THE FINAL --スーサイドトリップちょちょぷりあん--
(昨日)
リーダー『ねぇねぇ!! 待ち合わせは何処が良いですかねぇ?』22:50
サッチン『思い切って渋谷のスクランブル交差点なんてどう?!』23:41
グモグモ『いいねいいね♡ そしたら時間は朝にしようよ!
会社員とか学生とかさぁwww
キラキラしてる民衆の中心に私達が立ってるってめっちゃ映えるでしょ?』23:42
(今日)
メルチィ『さいごのわるあがきですな~~ スコスコですwww』1:32
ボッチ新々党Z世代『私はもうちょっと控えめなとこが良いかな……
これからのことを考えると大胆な事でも冷めると思うし……』2:45
メロンパンダ『いやいやどうせさw ……おっとここではタブーだった』2:47
リーダー『まぁやって損はないんじゃない!? 俺は賛成だ!!
じゃぁ9月13日の金曜にスクラの中心で待ち合わせってことで!!』4:44
9月13日 渋谷区の渋谷駅北西に位置する場所
宮益坂から道玄坂に至る東西の通りと
渋谷駅西口駅前から渋谷公園通りに至る南北の通りが交わる位置にあり
さらに北西方向に渋谷センター街が伸びた五叉路となっており
計十本の車線が交差して五本の横断歩道が引かれているここは
最も人が行き交う場所で有名な【渋谷スクランブル交差点】
流行の発信地でもある都内屈指の繁華街だ
平日はスーツや制服を身に纏う社会貢献人が行き交い
それぞれの目的地は 交差点の中心に佇んでいる青年よりは何倍も真っ当だろう
「さすがに混雑してるなぁ…… そのほとんどが現在と未来の社畜だな」
交差点で立ち止まる者などいない
しかし歩行者信号が赤に変われば隅に移動し
また青に変われば中心に戻るの繰り返す
日が落ちれば人も変わるが彼だけはそこに居た
夜にもなれば光は星空よりも 地上より輝く夜景へと変貌し
展望デッキからの眺めは最高だと口コミに垂れる者も多いという
「ふぅ…… 往復も楽じゃねぇなぁ!! 疲れた死にてぇ!!」
「じゃぁ死ねばぁ?!!」
奇行に走る青年に声を掛ける奇特な女性
髪はボサボサ まるで手入れをしていない
「ここに来る女の子はシャレオツだとネットに書いてたんだが?」
「どうせ無駄な作業なんだからする必要無いでしょ?
……それとも今回の集まりはアンタにとってヤリモクだった?」
「ヤリモクの男が朝から18メートルを往復するか?
俺だったら体力残しておくね」
「……ハァ?!!! アンタ朝からここに居たの?!!!
プフッ…… アッハハハ…… アンタ馬鹿じゃないの?!
待ち合わせは夜って話し合ったじゃん?」
「……こういう状況だと誰がどんな行動するか分かんないだろ?
