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シナリオ1 01青年の旅立ち

この話しはインターミッションとしてとある青年の視点となります。


時は『皇国暦:895年』。

『日ノ本』或いは『皇国』と呼ばれる大陸から隔絶した半島にある国から始まる。

国の呼び名がまちまちだと面倒くさいだろう。故に、真に勝手ながら此処では『皇国』という呼び名で一統させて頂こう。

その『皇国』の分割統治された領土の一つ、その中に存在する屋敷から始まる。

さて、此処からは"彼"の視点で話を進めようか。



Said in:"青年"


ワシは今、自室で禅を組みながら手に持った一通の『紹介状を』眺めておる。


此れは先日に起こった『日ノ本』を揺るがす『未曾有の危機』に際し共闘した『異国の戦士殿』に頂いた物じゃ。

少し長くなるでの、その『未曾有の危機』というのは少し割愛させて頂こうかの。

まぁ簡単に言わせてい貰うとすると『とある存在の封印』が解け掛かってしまっての、それをたまたま巻き込まれた『異国の戦士殿』とともに再封印したんじゃ。

その戦士殿の強さといったら言葉に出来ないほどでの、もう圧巻といった所じゃ。

あのようなつわものが他国にも居る等、世界はホンに広いのぉ・・・・・・。

どうやらその時にワシの戦い方が御眼鏡に適った様での。

戦士殿の所属する『ギルド』なる組合にお誘いを受けたんじゃ。


それ自体はありがたい事であるし、色々な物を見たいという好奇心もある。

しかしワシはこの国の『武士もののふ』である。

おいそれと国を出る訳にはいかん。

・・・・・・そんな事をつらつらと毎夜考えてしまう。



―――――――――タッタッタッ。



ふむ、如何するかの。

いっその事この『紹介状』を破り捨ててしまうのが良いのかも知れぬ。



―――――――――スゥ。



「若様、朝餉はとっくにご用意してあります。

お早くお済ませください。片付けを始められません。」


おっと思いの他考え事に耽っていたようじゃの、足音も襖を開ける音にも気付けなかった様じゃ。


「済まんの、少し考え事に耽って居てボーっとして居ったわ。

今向かうからの。」


そう声を掛けてくれた女中じょちゅうにワシは顔を向けて軽く頭を下げ朝餉に向かう事にした。

朝餉に向かうと途中に女中はワシの顔をチラチラ見て来る。


「・・・・・・如何かしたのか?ワシの顔に何か付いて居るのかのぅ?」


ワシは少し気になって己の顔を手で拭って確認してみた。


「ふむ・・・。特に何も無い様じゃが。」


「若様のお顔には目と鼻と口以外は特に付いておりません。

・・・・・・ただ少し、薄いですが隈が目の下に御座います。

最近よく眠れていないのですか?」


女中はワシの顔を心配そうに覗き込んでくる。

心配をさせてしまった様じゃの。――――――此れは悪い事をした。


「―――いやなに、最近少し考える事があっての。

それに付いてすこし考える所があっての。それでついつい夜更けまで思い耽ってしまうんじゃ。

心配を掛けたようじゃの、すまんかった。・・・・・・後、ありがとうの。」


僅かに笑顔を浮かべ女中に感謝の言葉を言うと、その女中は微かに頬を赤く染め「・・・い、いえ」と返してくれた。

・・・・・・ふむ、風邪かの?






