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第三話 ワル、負けてもめげずに

 まあ、負けても生きているっていうのは素晴らしい。

 往年の名作ダンジョンゲームでは、身ぐるみを剥がされた上愛らしいモンスターに運び蹴り出されるが、残念なことに、俺にはそういう救済措置的なアレはないので自力で脱出してきたわけだが。

 ブルーシェリフ恐るべし。あの後も小説にして二百行はゆうに使うだろう死闘を繰り広げたのだが、諸氏に教えることが出来ないのが残念だ。

 まあ少なくとも語ることが出来るのは、俺は彼女の巨乳を目に焼き付けたということだけだ。

 というか、気づいてしまうとわりとマジで揺れるおっぱいに目がいって戦いが手につかなかった。ただの脂肪の塊なのになぜあんなにも男を惑わすのか。

 本能ってすごいよな。奇跡体験。


 さて、かくもこの世界の足りない事柄をどんどん語っていかないといけないだろう。

 別段、平和な日本であることは確かなので、俺のこの心のチラシの裏とて特筆すべきことは何もない筈なのだが、心の奥底に宿る中学二年生の夏休みのノートみたいな感情が俺に囁くのだ。何か言えと。

 そう、そうだ。なぜ正義の味方がいるのかを語っておこうか。ウィィィィン、ギュンギュン。あ、肩こり取れていいかも。

 そう、改造されてしまうまで俺も知らなかった事だが、この世には悪と正義がいる。

 いや、本当の事を言うと興味が無くて知らなかった。

 大体どんなニュースも友人の話もその手の話題は話半分でしか聞いてなかったので知っているような知らないような、観測されるまでは箱の中身はわからないという実に量子力学的な観点からアプローチできるだろう俺の記憶ってすごい! と、いうような感じが正しいのだが、俺は心の内だから黙っておくことにしたいのだ(願望)


 ……おほん。

 まあ、ご近所の治安を守るしがない二流ヒーローから、世界の平和をあらゆる魔の手から守っているスーパーヒーローまで、実に様々なヒーローがいる、らしい。

 正義の味方がどれくらいいるかといえば、うちのドンいわくは「まあ千人くらいいたらいいよねー」くらいの数らしい。

 そりゃスーパーヒーローが何千人もいたら悪も裸足で逃げ出すわな。

 まあそんなわけで、悪もまたのさばっているわけですが、まあそもそも正義の味方達は地球に根付く悪にはあまり興味が無い御様子。

 彼らの組織が結成された理由が、地球外とか主に普通の人間が相手にするとヤバイクラスの化け物達をしこたま相手にするということなので、その理念上、上に行けば行くほど地球外生命体を外宇宙に追い払ってるようだガガガガガガッシャン。うーん、腰に来てたのかな。サ●ンパスのような痛気持ちよさを感じる。


 で、正義の味方の上の方が今言った感じだとして、下っ端はどうなのか。

 下っ端は流石にそんなヤツらを相手にするのは荷が重いので、ご町内のヒーローや地域のシンボルになるようだ。まあ、入社一年目の新人は困っているおばあちゃんでも助けてなってことだよ。

 で、それがブルーシェリフなどに当たるわけ……なのだろう。

 だろうというのは、正直言って俺も正義の味方側の考えてることなどわからん! というのが本音だ。

 ブルーシェリフは実際なかなか腕が立つだろうし、こんな日本の小さな街にわざわざ派遣されてくるような正義の味方なのかというと疑問符が浮かぶ。

 まあヤツらの組織がどうというのは、それこそメタ視点などというものでも得てみないとわからないというものだ。気にするな、気にするな。


 逆に俺達悪はどうだろうか。

 うん、まあ、正直、正義の味方どもと違って連帯感とかないし、それぞれが世界征服とか掲げて、オーバーテクノロジーぶっこんでる傍迷惑な集団……かな。

 実際悪の組織も片手で数えるには、なんて言葉とは次元が違うレベルで存在しているようだが、いかんせん協力とかとは無縁なヤツらなので各個撃破されてる可哀想な日々のようだ。

 まあ凄い悪の組織になってくると、そういった人外魔境なヒーロー達と切磋琢磨しているらしいのだが、俺達のようなご町内の平和を乱している程度の悪には情報が来ないので、ここら辺はノーコメントで。

