失態 *ゼーレ視点
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。」
私は自分の失態のことを思うととても平気ではいられない。
ゆうきさんは非情だから本当に捨てられかねないから。
ああ非情っていうのはひどいっていうのじゃなくてそのまんま情がない。
つまり私たちに対してあんまり関心がないっていうこと。
私は神殿が嫌だからゆうきさんについて来たっていうのもあるけど
どっちかというとゆうきさんに惹かれてついてきた。
それでゆうきさんに連れてきてもらっこの村での扱いがすっごくよくって私はゆうきさんに恩を感じたんだ。
ゆうきさんにこの恩を返そうって。
だから今捨てられるわけにはいかないんだ。
いや嘘はやめよう。
私はもっとゆうきさんと一緒にいたい。
いつも笑ってくれないけど笑ってほしい。
だから捨てられないためにはなんでもするつもりだ。
「ゆうきさん?」
ゆうきさんは何にも答えてくれない。
それどころかうつむいたまんまこっちも見てくれない。
美鈴さんにいろいろと言っちゃったことが悪かったのかも。
ゆうきさんにとっては美鈴さんは特別なように見えた。
ゆうきさんが私を助けてくれたのは簡単に助けられたからだ。
他にも何か思惑があったと思うけどそこまでは分かんない。
でも私を助けるのにもっと大変だったらゆうきさんは普通に私を見捨てただろう。
私は魂についての神であるルーフジール様から加護をもらってます。
その加護によって私は他人の魂を見ることができます。
この技能は国にとって結構役に立つものでした。
私は他人の魂を見てその魂の輝きからその人の素質を見ることができます。
確実ではありませんし、何かの出来事の拍子に魂の輝きが変わることもあるので一概には言えませんが、
兵士の中から近衛を選ぶときに私が借り出されます。
育ててもそこそこまでしか育たない兵士より、育てて強くなる兵士を選んだ方が国にとっては得策です。
その他にも貴族の継承問題などいろいろと有用だったんです。
でもゆうきさんの役には立ちません。
ゆうきさんは他の誰を育てるでもありませんし、継承問題があるわけでもありません。
だから私のこの村での役割は今のところ家事しかありません。
生活能力のない人も村に入るのでその人のところに行ってお掃除をしたりご飯を作ったりという感じです
これは村の役には立ってますけどそこらの村の娘でもできることしかしてません。
正直私自身はいつ捨てられてもおかしくないと思ってます。役立たずですし。
今回たまたま美鈴さんの魂の回復状況のチェックという役割をおおせつかいましたが、
これだけではゆうきさんにもらった恩を返すには到底足りません。
しかも私が美鈴さんの事を見ていたというのに美鈴さんが死にかけたっていう大失敗もしてます。
決してゆうきさんを悲しませたくないのにもし美鈴さんが死んでいたら・・・・・・。
もうどうすることもできないのでしょうか?
「ゼーレ、あの二人を呼んできて。」
「えっあ、うう・・・・」
ゆうきさんから急に声をかけられてあせってしまいました。
でもこうして役目をもらったっていうことはまだゆうきさんに捨てられないっていうことですね。
「あの二人、分かる?」
「あっ、はいわかります。じゃあすぐ連れてきますね。」
そういって私は駈け出そうとしますけどゆうきさんは手を出して止めます。
「奥の神社に連れてきて。」
それだけ言ってゆうきさんは歩いていきました。
「じんじゃ」というのはゆうきさんの故郷の神殿のようなものらしいです。
美鈴さんを連れてきた後に建てられました。
けど二人を呼ぶなんてよっぽどの事です。なんなんでしょうか?
そう思ってゆうきさんを見ていると恐るべきことを気づいてしまいました。
ゆうきさんの魂がひょうたん型になってたのです。
さっきまでは完全な球形だったのに。
おそらく今までは隠してたのでしょう。
でも体調が悪くて隠しきれなくなった。そういうことでしょう。
生まれたばかりの赤ちゃんの魂は球の形をしてます。
それから育つにつれて大きくなっていくのですが、
生き物を殺すとその生き物の魂の一部を吸収し強くなっていくのでだいたい魂の形はでこぼこした球形をしてます。
そのでこぼこは修行で少しはへこんでいきますけど普通はでこぼこがなくなることはありません。
その中でゆうきさんは完全な球形の魂を持っていました。
ゆうきさんも魔物とかを倒してるはずなのに球形のまま大きさだけが大きくなっていったのです。
それはすごい事でした。
ゆうきさんの並々ならない努力により球形が維持されてたのです。
ですが今のゆうきさんの魂はひょうたんのようになっています。
大きい球と小さな球その二つがくっついたようなものです。
しかも恐るべきことにゆうきさんのもともとの魂は小さな方なのです。
このような形になることはまずあり得ませんが、
とてつもなく強い魔物を偶然か何かで倒した時に起こる現象です。
それでも元の魂より多い量の魂を手に入れることなどないのですが。
そして吸収した魔物の魂が大きすぎて魂に不調が起こるのです。
魂の不調は全てのことにかかわってきます。
体が動かしづらくなったり、魔法が発動しにくくなったり。
最悪魂が崩れて死んだり。
今ゆうきさんは元の魂より大きい魂を吸収してすごく調子が悪いはずです。
これなら二人を呼ぶことに納得です。
そして納得すると同時に美鈴さんに怒りと嫉妬を覚えます。
ゆうきさんの状況を知らずにとびかかって押し倒し無茶させたことに怒りを、
そしてゆうきさんがあんな状況になってまでも助けたということに嫉妬を・・・
いえ、それよりかは今は二人を連れてくることが先決です。
早くしないと
ルーフジールというのはアラビア語の魂ルーフとオランダ語の魂ジールを合わせた安直なものです。
ゼーレの神殿での扱いですがそれはそのうちやるかもしれません。
まだ決まってません。