先を見越して もしもの時に助けてやることも出来るだろ?」
「うわぁ…… もう判るわ!! アンタ〝リーダー〟だね?」
「正解!! お前は?」
突然彼女のバックから着信のバイブ音が鳴るが
彼女はそれを無視して青年の問いに答えた
「副リーダー扱いされてる〝サッチン〟でぇ~す!!」
「お前がサッチンかぁ…… ボイチャの時より声が透き通ってるな!」
「うわっ口説いてきた!! やっぱヤリモク?!!」
「違うっての!!」
指定時間は実質あと一分後
約束の場所は一応交差点の中央なので
二人は満を持して信号を待ち
変わると同時に中心へと向かう
すると先ほどは見かけなかった初老の男性が立っているではありませんか
頭頂部が綺麗に禿げており 何故か作業服を身に纏っている
持ち物は二人のバックやリュックに比べると
今にも海外にでも行きそうなフライトケース持参で待っていた
「「 もしかして…… 」」
「はいどうも初めまして グモグモです!!」
「「 えぇ?! 」」
チャットの会話でグモグモを連想するならば若い女性
平気で♡マークを使う人物の正体に二人は驚いた
サッチンは嫌そうなというより物珍しさが増している
「すごいですねぇ!! てっきり私と同い年かと!!」
「エッエッエ!! ……最近のジジイもあれくらいお手のもんでさ」
盛り上がっている中で続々とメンバーは集結する
「どうも初めまして…… 〝メロンパンダ〟です」
「「「 初めまして~~ 」」」
手を後ろ頭に当ててペコペコしてやって来たのは
ハートのペンダントをして 少しピンクを意識した服装
右耳にピアス一つは証拠には不十分だが 間違い無く三人は彼をゲイと判断した
「これで四人…… 後二人ね」
サッチンが辺りを見回していると
モニターの真下で蹲っている少女が一人
こちらを見ては逸らし だけど確実に意識を飛ばしている
サッチンは彼女の方へと歩いて行けば 一瞬逃げる素振りをするものの
帰る場所が無いと主張するかのようにサッチンのもとへ引き返した
「お名前は?」
「……〝ボッチ新々党Z世代〟」
「……アハハハ!! やっぱそうかなって思ってたのよ~~
私はサッチン よろしくね!!」
少女は軽く頷いて挨拶を済ます素振りを見せれば
サッチンが彼女の手を引いて皆のところへ
リーダー「残るは一人かぁ…… メルチィだっけ?」
サッチン「私の予想じゃぁ今度こそ歳が近いと思うわ!!」
グモグモ「いやいやこういう出逢いは常に予想を超えるもんですよ」
メロンパンダ「そうですね…… 僕は今のところ全員の予想が外れてます」
ボッチ新々党Z世代「…………」
信号は変わり 隅へ避難する彼らだが
青に変わっても中央で立ち止まる人はいなかった
十分過ぎても変わらないのなら五人で移動しようと決めたその時
「あ…… あの……」
渋谷駅に向かおうとしていた五人を前に
「「「「「 え?? 」」」」」
「私〝メルチィ〟です! 集合場所と時間合ってたよね?」
そこにはポーチ一つ肩にぶら下げた 黄ばんだシャツと短パンを着て
少し目を合わせるのを躊躇ってる女児が現れた
集う目的からして自分達に罪悪感が降りかかる
そんな幼気な存在だった
「あの…… リーダーさんは誰ですか?
サッチンとグモグモはやっぱり同い年??」
「……走るぞ」
リーダーの掛け声で一斉に駅構内へとダッシュ
改札口にSuicaをリズム良く奏でて
駅弁を忘れずサッチンとメロンパンダに任せ
リーダーはグモグモの歩幅に合わせてホームへと急いだ
ドアが閉まるメロディーが聴き終わる頃には
五人全員 と都合良くは行かず
女児メルチィも一緒の電車に乗り合わせてしまった
「なんで私を置いて行くの?!!!」
「それはだな……」
「私も一緒に行くの!!!!」
リーダーは言い返すこと叶わなかった
メルチィの大声は周りの乗客の注目の的となり
五人にとってそれはあまり良くない光景
「まぁまぁ時が来るまで同行させようじゃないか……」
「そうですね…… 争ってもここには交番もありませんし」
グモグモとメロンパンダはリーダーを説得する
サッチンも異論を唱えず ボッチ新々党Z世代は変わらず無言だった
品川駅を降りて新幹線に乗ろうとしていた一行だったが
さすがにメルチィを迷子センターに連れて行こうとした途端
「私はもう帰りたくないんだよあんな場所!!!!」
予見されていたのか 駅の階段を必死に登ろうとしなかった
このグループがこれから何をしようとしているのかも知らないだろうに
周囲の向ける目に負ける彼らは次の列車旅も少女を同行させた
「リーダーさん 目的地は決まったんですか?」
「取り敢えず関東を離れることしか考えてないですねメロンパンダさん
誰も探しに来ないで かつ迷惑が掛からない場所が好ましいですが……」
「旅の行きずりで決行してもいいと思うんです」
「やり方は……」
「それはグモグモさんが用意してくれました」
「ズバリ練炭と睡眠薬ですな!!