 ちなみにうちの秘密結社はというと……。

 なんて考えていると蹴り落とされた。今まで優雅に構えていた手術台はなかなかの高さで、俺の腰がハッピーセットだよ本当にもう。

 そして俺を見下ろす幼女が一匹。

「おら太郎! 起きんか、ワシの手まで煩わせるのは感心せんぞ!」

 あ、どうも、この幼女様がうちの首領です。

 ちなみに、言ってませんでしたが、ここは我らが悪の秘密結社A|(仮名)の地下基地。

 俺が通う高校の地下に掘られているので通勤所要時間が短くて助かりますね。時給よこせや。

「メルー様。その子どもっぽいパンツはいかんと思うのですよぼかぁ。一秘密結社の首領として、幾ら体は子どもとはいえ、やはりそれ相応のパンツを履くべきだと思うんです、ぼかぁね」

 幼女様のうさぎ柄のついたかわいらしいお子様パンツを眺めながら、俺は悟りを開く。いや、パンツはすべからくいいものだけど、俺として特にそのこだわりを色々言う気は無いね。変態じゃないし。

 ちなみに幼女様のお名前はメルー様です。なんかよくわからないカリスマをお持ちだったから従ってます。まあぶっちゃけマジでそれ以上でも以下でもないねッ!

 どうも彼女曰く、「昨今の風潮を読んで幼女となった」とのことだが、それが本当ならこの幼女、出来る……ッ!

「うん? うん、あ、ほんとだ。ついいつもの子どもパンツ履いちゃった。って、それはいいんじゃよ! なんで負けるのじゃ! お前はうちの唯一にして至高の戦闘員じゃぞ!」

 ご立腹なのか、頬を膨らませてぷんすかぷんすかと苛立たしげに足踏みをする。その姿はただの幼女なわけだがどうだろう。やっぱりカリスマとかねーわ。

「いやいや、あんたが俺を最強の怪人とかにしなかったのが悪いッ!」

「そんなフラグ満載の作りたくなかったんじゃ、のう?」

「ええ、きっとその怪人はなんのかんのキックで一撃で吹き飛ぶわよ」

 幼女の隣で、手術着らしきものをぬぎぬぎしているスタイル抜群の白衣の女性がそう言った。

 いや、これくらい正しく描写するくらいには彼女はスタイル抜群なのだ。大きいことはいいことだ。

「イカルガさん」

 そう呼ぶと、彼女はニコリと笑って持ってるメスをちらつかせた。ちらちら。

「まあ取り敢えず修理は終わったわ。あなたは私達の最高傑作なんだから、もっと本気を出していくべきじゃないかしら。じゃないと、流石の私もあなたに自爆装置を組み込まざるを得ない可能性が出てきちゃって」

「死の危険がひたひたと……ッ! 土下座しますから勘弁して頂けませんか? 靴もお舐めしますよ?」

「冗談よ。悪童君は面白いわよね」

 このイカルガさんが、うちの唯一の幹部にしてマッドサイエンティスト担当となる。うちの科学力は世界一ィッ! を地で行かせるくらいにオーバーテクノロジーを余裕で使ってくる人なのだが、いかんせんこの美女は……。

「そんなことより悪童君! 余剰パーツでゲームを作ったからゲームをしましょう!」

 生粋のゲームオタクで取り敢えずオーバーテクノロジーを如何なくゲーム機本体の作成などに捧げるダメ人間なのです。

 困ったなあ。フリーゲームでよければ俺も鬱を踏破するくらいの気概でダディに挑んでブラックマーケットに投資するのだが、如何せん最近のゲームには疎い。ミニ四駆くらいで勘弁してくんない?

「ほら、コンパ●ル復活を目指してパズルゲームよ!」

「そんなことより幼女様。うちの名前と目的忘れたから聞かせて」

「そんなこと?!」

「よかろう! 我らが悪の秘密結社、ガルマバラハビズラ・マーヤナカンカーラは」

「長い長い」

 もう意味わかんねえよ。なんか炎と氷と雷を吐いて全体攻撃した後に敵を石にしちゃいそうだよ。

「ええい、よいかガルマバラハビズラ・マーヤナカンカーラは」

 幼女様は相も変わらず寝転がる俺に、惜しげもなくその黒の首領ローブから覗く子どもパンツを見せつけながら続けた。

 ツッコまれても続けるのかその名前。

 まあ、にやりと不敵に笑うメルー様が、なかなかこの角度からだと絵になってて、もうわりと組織の名前とかどうでもいいんですけどね。秘密結社Aとか適当に呼ぶし、俺。

 息を吸って吐いて。

 幼女様はそして、ひれ伏す俺にこう申された。

 



「この世界で最も尊い悪になることを目的とした悪の中の悪の組織じゃ!」




 向かうところが全くわかんないんだよなあ……。いや、ホント。

 この幼女についていくのやめようかな、やっぱり。

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