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悪のビガクはこの手の中に  作者: 連開花
二人はプリティでヒーロー編
35/38

第三十五話 ワル、イズ デート

「勝負をしましょう」


 ブルーシェリフの突然の物言いに、俺こと悪童太郎ことブラックメイルは「ふむ」と一度頷いた。


「やぶさかではない」


 何故いきなりこんなところから始まってるのかというと、前回のカラオケ●殺人……いや侵略未遂事件から一夜明け、みよりが特に何事も無くいつのまにか帰還していたことは……まあ置いておこう。

 いきなり始まったのはそう、実に特に何事も無く事件が終わってしまってみよりも無事で伝えることが何も無いからだよお馬鹿さぁん!!

 取り敢えずまあ俺もおなご相手にやり難いなどという言い訳をするのもアレなので、肯定らしきものを返しておういえ。


「で、何で勝負するんだ」


「……デートで勝負です!」


 バシッと俺のことを指差してくるブルー。二人の時間が止まる。

 秘密基地。静止した時の中。二人でプレイしていた大乱闘的な何かのハンマー音が空しく響き渡っていた。


「ちょっと待って、今ホテルの予約取るから」

「いや、えっ!?」


 大人の階段昇る俺が刻む十二の旋律でシンデレラストーリーだ。

 早く帰ってノ●ノ読まないと! ノ●ノ!


 とかしてたらブルーから全力で止められた。

 何故だ……その後めちゃくちゃセクロスするんじゃないの?(偏見)



 ***



 恋。それは春の訪れにも似た甘酸っぱい青春の果実。

 俺と彼女……ブルーシェリフには悪と正義と言う大きな隔たりがある。恋には障害がつきものというが、なるほど、燃えるな?

 俺は髪の毛のセットを気にして、サンプルを覆うガラス張りの壁の前で淡く映る自分に目を向けた。

 頭部の黒いツンツンアンテナが今日もパリッと決まってってお前これブラックメイル姿やーん!

 思わずくだらないノリツッコミを心の中でしてしまったが、俺は元気です。

 ……緊張してるのだろうか。してるのかもしれない。


 思えば俺の人生はモテない人生だった。

 みよりは……あれは正直そういう存在だから置いておくとして、生まれてこの方女子とは無縁であった。

 大体そうだな。みよりが引っ付いてるせいか、塩対応の女の子が多かった。

 みよりがいるだけマシとも言えるが……俺だってもっと女の子にキャーキャー言われたかったっちゅーねん!!

 そういう意味では、今最高に俺はクールでイケている。

 正義の味方とはいえ女の子。勝負とはいえデート。

 ……ふう、モテる男は辛いぜ?(幻想)


「ブラックぅ~」


 来たか、マイハニー。今日は帰さないぜ。

 振り向いた先には、銃とリボンでちょっといつもよりも可愛い自分を演出した完全武装でいつものブルーシェリフ姿の正義の味方が!


「えいっ☆」なんてすごく可愛らしい、ちょっと胸をドキッ☆とさせる掛け声とともに、一斉射撃を行ってきた。


 ……フッ。


「ひでぶっ!?」


 全く予期せぬ一撃に、まあ回避することも出来ずに俺は全弾食らって吹き飛ぶのだった。

 かわせるワケ無いぜ。俺の気分ってば最高に甘くて苦いママレードだったんだもの……。

 ちーん(笑)なんてお鈴のような音が鳴り響きそうなくらいには負傷して倒れている俺に、ブルーは慌てて駆け寄った。


「ブラック……何故回避を……!?」


 しなかったわけじゃないやい。出来なかったんだい。


「ブルー、一つ聞かせてくれ」

「なんでしょう?」

「デートってこんなものだっけ……?」

「はいっ、お互いの全力を尽くして相手をわかりあう尊い彼氏彼女の事情ですよね!」

「ぜってーちげーッ!?」

「わかりあいとは難しいことですよね……この際、私と正義になりましょう!」


 わかっててやってる! こいつわかっててやってる!

 なんか済し崩しにデートという体裁を装って正義に引きずり込もうとしてくる女の子に、俺は肩を竦めざるを得なかった。

 フゥ、やれやれ。純真無垢な童貞ボーイの純情を簡単に踏み躙るとはよくやってくれたものだぜ。

 だが、お前がそうくるのであれば、俺もまた本気を出してデートに臨まねばなるまい。

 ハァァァァアアァッ!!


