ。

そのころ、家の前ではちょっとした騒ぎが起きていた。

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