……まぁこれは長旅の害になるのであまり語りませんが
それよりも……」
郊外まで時間があるので
グモグモはある提案を出す
「皆さん自己紹介しましょう!! 目的地までまだまだ生きなければならないので!!」
そんなワクワクした雰囲気には到底なり得ないのだが
グモグモの指名でリーダーから座席を巡って時計回りに
「俺はリーダーです!! 本名…… は自分が嫌いなので伏せます
今回の企画に乗り出した理由はまぁ 理想と現実が違い過ぎた事ですね
正直疲れたのでこの旅行だけでも楽しい気分で送りたいと思ってます!!」
小さな拍手が通路に響くが
時刻は深夜帯なので寝ている人がほとんど故に気にされない
「僕はメロンパンダ…… いや〝ちょちょぷりあんです〟」
「それは店か何かの源氏名ですか?」
「いいえリーダー…… 何と言えばいいか……
メロンパンダ本人では無くもう一つの存在というか……」
「あぁ乖離性同一障害ってやつですか?」
「えっ…… あぁ…… そうですね」
「うん…… これ以上は触れません」
「……僕はとても苦痛な人生を味わっていたんだと思います
気付いた時には部屋はバットで滅茶苦茶になっていたました
特に木っ端微塵だったのは恋人との写真立てでしたね
それでやはりなのか…… あなた方と出会う事に前向きになりました」
「……じゃぁ次はサッチンかな?」
指名されたサッチンは目を瞑り
口角を上げて急に立ち上がる
「私はサッチン!! 本名は香椎幸子でぇす!!
趣味は友達とスイーツ巡りでした!!
好きだったものは彼ピッピ!! 嫌いなものは浮気!!
許せないのは家庭崩壊!!
殺してやりたいのは親友です!!
でも踏みとどまったからここにいます!!!!
よ~~ろしくねぃ~~!!!!」
「内容とは裏腹にクッソ明るいな……」
「何よ~~ 合わせて上げてるのに~~」
「あぁ悪い…… じゃぁ次はボッチ新々党Z世代さんだね」
「…………」
大体察しが付いていたのだが
見事なまでの沈黙 皆が注目していたとしても構わず無言
そんな時は強引に男性陣が引っ張るのではなく
女性のサッチンとメロンパンダに任せた方が効率が良い
「アナタの事 教えてくれないかしら?」
「そうそう! もう旅は道連れだよぉ! 全部吐いちゃいな♪」
「……ボッチ新々党Z世代です
本名は貞月真綾 友達は名前の通り零です
好きなものはありません 嫌いなものありません
どっちも見つけられる環境下ではありませんでした
物心が付く頃には周りの空気を読むことに神経を使い
気が付けば疲れ果てていたのでここに居ます……」
拍手は虚しく もう拍手するのは止そうと誰かが呟いたので取り止めた
そして最後に残ったグモグモ ではなくメルチィが
「私はメルチィ!!
好きなものは海藻戦隊コンブチャー!!
コンブレッドには常に「君の喜ぶ姿が俺の生き甲斐だよ」で励まされてます!!
