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~TAKETORI~千三百年の時を越えて  作者: 秋実 怜土
10/17

10:回る独楽

あれが内大里でこっちが省舎。」

博定さんの言うことを聞きながら―――周りのうっとうしいナニカに目をやる。本当にうっとうしい。これはあれですね、例えば裁判で「精神的苦痛が……」とかいえば勝てるレベルですね、うっとうしい。いや、確かにかぐや姫はこんなかんじだったけどね、そんなとこ再現しなくていいのに………。

「…………で、やっぱり流石にうっとうしいね………。」

博定さんもそう思うか………っていうか思わない方が異常。

「どうにかならないのかしらね…………。」

「一応藤原家の肩書きはあるからそれで少しは何とかなるかもしれないけれど…………よし、今日は帰ろう。」

「ええ、そうね。」

やっぱりそれが一番いい。どうにもこうにもこんなんやってられない。



帰り道、博定さんが突然こんなことを言い出す。

「もし私が姫に「結婚してください」っていったらどうするかな?」

「断るわよ。当たり前じゃない。」

「そうか…………やっぱり姫は素敵な人だ。」

何を急に言い出すのだろう。

「私が誰か女性に求婚したら………ほぼ確実に肯定の答えが返ってくる。姫もそうでしょう?」

「ええ。」

この世界ならば、たとえそれが天皇であったとしても、そうなるだろう。それは確かに凄いことではあるが、

「でも、それって虚しいんだよね。」

何も幸せではない。そんなもの、電卓に計算の答えを求めるようなもの。相手は幸せかもしれないが、それに付き合いたくはない。

「上っ面だけを見て決める人なんて……私は好きじゃないわ。」

「うん………でもね……………。」

そう、それは望んでも叶う望みではない。いくら内面をみてほしくても――――外面が華やかすぎると必ず内面に目はいかない。

「だから、私を口説きにきたのかしら?」

「いや、そんなことしたらそれこそ他と変わらないよ。でも、安心した。同じように気持ちが理解してくれる人がいて。」

「それは私も同じ。ここに来てから………不安の毎日よ………。」

「そういえばどこから来たか聞いてなかったね。」

どう答えようか。月から来た、を押し通すのは何だしね……。

「そうね…………仮に、千年後、といったら信じるかしら?」

「え?」

「いいえ、忘れてちょうだい。ただの戯れ言よ。」

なにバカなことを言ってるんだ私は。そんなこといったって、信じられるわけが―――――。

「信じるよ。」

「え?」

「確かに驚きはしたけど、でも、君が言うなら――――それは信じるよ。というか疑ってもしょうがないしね。」

まぁそうか、と納得する。私の素性は私しか知り得ないから、どんな適当なこと言ったとしても信じるしかないし、確認する手だてもない。

「千年後か………いったいどんな世の中になっているんだろうね?想像がつかないよ………。」

気をつけなければいけないのは、これが実際にあった出来事なのか、物語の中なのかということだ。もし史実なら、不用意に発言してはいけな……………くもないのかな?今の私の過去にもこれがあったのかもしれない。私が最初だというのはまずないだろう。とすれば私が何を言っても、というより今考えている事さえ在った出来事………………じゃなに言ったって関係ないか。

「そうね、例えば離れた所からでも会話できるようになるわね。」

「離れた所って……………なにか怪しげな術でもつかうのかな?」

「怪しげな術というか…………声って離れすぎると聞こえないでしょ。じゃあ、それをもっと遠くまで届くものに変えればいいのではないか。でもそれだけじゃ相手に繋がらない、相手が受け取るなにかが必要になってくる。」

「………声を何かに変換して飛ばす?」

「そうね、例えば歌だって声を文字に変換しているでしょ。それを一瞬のうちにやっているようなものが、千年後ぐらいには出来るのよ。」

「なんだかとっても夢のある未来だね……。」

「その前になんどもなんども大きな戦があって…………まぁそれがあったからできたのかもしれないけれど。」

「戦……私は経験したことないよ。兄上殿は後継ぎを巡っていがみ合っているけど。」

そうか………後継ぎ争いがあるのか。基本的には長男だけれどその限りではないから次男辺りまではチャンスがある。ま、三男以下はそうそう巡ってこないわね。

「…………まぁ、でも自由だから良いものよ。私は将来がすでに決まっていたから。別に嫌ってわけじゃないけれど、何か自分で選べないってのはね…………。」

「そういえばどんな家だったの?」

「そうね、例えるならば独楽みたいな家族よ。」

「…………いまいちよくわからないな?」

「それはまた今度にしましょう。私はこの後……………寝よう。」

博定さんが苦笑する。

「寝てばっかりだね………。」

「せっかくの機会は有効活用しないと!」

気がついたら家の前まできていた。

「ではこれで。今日はありがとうございました。」

そういって頭を下げ、家に入る。

私の家族は独楽のよう―――――中心に振り回され、離れない、それが私。いつもの書類の山が、少しだけ恋しくなってきた。

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