第二十四話 ワル、その怒りを胸に
「いやだ」
いいぜ。
俺がお前達をいつでも助けてやると思ってるなら。
まずそのふざけたお願いをぶち殺す。
「「ええッ!?」」
俺の確固たる意志を持った拒否に、てっきり二つ返事で快諾してくれるだろうと思っていた二人から抗議のような声が上がった。
「ど、どうして」
「甘えんなよ……正義をまるごと救う? その仕事をやるのは悪じゃねーんだよ。だから俺はお前達を救わない。やるならお前達で人を探してやれ」
「本気で言ってるんですか……ッ!!」
強い口調で俺へと詰問してくるブルーシェリフ。
彼女の怒りも尤もだと思う。俺達は、短くとも悪と正義という垣根を越えて、色々とやってきた仲の人間だ。そう言われて頭に来ない訳が無いだろう。
俺だって別にこの二人を、ただのヒーローだとは思っていない。
知人よりももっと親しい……、この関係性を答えるのならば、友人と答えるのが正しいくらいの関係だと感じている。
だがそれとこれとは話が別だ。俺は悪であり、本来はヒーローと相容れない立場だ。
だから俺はブルーの願いを聞き入れることが出来ない。
……。
「本気で言ってんだよ。俺は悪の戦闘員であって、お前達を助けてやれる程高尚な人間じゃねーんだ……。悪いな、他を当たってくれ」
「ッ、ブラックメイルッ!!!!」
「よせ、シェリフ。もうやめよう。……確かにブラックさんの言うとおりだ。僕らは甘え過ぎてる」
「でもッ!!」
「対等であるからこその助力と、甘え縋りついて助けを乞うのは違うよ。僕らは対等な関係のはずだ。正義が窮地だから助けて欲しいなんて都合の良い話を受け入れて貰うのは、やっぱり違うんじゃないかな?」
「そう……ですね……。確かに、そうです。ちょっと都合の良い頼みをし過ぎました。ごめんなさい」
友情を感じてくれることも、それを頼ってくれることも、一人の人間としては嬉しい話だ。
だが、俺も悪としての矜持がある。敵対する正義……それもここまで大きくなった正義の問題をただ助けるわけにはいかない。
スパロウマンも言っていたが、俺達は対等な関係なのだ。
「……家主じゃけど家がギスギスした空気に包まれてて辛い件なのじゃ」
「ククク、青春だねえ」
大人が生温かい目で見守ってくるのは、それはそれで辛いものがあるな。オイ。
「まあ、今後どうするかは置いておいて、君らも今日は取り敢えずここでゆっくり休みたまえ。闇雲に動いたからと言って事態は決して好転しないよ」
「うむ。身の振り方は完治してから考えよ。ワシらも多少の協力くらいは考えておくぞ」
「ありがとうございます。ほら、シェリフ。やれることからやっていくしかないんだよ」
「……ごめんなさい。ちょっと気負い過ぎたかもしれません。わたしもちょっと横になりますね」
「添い寝は任せろ。シャルウィ?」
「今のブラックメイルは嫌いだからお断りします!」
「俺の心の背骨がバキバキと……!?」
ふざけつつも、内心、俺は漠然と考えていた。
正義と悪の関係がこんなことで崩れてしまうのは嫌だなあ、と。
だとしたら……。
「ちょっとすんません。俺トイレ行ってきますわ」
そうメルー様達に告げて、俺は立ち上がる。
「ま、早めに帰ってくるんじゃぞ」
メルー様が素っ気なくそう言ってくれたのが、少しばかり嬉しかった。
……。
俺はある場所に来ていた。スマホの電話帳からある人物へと通話を試みる。
コール三回ほどで、相手は電話に出てくれた。
ここまでは予定通りだ。
「モスキ君、さっきの今で悪いんだがちょっと頼みがあるんだよね。借りを返してくれって言うのは図々しいかもしれんけど」
