姫巫女二人目
神聖だがどこか荒々しさを感じさせる神殿の中
魔族の少女が祈っていた。
その少女の周りには凛とした雰囲気が在った。
「神よ、われらは屈強なり
神よ、われらは不屈なり
神よ、われらの祈りを聞き届けよ
神よ、力を貸せ」
少女が祈りとはいえないような祝詞を唱えると少女のまわりを荒々しい光が取り囲む。
少女はその光を自分の中に収めた。
そしてすぐにその光を放出し荒々しく操り始めた。
光は少女の周りを高速で回る。
初めはそうやってただ速度を上げて行っていただけだがその動きが変わり始めた。
光が二本に分裂し、片方は少女から離れて空中で荒々しく動き、
片方は少女の周りをゆっくりと漂ってる。
そして空中で荒々しく動いてた光が突然少女の方に猛烈な速度で突進する。
それを少女はじっと見つめ、ギリギリのところで少女の周りを漂っていた光をかき集め盾のようにして防ぐ。
それはあたかも片方が少女を殺そうとし、片方がそれを守ろうとしてるかのようだった。
ただこれはどちらも少女がやっていることだ。
片方は動、片方は静、それを同時に操ることでコントロールをあげるという訓練だ。
いよいよ二つの光の攻防が佳境に入ろうとしたとき、その訓練はバンっと扉を開ける音に中断された。
その入ってきた人物を少女は忌々しそうに見つめる。
「何かよう」
少女はかみつくように言う。
ただいかんせん少女はまだ幼い。
それは精一杯外敵を威嚇している雛と同様人を和ませることしかできない。
ただ今回入ってきた人物は和むような余裕はないようだ。
「私絡むのは結構だけど、ゆうきさんが大変なの!
早く来て。」
その言葉で少女の表情が揺れる。
ただ少女は揺れたことを恥じるように動こうとしない。
「あっ、そう、だから?」
それに今度はゼーレがかみつく。
「あっそうってなんですか、あっそうって!
あなたもここにいるっていうことはゆうきさんに助けられたんじゃないんですか!?
それなのに・・・・・」
そういうゼーレに少女は苦い顔をする。
「私は契約しただけ。
そうだから助けられてなんかない。」
少女は少し悲しそうに自分に言い聞かせるように言う。
「でも、契約したからにはあいつに死なれては困る。場所はどこ?」
少女は誰にともなく言い訳するようにしてからゆうきの場所を聞く。
ゼーレとしてはゆうきのことをあいつとか言ったりさんざんなのでお説教したいところだけど今はゆうきが大変な時だ。自重した。
「神社にいます。あの新しく出来た洞窟を抜けたところですよ。
私も行きますから用意が必要ならさっさと準備してください。」
自重したとは言ったものの言葉遣いそのものは丁寧だが少し慇懃無礼になってたけど。
「用意はいらない。さっさと行く。」
そんな態度など気にしていないというように少女はただただぶっきらぼうに言う。
そしてゼーレは姫巫女の二人を連れて神社に行くのであった。




