勇者召喚 *ゆうき視点
「ゆーきおっはよう」
「ん、おはよ」
今日も私の恩人である美鈴が元気にあいさつをしてくれる。
「おーおー、いつもどおりそっけないねえ。
ゆーきがデレてくれるのはいつになるのかな?」
「たぶんいっしょうない。」
「おっ多分ってつけてるってことは脈ありなのかな~?」
私としてはもう恩人であるこの幼馴染に依存しているのである意味デレているともいえるのだけどたぶんそういう意味ではないだろうし、
そう望むならそういうふるまいをしてもいいのだがそういうことを望んでいないと思う。
この幼馴染が望むのは恋愛ゲームみたいに私を攻略することだという。
えっそれを何で知っているかって?
それは夢に侵入して直接聞いたからだ。
夢見という技術で相手の夢に介入することができる。
未来を予測するのもあるが今は関係ない。
その夢の中で私をどうしたいか聞いたのだ。
そう聞いたら攻略する!ってきっぱり言われた。
どういうことかよく聞いてみるとゲームの影響らしい。
話しているうちに(性的に)襲ってきたのでそういう描写もあるゲームなのだろう。
そういうゲームはまだ早いのだと思うのだけどまあ美鈴が望むのならそうふるまうのも別にいいだろう。
それから私はゲームや小説を買って無表情無口っ子というのを勉強した。
なかなかうまく役にはまっていると思う。
そもそも私は一度心が壊れたせいか表情に感情が表れない。
なので無表情というのはあっている。
表情は作ることはできるがそういうのも美鈴は望んでないと思う。
私としてはもうちょっと美鈴と話したいと思うのだけど美鈴が望むのならそれでいい。
いつか自然に表情が出るようになったときはたくさん話せるといいな。
その美鈴だけど私が無表情無口っ子の定番である読書をしていると眠ってしまった。
いつも活動的で活発な美鈴が眠っているとこはなんか胸が暖かくなっていい。
ケータイで写真を撮ろうかなあと思っていると、
「席に座ってくださいね。
ホームルームを始めますよ。」
担任である優男こと新島先生が入ってきてしまった。
ざんねん撮ることはできなさそうだ。
ホームルームが始まるので気持ちよさそうん眠っている美鈴を起こそうかどうしようか迷っていると・・・
教室にひときわ明るい光が出てきた。
それはまほうじんだった。
魔術の深淵を覗いた私からするととても雑な術式。
術式の効果は召喚
おそらくは異世界からの召喚。
こんな雑な術だと生贄が大量に必要とすると思うのだがどうなのだろう。
その術式を壊すべく動こうとした私はふと思いついた。
このまま召喚されてしまうというのはどうだろう?
美鈴は家族とうまくいってないみたいだし、
美鈴は家の中で孤立していた。
理由はおいといて、このまま異世界に行ってみたらいい。
召喚の仕組みは私には詳しいことはわからないが、
このまほうじんを詳しく調べて研究すればかえってくることも不可能ではないだろう。
そう一瞬で考えると、
まず現在稼働している式神をすべて回収し、
雑なまほうじんを修正した。
そのままだと体の部位が一部欠損する可能性があったからだ。
それに私が問題にもなっていた。
魔力、法力、気、まあ言い方は何でもいいが私の体の中には膨大な力がある。
それを召喚するにはまほうじんは力不足なのだ。
そうなるとクラスの人がいるとはいえ美鈴を得体のしれないところに放り出すことになる。
それはだめなので瞬時にまほうじんを一部書き換えて召喚の時を待った。
「いったー!」
あっ
失敗した。美鈴が寝てたの忘れてた。
ほかのクラスメイトはちゃんと召喚されたときちゃんと体勢を立て直していたけどねてた美鈴はできないのを忘れてた。
「ん、起きた?」
ちょっと気まずいので適当に流しておく。
無表情無口っ子キャラっていうのが役に立った。
美鈴は全く状況はわかってないっぽい。
ほかのクラスメートはまほうじんを見てたので混乱はしてるが状況はなんとなくわかってるっぽい。
まあ今は周りの警戒と情報収集が大切なので適当に答えておく。
それで周りを探ってみたがこちらの世界の人はあまり強くないっていうことが分かった。
私が式神を出しても全然反応しなかったし。
一応一番隠行に長けた子を出したとはいえ誰も気づかないとは。
これは思ったより楽勝かも。
そこで情報収集のため適当に式神を放っておく。
あとはこっちで美鈴と適当に姿をくらまして経済基盤さえ確立すれば悠々自適ライフが遅れるかも。
召喚した理由なんて知ったことではないし。
あっけど美鈴と一緒に姿をくらますってことは二人で暮らすってことになるよね。
どうしよう家はやっぱ建てたほうがいいのかな?
美鈴はいぬずきだからいぬもいるよね?
そもそもこっちの世界に犬がいるのかな?
似た生物でも我慢してくれるかな?
ッと二人での生活というより二人きりの生活に思いをはせながらも神官っぽい恰好をした人と担任が話していた。
私にとっては並列思考などお手の物なので聞いた内容を要約すると、
神官っぽいのは担任を勇者、生徒を従者と勘違いしていたらしい。
それを担任が訂正して、状況を聞く。
神官は勇者一人を呼ぶつもりだったのかとりあえず王様から説明があるから来てくれという感じだった。
その後勝手に話をまとめて歩き出してしまった。
そもそも私たちは担任を代表に指名したわけでもないので勝手に担任をクラスの総意としてもらっても困るのだけど歩き始めてしまったのでとりあえずついていくことにする。
美鈴との生活に思いを膨らませながらついていく私だった。