『アニキじゃないっシュか。本当にさっきの今っシュね。なんでシュ? 内容次第っシュけど、恩人の言葉なんシュから出来る限り全力を尽くすっシュよ!!』
「うむ、じゃあその前に、モスキ君よ……君今アジトにいるの?」
『そうっシュ! もう正義が恐いし今日はみんなでご飯を作って取り敢えず落ち着くまでアジトの中で過ごそうってなったシュ! カレーパーティーっシュ!』
「ならオーケーだ。ちょっとうるさいけど勘弁してくれよ」
『え、それってどういうこ』
通話を切る。俺がいる場所は、もう言わずともわかるだろう。
ハァァァ……。
「お邪魔しますッ!!」
華麗なるジャンプキックで、俺はモスキ君から聞いていたアジト――なんか普通の美容室――の裏口から侵入した。
「ふう、成し遂げたぜ」
「なななななななな、なにやってるシュかアニキ!!」
警報が鳴り響き達成感に満ち溢れる中、モスキ君が慌てて裏口へと駆けてきた。
「交渉だ(物理)」
「堂々と言えば許されるってもんじゃないっシュ!!」
「まあ待てモスキ君。こういうのは初めが肝心だろう? インパクトだ」
「そうじゃないっシュよおおおおおおお、うちの首領がいくら優しくてもこれは怒るっシュよおおおおおお!!」
「誰が怒ると……?」
「しゅしゅしゅシュシュ、首領!!」
奥から聞こえてきた声にモスキ君が蒼白な表情で慌てて振り返った。
奥から出てきたのは。
「な、こ、コイツは……」
俺は目を剥いた。
「更なる幼女……!?」
「そうですね。あなたの眼がしっかりと見えてるなら私は幼女です。ちなみにセメント系ですね」
「イッツァクール……ッ!」
なんか青のストライプが入ったワンピース姿のすごいクールな幼女が現れた。
「……」
扉の方を、冷ややかな顔で一瞥してから幼女は俺の方へと視線を向ける幼女。
「やったものは仕方ないから後で直して下さい。無理なら私が後で直します」
「むっちゃ良い人やん」
「うう、首領の優しさが身に染みるっシュ」
「で、君は何の用ですか。わざわざ深い関係も無い悪のアジトに、何の用事も無く、ラ●ダーキックかまして突入してくるほど君も暇ではないでしょうに」
いや、わりと暇だけどね。
俺は取り敢えず、扉を破った分も含めて即五体投地した。安いぜ、俺の土下座はよォ……!
聞くまで幾らでも頭を地に擦りつけてやるぜェ……!?
「お願いがあって来ました」
「……奥で聞きましょう。ちょうどカレーパーティー中です。食べていくといいんです」
幼女はそう言うと、俺の手を取り、引っ張ってくれた。
***
大分、時間を喰ってしまったが、何とか俺はお願いを済ませて基地への帰路についていた。
もう夜の帳が下りて、街中を点々と置かれた街灯が照らし出す。
心細くなるような裏道の明かりを頼りに、帰路をハビソン号とともに駆けながら、俺は思索に耽る。
正直に言ってしまうと、俺は二人を助けてやりたい。
だが、スパロウマン達を済し崩し的に助けることは無理だ。正義のためにもならなければ、俺達のためにもならない。どちらにも災いの種を……禍根を残しかねない気がする。
本来だったら、こんな小難しいことは考慮せずに突撃するのに……。
単純明快なほど悪の絡む余地のない正義側だけの問題なせいで、手を出すのに躊躇してしまう。
全面戦争なんかになったら、もうそれこそ最悪なシナリオだ。
それこそナルシストンとか言うヤツの思い描く通りになってしまうだろう。
「だが……」
仕込みは一応した。後はそれを実行するかどうか。その踏ん切りだ。
全面戦争を覚悟してでも、俺一人で突撃して奮戦するか。
何も見なかったことにして、スパロウマン達が解決することに賭けるか。
……。