「―――それではお食事が終わりました頃、膳を下げにもう一度来ますね。

それまで失礼させて頂きます。」



どうやら居間に付いたようじゃ、女中が襖を開け中に入るように促してきた。

・・・・・・いかんいかん。最近、寝不足が続いているせいか考えに耽ってしまう事が多くなっているようじゃ。

はよう食事を取らんと迷惑に成ってしまう。さっさと食って体を動かして頭を空っぽにするか・・・。


「案内ご苦労。ではさっさと食って片付ける事にするわ。

この後は何か用事があったかの?」


そう尋ねるワシに女中は少し考えるような仕草をして


「旦那様がお呼びでした。朝餉が終わった後『道場』に来るように、と。

それ以外は特に無いかと。

――――――それでは改めて失礼させて頂きます。」


言い終わるな否や女中はその場を後にする。


「父上の呼び出しか・・・・・・恐らくこの事じゃろうな」


ワシは懐にしまった手紙のことを思い・・・。


――――――グゥ~~~。


先ずは朝餉を済ますとしよう。




朝餉を済ませた後、屋敷の裏手にある道場に向かう事にした。

少しばかり古い外観をしているが中は確りとした造りでもう100年程は持つだろうとワシは思っておる。

土間で草履を脱ぎ修練場に上がる。

修練場の真ん中ほどで此方を向いて目を閉じ、正座している屈強な男性が居る。

もはや初老に差し掛かろうかという年齢ではあるが背筋をピンッと伸ばし得も言われぬ威圧感・・・いや、此れは覇気と言うべき物じゃろう。


ワシはその男性の前まで行き同じく正座で対面に座る。


「父上、お待たせした様で申し訳ありませぬ。」


「問題ない、朝飯は活力の源だからな。それよりも此処では師と呼ばんか。

――――――まぁ、それはいい。お前はなぜ呼ばれたか分かっておるか?」


厳格そうな男性――父上は、目を開き力強い視線でワシと視線をあわせる

その視線にワシは少しばかり気圧されながらも目線を合わせ続ける。


「・・・・・・はい、この『紹介状』に付いての事と思っております。」


そう言いつつワシは懐に在った『紹介状』を父上の前へ差し出す。


「・・・うむ、やはりな。」


そう言いつつ父上は『紹介状』を自分の懐に仕舞ってしもうた。

そして、仕舞った後立ち上がり壁に立て掛けてあった木刀を2本取った。


「稽古と行こう。

体を動かせば頭もすっきりする。」


そう言って2本のうち1本を此方に投げて寄越して来た。

ワシは木刀を受け取ると正座を解いて立ち上がり正眼に構えた。

それを見た父上は同じく正眼の構えを取り体中に気巡らし覇気を持ってワシを威圧してきた。


「では、――――――往くぞ!」


その一声でワシと父上の稽古が始まった。


ワシの流派『甲賀式刀術』は正当な剣術と言うよりは戦場にて直に鍛えられた実践型剣術じゃ。

戦場にて最も輝く殺しの剣といっても良いじゃろう。

ワシは未だ未熟ながら皆伝しており、幾つかの実践を経験をしておる。

そして父上は甲賀の宗主、つまり甲賀式"現"最強である。

詰まる所、模擬戦と言えどそんなワシらの激突は凄まじいものに成る。


行く回かの打ち合いの後、痺れを切らしたのか父上が勝負に出た!


「―――――――――覇ァッ!!」


父上は前に出て右足でワシの左足の直ぐ側を踏み抜き、大上段からの一撃をワシの脳天に叩つけ様としている。

その凄まじい剛剣をまともに喰らおうものなら一撃で意識を落されるじゃろう。

たとえ木刀で受けても確実に腕が痺れ追撃で落される事間違い無しじゃ。

本来ならば後ろに下がるのが定石であり正解なのじゃが今は出来ぬ。

――――――ならば!


「―――――――――疾ィッ!」


ワシは木刀を右肩に当てながらに出た。


「む!!―――覇ァ!」


構わずと父上が振り下ろす。

その時ワシは父上に袴を踏まれていた左足を軸に時計方向に回転し回避する。

そして体を低くし、その勢いのまま右足で強く床踏ん張りがら空きになった脇に木刀を叩き込む!


