神社
洞窟の中、
人が三人並べばいっぱいになるような通路、
一定の間隔で並んでいる鳥居、
そこを歩きながら、人間の姫巫女と魔族の姫巫女が二人でひそひそと内緒話をしている。
「ねえ、あの人たちって信用できるの?
そりゃあゆうきが大変だっていうからいかないといけないのは分かるけどさっきゼーレお姉ちゃんを」
人間の姫巫女は心配そうに言った。
けれどそれを魔族の姫巫女は端的に切り捨てる。
「あれは、あいつが抵抗したからでしょう。
それにあれはゆうきの命令って言ってた。それだけゆうきが大変な状況だっていうことよ。」
だが魔族の姫巫女も冷静ではないようだ。
その足取りは今にも走り出しそうだ。
だけど先導のキツネ面の人たちが歩いてるのでそれを追い越すわけにはいかない。
とうとう我慢できなくなったのかキツネ面に話しかけた。
「ねえ、ゆうきが大変なんでしょう。
それならゆうきのとこまで走っていきましょうよ。」
それに白い布を手首に巻いている方のキツネ面が答えた。
「それがダメなんですよ。
この中で走ると自動的に攻撃対象になってしまいますから。」
「何それ、わけわかんない。」
魔族の姫巫女は納得できないように言う。
「いえ、それがですね。
主様、つまりゆうき様が今とても弱ってらして、外敵に対応する余裕がないんです。
私たちもいますけど一応というわけでその仕掛けが発動してるんです。」
その言葉に姫巫女の二人はショックを受けたようだ。
人間の姫巫女はゆうきがそんだけひどい状況に陥っているということに、
魔族の姫巫女はゆうきが万能だと思っていたためそれが覆されたことに、
理由は違えどふたりはショックを受けた。
それを見てあわてたように付け足す。
「いえ大丈夫ですよ。
主様はお二人の力があればすぐによくなりますよ。
ですから心を静めて全力で主様にお力をお貸しください。」
その言葉に二人の姫巫女は気合を入れなおす。
そんなこんなで歩いてると洞窟を抜けた。
そこには立派な神社があった。
大きさ自体は普通の学校の体育館ぐらいである。
全体的に落ち着いた色を使っており、
どこかしゃべることさえためらわせるような厳かな雰囲気がある。
そして神社の入り口から長い階段が降りており、そこにもまた鳥居が一定の間隔で立っている。
「「すごい」」
姫巫女の二人は驚いて言葉がはもっている。
「ではあの神社の正面の階段からお入りください。
我々はここで警護をしておりますので」。
そういって赤い布を足首に巻いた女と、白い布を手首に巻いた少女のキツネ面は洞窟の出口を見張るように両脇に立って動かない。
不安はあれどゆうきが大変なのだ。
姫巫女の二人はその神社の長い階段を登って行く。