嫌いなものはママと嘘のパパとクソ園長です!!」
「この子も何も無い訳じゃなさそうね」
サッチンがメルチィの頭を撫でていると
最後にグモグモがお辞儀をして話し始める
「年齢的に浮いているグモグモです
この度皆さんと出会い そして同じ目的を果たす為 馳せ参じました」
お堅い挨拶で締め括るグモグモ
多くを語らない彼をこの中で唯一の大人と周囲は認識する
電車旅が終わり 人知れず山の中に入って行く六人
良い感じの使われていない小屋を見つけると 全員がその場で一息吐く
「隙間風がありますね 塞いだ方が良いと思いますよリーダー」
「ガムテームは俺が買ってきてます 軽く閉じましょう」
落ちてる板を繋ぎ合わせて密閉状態に
さっそくグモグモは鉢に練炭を入れ 火をある程度起こせば水を掛ける
水を掛けることにより不完全燃焼でガスの発生効率が良くなるらしいのだ
一人一人に大量の睡眠薬を渡す
「では質素だが皆!! 睡眠薬を飲もうぜ……!! 頂きます!!」
リーダーが初陣を務めるが如く 瓶に入っている粒を全部 口に放り込もうしたその時
物凄い勢いの突風が小屋を吹き飛ばした この時期に発生していた台風の影響である
「「「「「 ………… 」」」」」
全員がその場に固まってしまった
口に粒を入れたリーダーも呆然としていて 含んでいた物を全て地面に溢していた
取り敢えず六人は宿を探した
予約無しで泊まれる風呂と飯付きの下宿を見つけ
一部屋に六人が寝れる場所を用意して貰った
沈んだ空気の中でご飯を食べている中
サッチンがリーダーに文句を言い始める
「気象予報くらい見て来なさいよねぇ…… リーダーなんだから」
「この中の誰も予期していないんだから 誰も死ぬ間際に天候なんか気にしねぇんだよ」
「はぁ…… 自殺未遂とか一番したくなかったぁ もう今回はいいやとか思い始めてるぅ……」
急に立ち上がったのボッチ新々党Z世代
「わ…… 私やっぱり帰ります!」
荷物を持って襖に手を置いたが それ以上は何もせず
その場に崩れるように膝を着いた
「……帰る場所なんて無いんですけどね ハハハハ」
「中止はしねぇよ ここまで来て裏切ることはしない」
取り乱していた彼女が落ち着いたのは深夜1時頃
自販機が置いてあるロビーの喫煙所にて 煙草を吸っているサッチンをリーダーが見つけた
「無駄に生かされてるこの状況…… あのコじゃなくても堪えるわ~~」
「悪ぃなぁグダグダで…… リーダーとして情けねぇよ」
グモグモも合流してこの後のことを三人で取り決め合う
グモグモ「練炭はまだ使えますが…… しばらく雨が続くそうですね
都合良くあった小屋も次に見つかるとは考えにくいです」
サッチン「いっそのことホテルでも借りちゃう? 迷惑掛かるだろうけど死ねば問題ないし?」
リーダー「うーん……」
グモグモ「お金の心配なら大丈夫ですよ 私が多分この中で一番持ってますから」
サッチン「雰囲気から想像してたけど グモグモってやっぱり元社長とかだったの?」
グモグモ「えぇまぁ…… でも時代の変わり目に疎くて事業は失敗 妻にも逃げられてねぇ……」
リーダー「へぇ…… でもすごいじゃないですか」
グモグモ「悲惨なもんですよ? 何十年の月日で馴れた環境が一瞬にして無くなるというのは」
彼もサッチンの隣で煙草を吸い始めた
リーダーだけは禁煙者なので咽せてしまっている
「あのぉ……」
トイレに行っていたメロンパンダが三人に提案してきて
メロンパンダ「もしよろしければ…… 松山市に行きませんか?」
リーダー「松山って愛媛の……? 四国にある……」
メロンパンダ「ですです!! どうでしょうリーダー??」
リーダー「なんたってまた松山市なんだよぉ?」
メロンパンダ「あの…… えと…… 沈む夕陽が絶景の夕やけこやけラインがあります!!」
グモグモ「それは伊予市じゃなかったですっけぇ?」
メロンパンダ「あうぅ…… あっあと心霊スポットで有名な大谷池ってのもありますよ!!」
グモグモ「それも伊予市ですよ」
メロンパンダ「あうぅ……」
リーダー「良いじゃねぇか 心霊スポットで自殺したらその街にも貢献出来るし」
