プロローグ~物語の始まり~
初めまして
今作が処女作と成ります。
意見、ご感想など在りましたらよろしくお願いします。
ここは暗い暗い部屋の中、一筋の蝋燭の火が唯一その部屋を照らしている。
長い間掃除等はしていないのか埃っぽく生活感があまり無い。
見てわかる範囲では部屋の中は本、本、本。
本ばかりが積まれておりその部屋の持ち主が本に対して並々ならない執念を持っているのが理解できる。
蝋燭の燃える音と本の頁の捲る音そして何かを書き込んでいるのかペンの走る音が聞こえる。
しかし規則的に鳴っていたペンの音が止む。
―やぁ、初めまして。―
不意に声が掛けられる。
この部屋の主なのだろうか、ローブを頭から足先までスッポリと被り人相も体格も判らない人物が頭だけをこちらに向けている。
その手には開かれた厚い本があり、先程までの音はこの人物が出していたのだろう。
―ふむ、どうやら急に話し掛けられて戸惑っているのかな?
それとも、馴れ馴れしくて不快に成ったかな?―
部屋の主はからかう様に話を続けてきた。
その様子には少なくとも此方への害意や隔意はないようだ。
―まぁ、こんな所まで来たんだ。すぐさま帰ろうとしないで少しぐらいゆっくりして行くといい。
しかし、だだ居ると言うのも詰らないだろう。―
―此れに今記している物語は最近知った物でね。今一番のお気に入りなんだ。
どうだい?この物語を一緒に見定めてみないかい?―
そう言うなり先程までペンを走らせていた本を指し。
本自体は比較的新しい物なのか傷や汚れなどは見当たらない。
しかしながら題名は無く、どの様な内様なのかは理解できない。
―これは名前も無い世界の物語の一つなんだ。
内様は所謂・・・そう、王道と言った所だろう。―
部屋の主は楽しげに物語の大まかな概要を話す。
どうやらこの話しを語る事が出来るのが嬉しい様で少しながら声が弾んでいる。
―では僭越ながら私の語りに付き合ってもらいたい。
まず、この話しの始まりはどこがいいだろう?
主要人物が一堂に会したところ?・・・いや、違う。
なら"彼”が学園を卒業した所?・・・それも違う。
では"彼"と"彼女"が出会ったところ?・・・そこは魅力的だがもう少し早い。―
勿体つけながらまるで演劇のような身振り手振りで語っていく。
その様子は興が乗っているのかまるで子供がお気に入りの英雄譚を語っている様にも見える。
―ならば何処か。勘の良い人なら分かってしまうと思うが私は此処こそがこの物語の始まりだと思っている。
・・・・・・そう、"彼"の旅立ちの時だ。―
彼はそう言い本の始まりの頁を開く。
そこには一人の青年の絵が描かれていた。
その青年は袴姿で刀を持つ所謂『侍』と言われる戦士の格好をしている。
―すべては彼の旅立ちから始まった。
・・・いや、すべてが始まったから彼が旅立ったのかもしれない。―
部屋の主はその姿絵を愛おしそうに、感慨深げに見つめていた。
その様はまるで自分の子供を見るようなそんな優しさに満ちている。
―これは多くの人の流れが交わって生まれた物語だ。
しかしながら今は彼"だけ"の物語だ。・・・・・・そう、今はまだ―
部屋の主はペンを持ち語りながら物語を綴っていく。
その物語をこの世界にしっかりと留めて置くようにと
―では、語り始めようか。
名も無き世界の、未だ名も無き物語を。―
お読みいただきありがとうございます。
稚作ではありますが、今後とも楽しくお読みいただけると嬉しいです。