今の俺だとスパロウマン達を信じてているかは別にして、彼らが勝利することに賭けてしまうんだろうな。
そう考えてしまう辺り、俺はやはり今のぬるま湯みたいな悪と正義の在り方が好きなのだと再認識させられる。
鼻で笑っちまう馴れ合いだぜ。
ピピピ。
シリアスをぶった切るのはいつも些細な効果音だぜ。
何よ? とスマホの画面を拝見すると、『メルー様』という文字が。
様まで登録してる自分がすごい律儀に見えて来るぜ……。
はいはい、ポチっとな。
「どうしましたメルー様」
『バッカ! どんだけ長いうんこしにいっとるんじゃ太郎!!』
大便は排出してねーよ。
わかってて言ってるのか、まさかのわからずに意味深な見送りまでしたのか、どっちもありそうでヤだよこの幼女。
「はいはいすんません。今帰ってる最中ですよ」
『ヤバいんじゃよぉッ! スパロウマンとブルーシェリフがどこにもおらん!! 恐らくヤツら二人とも協会に行きおった!!』
「ハァッ?! あの怪我と意気消沈ぶりでですかッ?!」
『そうじゃよ!! もしものためにとつけておいた発信機が協会に向かっておる!! 油断したわ!!』
クッソ、肝心な時にイベントフラグを折ってくれねえ幼女だなあオイ!!
発信機までつけて逃がしてんじゃねえよ!!
「あのバカども!!」
取り返しのつかない事態にならないことを祈りつつ、俺は全力でペダルを回した。
***
ブルーシェリフとスパロウマンは夜の協会に侵入していた。
普段はもう通常業務は終了している時間である。残るのも、幾人かの夜勤組が残るばかりで、ヒーロー達も余程こちらで出来る案件でもなければ帰路についている。……筈だ。
しかし、おかしくなってしまった協会では、何があるかはわからない。
一般の人々に洗脳の手が入っているかもしれないし、洗脳したヒーローを見張りに立てて自分への襲撃を防ごうとしているかもしれない。
懸念事項は幾つもあり、二人とも正直に頭痛がしそうなほど困り果てていた。
「信用に足る人間はいないと思って行動しよう。……悔しいけど、相手の洗脳の方が一枚上手な気がするしね」
「はい。……でも、どうしてスパロウさんまで……」
今回の件については、全てブルーシェリフの独断だった。
せめてでも手を打たなければ。その思いが逸った結果、メルー達の地下基地を飛び出して、協会に向かっていた。
「僕も、ああは言ったけどジッとはしてられないさ。自分の彼女がどうこうされて黙っていられるほどお人好しじゃないつもりだ」
そんなシェリフを見つけて、スパロウマンは後を追いかけてきた形だった。
二人とも、正義のヒーローとしての矜持が、ただ諦めることを許さなかった。
何より、洗脳という手段を取られている今では、増援を集めるという手段も不確定な手段でしかない。対応が遅れれば遅れるほどに詰みとなる盤上に、ややもゆっくり構えてはいられなかった。
「松組の人達がいれば……」
スパロウマンの口から、この事態に唯一対処出来る人間達の不在を憂う言葉が漏れる。
「でも、洗脳されれば一緒ですよ。逆に、まだわたし達でも対処出来そうなヒーローで構成されてることを喜ぶべきなのかもしれませんね」
「そうだね……。さあ、地下に行こう」
二人の案は、ジェネラルスロスを見つけることだった。
スロスさえ見つけて助け出してしまえば、恐らくこの一件は片付けることが可能だ。
それだけの実力と方法をスロスは持っている。
スロスを洗脳という手段で追い込まなかったのも、『彼』に洗脳を捻じ込むことが出来ない表れだ。
「スロスさんを助けて逃げる。危険を感じても逃げる。絶対にそこは守らなきゃダメだよ」
「わかってますよ……。わたし達が捕まったらほぼ詰みますし、そこを疎かにする気はありませんから」