さっそく翌朝 他の二人にも行き先を告げ
六人は長旅を決意して関東を出た
寄り道で食べ歩きする様は周りの観光客となんら変わりはしない
目的がある分 皆その時が来るまで思いっきり楽しむ事が出来た
広島の呉市から松山市行きのフェリーに乗って始めて旅の終盤を実感した
メルチィとボッチ新々党Z世代の二人が眠りに就いた頃
他四人で四国上陸を記念しく酒盛りを始めている
サッチン「いやぁ楽しかったぁ 死ぬ前の贅沢三昧はキマるねぇ~~」
リーダー「ほとんどグモグモさんのお金有っての豪遊っぷりだったなぁ 大丈夫なんすか懐?」
グモグモ「金を抱いて天国には行けません 遺産を相続したい相手もいませんし」
ストロングゼロを飲み干すグモグモに拍手喝采の一同
つまみを突つき合う中でリーダーがメロンパンダに確認する
「大谷池に行くのは賛成として 松山市には何しに行きたいんだよぉ?」
「何カ所か行きたい場所があるのでどうかお付き合い願います どうでしょうかグモグモさん」
「金の心配はしなくて大丈夫です ……ヒック」
愛媛県 松山市 松山港
五人はさっそくメロンパンダに付いて行った
道中で気付く者も出てきたが メロンパンダは愛媛に土地勘を持っていた
少し警戒心を覚えながらも辿り着いたのは松山市営球場跡
松山城が在ったお堀の中に残るホームベースに座る彼は暫く目を瞑っている
「思い入れがある場所なのか?」
「えぇリーダー 昔…… ここで友と野球をしました」
メロンパンダは立ち上がると
暇そうにしていた五人を前に改めて自己紹介を始める
「僕の名前はちょちょぷりあんと言います」
「最初の自己紹介でもそんなこと言ってたわねぇ!!」
手で口を覆いながら苦笑するサッチン
ちょちょぷりあんは提案を持ち掛ける
「皆さん…… まだ死にたいですか?」
「「「「「 …………!! 」」」」」
「僕の身体の元の持ち主…… メロンパンダさん本人は実は死んでいます
僕が殺したわけではありません たまたま見かけた時 自殺を実行している最中だったんです
けど彼は最後に死にたくないと言いながら首を吊りました 皆さんはどうですか?」
誰も口を開こうとはしない中 涙ぐんで答えたのはリーダーだ
「俺は…… 常に気丈に振る舞って生きてきたんだ
でも身体も心も弱い臆病な正確でな 他人の期待を裏切り続けて交友関係0だった
片頭痛って分かるか? どれだけ元気だった時も急に立ってられない頭痛に襲われるんだ……
会社も休みまくって途中から上司になんて言われたと思う? 仮病も程ほどにしろってさ……
片頭痛を治す術は見つかってないし…… どうしようもねぇから会社を辞めてやったよ!!」
地に胡座を掻いて土を弄り始めるリーダー
「次の仕事を探す気力も無かったよ どうせ俺みてぇな馬鹿が就ける仕事先なんか知れてる
田舎の中小企業や零細企業なんかに他人を気遣う余裕がある奴なんかいねぇだろ」
「リーダー……」
「今回でもそうさ…… スクランブル交差点に着くまで実は片頭痛で苦労してたんだぜ
過度なストレスでも引き起こされるから下手な緊張でも許されねぇんだ
なのにリーダーを請け負う辺り笑っちまうだろ?」
「…………」
リーダーが黙ってしまうと次に言葉を発したのはサッチン
「私だって明日に期待を持てないんだよねぇ
彼氏には捨てられるし 実家なんてもうあって無い様なもんだし
でもまぁ…… 今は死にたくないかな…… 久し振りに楽しい旅だったしさ」
サッチンのプラス思考に賛同したのはボッチ新々党Z世代
しかしメルチィだけは泣きじゃくり始めたのだ
「やだぁ!! あんなところ帰りたくない!!!!」
「……僕の家に来ませんか?」
メロンパンダに連れて行かれたのは人里離れた小さな旅館だった
近くから滝の音が聞こえ 観光客がチラホラと訪れている
「ただいま戻りましたぁ!!」
「いらっしゃぁ…… あぁお母さんか」
出迎えてくれた女性の仲居さんとメロンパンダは親しそうに話している
奥から旅館の主人もやって来ると 彼はその二人を家族だと紹介し始めた
「こっちが娘のリカでこっちが息子のリクです!!」
「「 道中 母がご迷惑をお掛けしました 」」