「必さぁぁぁあっつッ!! 悪童アームホールドッ!!」


 一瞬にして間合いを詰め、相手の腕を絡み取り……ラブ絡みを敢行する。

 くっくっくっ、怖かろう……苦しかろう……!

 たとえ正義という鎧をまとおうと……心の弱さは守れないのだ!

 恐ろしさのあまりに、顔を赤らめて恥ずかしがりながら、ぼそぼそと「やめてっ」とかか弱い小動物に成り下がるがいい……!


「えへへへ~」

 

 特に何事も無く笑顔で組み付かれました。な、なんて野郎だ、ちくしょう。怖い。苦しい。

 先生、ぼくの童帝心臓がフルスロットルで走り出して動悸で人を殺せそうなのですがどうしたらいいでしょうか。

 誰か助けて下さい。それだけがチェリーの望みです。


「い、いいのか貴様! そんなに組み付くと……君のボインが俺のプログレシッブアームをトゥハートしてゴールインしてしまうぞ!?」

「んー? そんなにって、こんなに?」


 むぎゅうと押し付けてくる。

 なるほど……。


「これは確かに殺し合い(デート)だな(遺言)」

「ああっ、ブラックのあらゆるところから血が!?」


 俺の心の底から湧き出る何かがオーバーヒートして心臓が爆発してしまったようだ。

 何か体中から血がだらだらだが、部位が無くなってなければ、なに大したことはない。


「だ、大丈夫だ。これ、あれやから……苺シロップやから……。

 あまりの甘酸っぱさに身体からかき氷捻り出すのに失敗しただけやから……デ、デート……続けようぜぇ……」

「そ、そんな死にそうな体で言われても……」

「だ、大丈夫だから! 今ここでやめられる方が俺のチェリーハートに傷一つ!」

「うーん、じゃ、じゃあ、行きましょう、ブラック。まずはショッピングから、ですよ!」


 そう言って腕を引っ張ってくるブルーはまさに天使だった。

 服を見てくれ、帽子を見てくれ、水着を見てくれとはしゃぐ様はまさに今時の小娘……! ちなみに僕はちょっと肌に対して控え目な布地のビキニとか……いいと思うし……でも競泳水着も……捨て難……じゃなくて!

 中学生から高校生は恋に恋するお年頃。

 その程度の小娘、我が童帝の絶技にかかればオとすのは容易い……(未経験同年代)


「あ、どうです。ブラック。この水着。メットを取らなければ試着も出来ますよ?」

「ふふ、小娘よ。そのキワどい水着を俺に見せてこれ以上どんなダメージを与えようと言うのだね?」


 ふむ、やれやれ……。

 輸血パックの用意って何処に行けばお願いできますかね? スタバ?

 ぼくが死ぬ前に早めにお願いします……。鼻の辺りから血が止まりません、先生。

 アイスを買いにいけば


「はい、あーん」

「ふふ、小娘よ。俺のピュアなハートを弄んで楽しいかね?」


 という童貞男子の心をわしづかみする甘いお口のミステリーバトルを展開し、歩き疲れたようなことを言い出したと思ったら


「よりかかりまーす」

「クク、小娘よ……その童貞の想像するスイーツな女の子みたいな攻撃は俺に効く……」


 肩によりかかって来おるわ。あざといな、流石あざとい。

 その後も何故だか知らんが好意マックスハートな攻勢が俺へと続く。

 これがもし高度な俺へのメタ戦術だというのなら、俺は敵の実力を過小評価していたと言わざるを得ない。最高です。

 まあこれも俺のイケメンぶりあってのこと。ブルーの心を鷲掴みにしてしまうとは、俺も罪な男だぜ……。

 お金を払ってソープにいって接待されているだけなのに気付かなくてのめりこんだ挙句嬢から拒否されるような感想を胸に、俺は取り敢えずデートを満喫するのだった。

 とはいえ、俺もブルーも大してデートというものに対して、どうすべきかという知識があったわけではないので、ほとんどは歩き回っていただけという気もする。

 別段デートスポットを歩くでもなく、街から出て近くの海浜公園までぶらぶら。

 途中、ブルーが興味を示したのは、ボート場だった。貸し時間は1時間300円。まあそんなもんか。


「おおっ、乗りませんか、ブラック」

「ん、いいが。ボートってなんか古風ね」

「そんなことはないですよ! デートの定番じゃないですか!」


 えっ、そうなん? 昔のトレンディードラマ的な定番じゃないのそれ?