「―――甘い!」


「――――――ぐぉ!?」


腹に予想外の衝撃が来て、1・2m程吹っ飛ばされた。

ワシは吹っ飛ばされ転がりながら何があったのかの考えるが痛みと驚愕のせいで考えが纏まらん。


「―――な、何が?」


「『甲賀式・刀技法:独楽打ち』、か。あの状況で上手く狙ったと思うがまだまだ甘いな。

その様子だと何が起こったのかも分からんか。」


父上が起き上がろうとしたワシの眼前に右手で木刀の切っ先を突きつけてワシの問うてきた。


「何、簡単な事だ。いい位置の腹が来ていたからな、つい膝が出ただけだ

――――――それで如何する?」


その言葉にワシは驚愕した。

あの瞬間、ほんの少し数瞬としかいえない隙を付いて父上はワシの腹に膝蹴りを叩き込んだのじゃ。

こうして見ると経験の差という物がありありと分かる。

それを噛み締め悔しさと共のワシはこう言うしかなかった。


「―――――――――参りました。」


父上はその言葉を聞くと木刀を引っ込めワシに左手を向け立ち上がるように促してきた。


「ありがとうございます」


ワシは父上の手を取り立ち上がり礼をして父上に目を向ける。


「技の冴えは見事。皆伝としてはまったく持って問題は無い。

体格は、まだまだ成長中だからな。

それは仕方ないとして、なぜ負けたと思う?」


立ち上がったワシを見つめ、最後に一際真剣な目をしてからワシの目を見て問うてきた。

その言葉にワシは考えた。

自画自賛になるが技自体の冴えは父上とは劣ってはおらず、体は出来たおらんとしても父上の年齢と考えると余り変わらん・・・と思う。

――――――成ればやはり


「――――――経験でしょうか?」


わしの言葉に満足したように父上はその顔に笑みを浮かべた。


「そう、経験だ。確かに少しばかりの戦場を経験したようだが、それでは足りん。

ならば私はこう思うのだ。

―――――――――お前は世界を見てくるべきだと!」


その父上の言葉にワシは今日一番の驚きを示した。・・・いや、今日どころか一生の内一番かも知れん。

そんなワシを置いてけ堀にし話を続ける。


「そう、世界じゃ。お前がこの国を出て行くのを悩んでいたのは分かっていた。

恐らくあの時の『異国の戦士』殿も影響しておるのだろう。

それを込みにしてもお前には多くの物を見せてあげたい。

詰まる所・・・なんだ。自分の息子には自由に生きて欲しいという親心、というものかも知れんな。」


父上が言い終わると共にワシは混乱からようやく戻る事が出来た。

そして父上の言葉を頭の中で反芻し噛み砕き、理解するといいようの無い感情がワシの中から沸き起こってくる。


「ち、父上!それは如何言うことですか!?」


自然とそんな言葉がわしの口から流れ出す。

どうも驚愕やら好奇心やらで平静を保っている事ができない。

こうして見ると己でもまだまだ未熟だなと感じずにはいられない。

ワシの心情を感じ取ってか父上がまた口を開く


「ふむ・・・。少し急すぎたか?

まぁ良い、さっきも言った通りだ。お前は世界を見て来い!そして立派な男児となって戻って来るが良い。

だから――――――行ってこい!」


感情が高ぶったせいなのかはたまた腹に受けた一撃のせいなのか、その言葉を聞きながらワシの意識は暗転した。





その数日後ワシは纏めた荷物も担ぎ旅に出ることにした。

我が生家の門を潜ろうとした時、背に何人かの気配を感じワシは振り返った。

そこには父上と母上それに兄妹きょうだいたち、更には女中たちまで玄関先に出てワシの事を見送ってくれていた。


「行ってくるが良い!世界を見て大きな男になって来い!」


そんな父上の言葉を背にワシは足を進める事にした。

世界を見て一際大きな男になって故郷に錦を飾るのだと心に誓いながら。


「先ずは船で大陸に渡らねばな。という事は船旅と成るかの。

・・・・・・ふむ、船旅は初めてじゃのぅ、楽しみじゃ。」


ワシは大きな期待と好奇心、少しばかりの不安をこの胸に宿しこれからを思う。


「さて、待って居れ世界よ

―――――――――甲賀こうが三郎さぶろうが、いざ参る!」



Said out:"青年"改め"コウガ・サブロウ"

青年・甲賀三郎はこの話の主人公となります。


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