五人は唖然として棒立ちしている
取り敢えずということで部屋に案内される
「さて…… 皆さんはこれからどうしますか? 死ぬ為に大谷池に向かいますか?」
「……つっても意思を削がれちまったしなぁ」
「ここに来た時点で選択肢は増えましたと前もって言っておきます」
どっと疲れが出てしまった四人は畳で寛いでいた グモグモは窓の外の滝を見ている
最初に口に出したのはボッチ新々党Z世代だ
「わ…… 私…… Vチューバー…… したいです」
「えぇここにはパソコンあるので可能ですよ」
「旅館…… 手伝いながら活動します!!」
引っ込み思案だとばかり思っていた彼女の唐突の宣言に周りは驚いている
「メルチィもここで働きたい!!」
「……いいねいいねぇ!! じゃぁサッチンもここで働こうかなぁ」
三人はリーダーを見る しかしリーダーは手で腕を掴んで震えていた
「俺は…… 当日に休みを入れるかもしれない…… それでも良いですか? メロンパンダさん?」
「えぇ大丈夫ですよ!! 皆で支え合って行きましょう!!」
一人 また一人と号泣の大合唱が生まれた
自殺以外の道が 孤独感が拭えなかった今までが 全て消え去ったのだから
全員が寝静まった夜更けに 館内を見回りしていたちょちょぷりあんは
外の橋の上を散歩しているグモグモに声を掛けた
「中々の景観ではありませんか?」
「あぁメロンパンダさん…… いやちょちょぷりあんだったね?」
「はいそうです!」
「……日中は良い物を見させて頂きましたよ まだこんな世の中にも救いがあるんですね?」
「貴方はどうするんです? グモグモさん?」
「……私は一人で向かおうと思います 大谷池に
大谷池じゃなくてもそこら辺で自殺を決行しようと思います」
「グモグモさん…… 死んでは駄目ですよ」
「ハハハ!! 別に後ろ向きって訳じゃありません
寧ろ晴れ晴れしい気持ちで死を迎えるんです 本当にありがとうございました」
「……最後に一つだけいいですか?」
「どうぞどうぞ」
ちょちょぷりあんはメロンパンダの肉体を脱いだ
出て来たのは髭根の付いた青いビー玉の生命体
脱いだ肉体はそのまま死体へと戻る
「っ……」
『惨いモンでしょう? 僕は気付かされたのです
自分は残虐非道なちょちょぷりあんなのだと』
「いやぁ…… はは…… 中々酷いもんですねぇ 最期に予想外の刺激を貰いましたよ」
『僕は今から約80年前 広島でこの様な死体を幾人も目の当たりにしました』
「広島原爆かい? それはそれは私よりも長生きなんですねぇ?」
『本当に…… 本当に一瞬だったんです 友達二人も一瞬にして死んでしまいました』
「いやはや…… そういう説得には弱いですなぁ」
グモグモがその場から離れようとすると
『貴方を引き留めはしません 負の感情も確固たる決意の一つでしょうから!!』
「…………」
『でも私は…… 何十年経とうと〝人と仲良くなる〟ことを諦めませんから
グモグモさんとまだまだ仲良くなりたと思ってますから!! 忘れないで下さい!!』
「……あぁ ……あぁ ありがとうねぇ」
翌日の朝
グモグモは誰にも何も告げず 独りで旅立っしまった
リーダーとサッチンには真実を伝え ボッチ新々党Z世代とメルチィには嘘で伝える
その結果 皆はその日から仕事を覚え始め 旅館の従業員として新しく家族となった
『まぁ僕はビー玉に戻ってしまったので 一番役立たずになってしまったんですけどね』
「……なぁちょちょぷりあん」
『何でしょうリーダー?』
「グモグモ…… 有り金のほとんどを俺達の為に置いてったんだよな?」
『えぇそうですよ』
「それって俺達が甘えてたからかな? それとも仲間として置いてくれたのかな?」
『消えてしまった真意はずっと闇の中です それが人間なんです』
「……仲間だと思ってるんだったらさ またここに来てくれるよな?」
『……そう信じるしかないでしょうね!!』
玄関の向こうには今日の一番客が
新米の四人と陰でこっそりちょちょぷりあんとで
「「『「 いらっしゃませ!! ようこそ吉兆旅館へ!! 」』」」
ご愛読ありがとうございました