シナリオ1 05街道の戦いにて
『(―――さて、切り抜けると言っても如何するかの。
それに・・・・・・。)』
己の現状を確認し、思考と『氣』を巡らす。
その中で左手にほんの数瞬視線を向ける。
『(迂闊にも刀を手放してしまった・・・。
苦無いでも応戦は出来るがかなり分が悪い。
・・・・・・一体何処に落ちた?)』
ゴブリンライダーを視界から外さないように周囲を見回す。
『――――――あった!』
警戒しているせいか、それとも戦闘のへの高揚のせいか
鋭敏になった感覚のおかげでソウイチロウは己の剣を見つけることが出来た。
しかし、その場所は・・・・・・。
『(よりにもよって、アヤツの向こう側か・・・。
これは迂回するか、脇を潜り抜けるしかないか・・・。)』
ゴブリンライダーを挟んだ向こう側に落ちている。
確保するには眼前に迫るゴブリンライダーを上手くかわし対処しなければならないだろう。
状況を確認し、コウガは如何に窮地に晒されているかを改めて確認できた。
嫌な汗が流れ自然と体がわずかに硬直し焦りが生まれてしまう。
騎手たるゴブリンライダーはそんなコウガの様子に気付いたのか凶刃を煌かせ―――叫ぶ!
「――――――Gyhaaaaa!」
それを聞き狼はコウガに向かい駆け出す!
焦りの為かコウガの反応が僅かに遅れてしまう。
『――――――っく!
致し方なし!駆け、抜ける!』
決断する暇もなくコウガは狼に向かって走り出す。
数瞬もしない内にコウガと狼の距離は無くなって行く。
二つの影が重なる瞬間
『―――甲賀式・走技法:走り猪!』
『氣』を使い前面への驚異的な突進力を持って跳んだ!
とっさの判断ではあったがそれが功を奏したのか狼の脇をすり抜ける事ができた。
―――しかし
「Gyhaaaaa!」
すり抜ける瞬間に騎手の凶刃が振るう。
脇を僅かに切り裂かれ紅い線が出来ている。
『くっ!………だが、浅く済んだか。
―――それに』
脇の怪我と腕の怪我の事を気にしながら足元に目を落とす。
そこにはコウガの刀が落ちている。
立ち上がりながら刀を蹴り上げる。
そうして浮かんだ刀の鞘を左手で掴み脇構に構える。
『ここからは反撃と行こうかのぅ。
―――――覚悟せぇよ!!!』
その目の前には反転したゴブリンライダーが構えていた。
コウガとゴブリンライダーは互いに牽制するように睨み合う。
緊張が場を支配するように重圧を掛けてくる。
ほんの僅かな切っ掛けで両者は動いてしまうだろう。
―――――…………Whooooon!!!
緊張に耐えかねたのか狼が吠える。
『―――――疾ッ!』
「―――――Gyhaaaaa!」
それが合図となり両者は駆ける!
先程と同じように数瞬で二つの影は重なるだろう。
―――だが、先程と同じではない。重なる前にコウガは足を止めて踏ん張る。
重なる瞬間、狼を左へ流すように回転しながら受け流す。
瞬間、騎手の凶刃が再び迫る。今度は脇を切り裂く程度では済まないだろう。
凶刃がコウガの身に迫ろうとする瞬間、それよりも早く刀の収まった鞘を狼の腹に突き立てた。
そして突き立てた勢いを利用し逆回転を描きながら鞘からその白刃を開放した。
『これぞ、―――甲賀式・刀技法:馬崩しぃ!!!』
その刃は狼の足を斬り飛ばす。
狼はかなりの速度でコウガに迫っていた。それこそ数瞬で距離を詰めれる程に。
その速度で片足を斬り飛ばされバランスを崩したらどうなるだろうか?
バイクの事故を考えて貰えればわかりやすだろうか?……バイクはわかるよな。
つまり乗り手は振り落とされて地面を転がる。間違いなく大怪我…あるいは死ぬだろう。
つまりこの狼に騎乗していた騎手も御多分に漏れず振り落とされて地面を転がる。
僅かな呻き声を上げた後動かなくなった。
残心の後、狼に目を向ける。
―――――Whoo……Whoo……。
ダメージが凄いのかはたまた斬り飛ばされた足のせいなのか起き上がる事も出来ないようだが僅かに息がある。
コウガはゆっくりとだが狼に近づく。
そしてすぐ側まで辿り着くと刀を逆手に持ち狼の頭に突き刺しトドメを刺す。
―――――Whoo……。
一声鳴き息絶える。
刀を振りし血糊を飛ばし刀を鞘に収める。
その時コウガはふと自分を…いや、今自分の行った事に対して視線を感じた。
『……………!。』
騎手のゴブリンがコウガを射殺さんばかりの視線で睨みつけていた。
まぁ、当然といえば当然なのかもしれないな。
己の相棒を目の前で殺されたんだかなりのヘイトを稼いでいることだろう。
本能的に危機を感じ懐に手を伸ばし苦無に手を掛ける。
―――その時
―――――Whooooon!!!
残った一体の咆哮が聞こえる。
音の感じからして近づいて来るようだ。
――――――――ヒュンッ!
『―――――くぅ!……チィ!』
僅かな音だったが気付く事が出来た。
苦無を懐から抜き出し飛んできたソレを弾く。
ほんの僅かに隙が出来た。
その瞬間、弓を片手に持ったゴブリンライダーがコウガと騎手の間に割って入ってきた。
しかしゴブリンライダーはコウガを一瞥もせず騎手まで駆け寄ると抱き抱えそのまま逃げ出していった。
抱えられた騎手はコウガから決して目を離さずいた。
まるで仇をしっかりと焼き付けるかの様に。
『―――くっ……。―――――疾ィッ!』
目があった瞬間理解する。コイツは絶対に将来の禍根になる……と。
コウガは本能的に、そう本当に無意識に苦無を放つ。
放たれた苦無は騎手に寸分違わす飛んでいく。このままなら眉間を貫くだろう。
しかし騎手の悪運か何かの因果か狼がバランスを僅かに崩した。
「―――――Gyhaaaaa!!!?」
「Gyha!Gyhaaaa!!!?Gyhaaa!?」
苦無が眉間に刺さりその命を終えることはなかったが、それでもその目を抉り突き刺さった。
しかしそれでもコウガから目を離さす同じような………いや、それ以上に鋭くなった視線で射抜いていた。
そんな視線に晒されながらコウガは懐から苦無を取り出す………が、
『遠すぎる。射程外とは、口惜しい。
―――――それに、あの目。』
呟き大人しく苦無を懐に仕舞い直す。
そう、あの目だ。ああいった目をする者は総じて執念深い。
目的の為ならあらゆる物を置いて行きそれを果たそうとするだろう。それこそ己の身でさえも………。
コウガはあの騎手が後後の禍根に成るのではないかと危惧をしながら小さくなって行くのを見ているしかなかった。
騎手とゴブリンライダーが見えなくなると緊張を解き『氣』を鎮めた。
すると今まで無視できるレベルだった痛みがぶり返して来た。
『ふぅ………イタタ。其処まででは無いと思っておったが、結構傷を負ったのぅ。
早く都市に行くか、安全な所で少し休まんとな。』
そう言いつつ街道を馬車の走っていった方に足を向けて歩き出した。
数歩、歩いた所でふと後ろを振り返りゴブリンライダー達が去っていった方を見つめる。
―――――そして、
『面倒な事に成らなければ良いのじゃが。』
眉間にシワを寄せ言うのだった。