 しかし、ガールフレンド(直訳)がそう仰るのならそうしなければいかんズラ。

 なあに、湖上でおなごと二人きりの空間が作れるというなら三百円も六百円も、例え七千二百円だって惜しくは無い。

 乗り込んで、じゃぶじゃぶと漕ぎながら湖の中心に。

 ……静かだ。ボートで出ている人はいるものの、まばらでとても互いの会話が届くようなものでもない。


 湖に出てしまうと、ブルーはニコニコと俺や景色を見て楽しむだけで会話が無くなってしまった。

 気まずいというわけでもないが、特に喋る事案が見つからず俺もまたボケーとする。

 ふむ、悪くない雰囲気ではある。何だか癒される感じだ。

 のんびりとした時間が流れて、ただ穏やかな時間を漂っている。

 まあ、激しい戦いも終えて、たまにはこういう風にゆっくりと休むのもイイのではないだろうか。

 正義と悪にもたまには休息が必要だ。

 その時、風が吹いた。船が軽く動くほどの重い風に、水が跳ねる。

 それがブルーの胸元に飛んでいた。


「あら、水が」


 胸元に飛んだ水に、ブルーが困惑気味な顏を見せた。

 な、何てことだ。ブルーの胸元が水に濡れてヌレヌレいやーん。


「よし任せろ俺のこのこんなこともあろうかと用意していた絹のハンカチでオパーイのヌレヌレを取れる男だ。フキフキの達人にここは任せるがいい」

「え゛。い、いや、ブラック。それくらいはわたし、じ、自分で出来ますから」

「フキフキの達人にここは任せるがいい!!(おっぱい揉みたい)」

「ひ、ひいい、こ、心の声がダダ漏れですよブラック!」

「任せるがいい!!(おっぱい揉みたい!!!!)」


 俺のバカ正直な心の声よ、俺とお前で二人一人の本能だからな、俺はお前を否定しない(おっぱい揉みたい!!!!)


「フッ……いざ……ッ!」


 すくっと立ち上がって、片足立ちで残像を生み出すような、究極の静を体現した瞬動によりボートに揺れ一つもたらすことなく、俺はブルーのなかなかのボリュームである胸へと、いざ……!

 もう一歩、手を伸ばせば楽園へと到達出来る距離。



『正義の味方はいねがあああああ―――――――ッ!!』



 ほんの後少しの距離。もう手が届くと言うところに至った瞬間、ざばああああんと、湖の中からタコが現れた……。

 いや、タコ型の侵略者なのだろうか……。

 だが、問題はそこではない。問題は、ヤツの出現の仕方にあった。

 海中から突如飛び出した衝撃で、打ちあがった水がバシャアアアアと俺達に降り注ぐ。

 絹のハンカチは水浸しになり、俺もブルーもびちょびちょの濡れ鼠である。


「……」

「……」


『ハッハッハッ――――ッ!! 正義の味方らしき気配を感じて出てくればお前達かァッ! このテンタクル様が貴様たちを地獄へとにゅるり落としてくれるわァッ!』


 俺達の絶妙な雰囲気に気付くことも無く、テンタクルはうねうねとそのタコ足をくねらせる……。


「いいか、テメェ……」

『なアアァァんだ貴様ァ。正義の味方でもないヤツが』

「よく憶えておけ。これがなァ……


 チチとシリとフトモモを奪われた男の、怒りだァ―――――――ッ!!」

『しょくしゅぅぅううぅぅうう―――――――――ッ?!』


 俺の渾身の右腕が閃き、クソタコは星となるのだった。

 虚しい……どれだけ敵を叩きのめしても、俺ァ、合法的かつ自然におっぱいに触る瞬間を失ってしまったのだ。

 もし出来ることならば、神様……もう一度あの瞬間に戻してぼくにおっぱいを。


【いや、それは無理じゃろ……常識的に考えて……】


 どこからともなくペカーとか後光が差して、そんなことを突っ込まれた。

 神にまで否定された。死にたい。


「へくち、うう、びしょ濡れになっちゃいましたし、そろそろ帰りましょうか、ブラック」

「ああ、うん(おっぱい揉みたかった)」

「その心の声はそろそろ消してくれません……?」


 だってショックなんだもん……。

 俺のブルー"との"デートは失意のまま終わるのだった……。



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