どうにも逃げの一手や隠れてどうこうという手段は苦手なのか、不承不承と言った感じでブルーシェリフは答えた。
それでも文句の一つも言わずに納得するのは、流石である。
「でも、地下にはスロスはいないと思うんですよ、わたし」
「どうしてだい?」
「いえ、スパロウさんを助ける時に一応懲罰房のほとんどを探しましたし……奥の方は流石に探してませんけど」
「そうか……でも、僕が懲罰房に入れられた時、スロスさんも別の房に入れられてた筈なんだけどな……その見に行ってない奥が気になる……」
「行くだけ行ってみましょうか。鍵はありますしね」
暗い地下への階段を降り、湿った空気の地下に辿り着く。
裸電球が点々と用意されているだけの暗い空間は、何か背筋を這うような恐怖を感じさせる。
懲罰房が使われることはほとんど無い。
そもそも捕まえた悪を入れるということも少なければ、ヒーローで素行不良という人間も少ないからだ。
それでも罰の形というのは存在しなければならない。人の弱い心を戒める為に。
「行こう」
スパロウマンの一声に、シェリフは頷いてそっと入れ替わり前を行く。
怪我人を前に立たせる趣味は無いと言わんばかりだった。
一つ、二つと確認していく度、使われた形跡もほとんどない房の中しか見えずに、落胆していく。
そうして両手の指の数を使い切り、その都度落胆し切った先。
奥まで辿り着いたところで、スパロウマンは声を上げた。
「スロスさん!!」
そこにはぐったりとした様子で房の中に横たわるスロスが居た。
シェリフはすぐさま鍵を使って独房の扉を開ける。
「スロスさん、しっかりして……」
そこまで言って、肩を揺すろうとした瞬間の事だった。
スロスの身体は忽然と二人の目の前から消え去っていた。
何が起きたのかわからない二人の後ろから、"かつかつ"とわざとらしく足音を鳴らして歩み寄ってくる者がいた。
「フフフ、探し人はいたかい?」
「ナルシストン……!!」
含み笑いで現れたナルシストンと、相変わらず虚ろな表情で付き添うデルフィニウム。
自身の彼女を卑怯な手段で付き従える醜悪な男に、スパロウマンは強い怒りを露わにその名を呼び捨てた。
「そうか。これはデルフィの……」
「そうです。彼女は匂いで人に簡単な催眠などをかけることが出来る。操るほどのことでは無理でも、多少の幻覚を見せることは訳がないんですよねェ!」
花の名前を冠したヒーロー。デルフィニウムの得意技の一つだった。
してやられたという舌打ちを鳴らして、二人は身構える。
絶望的な状況だった。
「どうしてわかった」
「監視カメラをつけるような余裕は財源にありませんけどねェ。そういう類の能力を持ったヒーローを探して完全にオとしましたよ。全く、本来はもう少しあっさりトップの椅子に悠々座るつもりだったのですがね」
現実的な問題を、ご都合主義的に回避してきた豚野郎には言いたいことがあるが……。
二人は同じ思いを胸に抱きつつ、悔しさに顔を歪めながらも逃げる道を探した。
……。
やはり道は一つ。
「「ぶっ飛ばすッ!!」」
合図も無しに、二人は同じ判断を瞬時に下した。
二人が駆ける。
狭い独房を走り切り、一瞬でナルシストンの下へと飛び込み、一撃離脱だけを目的にした強烈な一撃を叩き込もうとした。
雀の一撃。かなり振り込んできたのだろう――血の滲む練習の成果を感じさせるような、鋭く苛烈な木刀の上段からの袈裟切り。
それに応じるように下から巻きつくように振るわれる、蛇のようなリボン。
「甘いッ!!」
その二つの一撃を、ナルシストンは震脚の衝撃で容易く防いだ。
余波を受けて二人が吹き飛ぶ。
スパロウマンは最早、震脚の衝撃にすら耐えきれず、痛みに呻くしかなくなっていた。
ブルーシェリフは圧倒的な力の差に、愕然として動けなくなっていた。
独房に戻された二人は、その一撃の差で既に反抗する意思を無くしてしまっていた。
―――勝てない。
理解させられたのだ。既に勝負は決していた。逃げることすら、叶わなかった。
「さあ、スパロウマン君にはおしおきですよ。ああ、ブルーシェリフ君でしたっけ。君はここで懲罰ですから、覚悟なさいね」
……。
スパロウマンは痛みに飛んでは戻される意識で考えていた。
力がない事は、罪なのだと。
彼は今、私刑を受けていた。洗脳を受けたヒーロー達によって、ロビーで人間サッカーとでもいうかのように、次々蹴り上げられて宙を浮いている。
死の冷たい感覚すら背中に迫ってきているように感じる。
彼はそれでも尚、誰を恨むことも無く、ただただ力ない自分を悔いていた。
「ぎゃはは、スロスさんの仇をこういう形で討つのはいいののかな弟よ!」
「いいんだよ兄貴! 気にすることないってナルシストンさんも言ってたよ! 思う存分やってヤっちゃってもいいんじゃないかな!」
「あー、そうだな。うん。でも、俺達こんなことしてていいんだろうか」
「さあ……」
霞む意識の中ではわからないが、十人ほどのヒーロー達。
全員、自分で考える力を奪われているだけだ。
どうにか、この人達を元に戻せれば……。
心に宿る小さな炎が燻りながらも燃え上がる。
どうにかして。どうにかして!
「あぐっ……うがぁ……」
蹴られて、蹴られて、蹴られ続け、終わりの見えない痛み。
まだ諦めてはいないが、それでも手段が無い。
強い信念も、成すための力が無ければ全て駄目なのだ。
それがやはり例えようも無く、悔しかった。
「かはっ、は、ははは……」
そしてどうしようもなく滑稽だと思った。そう思うと、自然と笑いが零れていた。
「な、なんだこいつ……」
異常な状況下、向けられた笑みの声に驚き、順番を待っていたヒーローの蹴りが完全に遅れた。
人のいる方とは全く違う、デタラメな方向に身体を吹き飛ばされるスパロウマン。
その身体は何度か跳ねながら、ロビーの入り口へと吹き飛ばされた。
薄れるような意識の中で、自分にかかる影を知覚した。
人がいる……? いつのまに、と彼は顔を上げた。
ひょっとこの仮面を被った、黒い鎧の男が立っていた。
「……ぶら、くさん?」
「……いや、違う……俺は……」
そこまで言って、ひょっとこは言葉を切った。首を一度横に振る。
「やめよう。そうだ。俺だ」
仮面を外して、ブラックメイルは頷いた。
「だめ、でした」
「そうか……」
ブラックメイルは責めるでも、怒るでもなく、ただその言葉を受け入れた。
「今は休め。よくやった」
「は、い」
横たわるヒーローの隣に膝を着いて、ブラックメイルがそう言う。
スパロウマンはその言葉に、涙をこらえながら頷いて、意識を失った。
***
俺はゆっくりと立ち上がった。
「な、なんだお前は」
どいつかは知らないが、モブの一人が指を指して俺に声を荒げる。
「通りすがりのお友達だ」
俺の回答に、なぜか今日見るのは二回目の二人で一人のジェミニマンが笑う。
「ハァ? 友達? 悪の? 戦闘員が? で、友達だったらなんだって言うんだよ」
「怒ったとでも言う気か? アアン? 怒ったらなんだって言うんだ。こちとらヒーロー十人だぜ。勝てるとでも思ってんのか!?」
何人とか、悪とか、正義とか、そういうのは今はもう、どうでもいいな。
「怒ったっていうのは少し違うな―――」
「アン?」
「―――――――ブチ切れてんだよ」




