第三十五話 王の帰還
「私たちは……ただ……平穏に暮らしたかっただけ……本当は……」
ラスクがブルートを抱きかかえながら声を震わせ、涙を兄の体に落とす。
「ラスク……」
クララには、その姿だけを見れば、ただの純粋な兄妹にしか思えてならなかった。まるで、スラウブと自分のように――。
「きっと別の道があったはずだ。ペルーア王国が平穏でいるための、別の道が。お前らの言う永遠の安泰を得る方法が」
そう言ったスラウブをラスクが涙が溜まった目でにらみつける。
「どんな方法があるって言うのよ!? あんたたちが一番よくわかってるんでしょう!? トルオス王国の恐ろしさを! トルオス王国だけじゃない。外に支配されないためには、〝力〟が必要だわ!」
スラウブはふと左上腕にある<スキーモ>の刺青に目をやった。
「人類の歴史は侵略や支配、破壊の歴史。何年経ってもそう。だから私たちは、その負の連鎖を終わらせようとしたの。〝力〟を使って、ペルーア王国の民たちに人間の欲を満たさせることも意識しながらね。この意味、わかるでしょう!?」
スラウブやクララ、フィオナの霊体は思い詰めたような顔になり、うつむく。ジュディの霊体は、その言葉の意味を理解しようとしていた。
すると、クララが倒れているブルートのもとに歩み寄る。
「彼を――助けるわ」
「え……?」
クララが唖然とするラスクをよそに、ブルートの胸に手を置き、すーっと大きく息を吸う。
ブルートの体が紺碧に光ると、クララはふーっと大きく息を吐いた。
だが、クララの回復魔法の力が足りないのか、ブルートの様子は変わらない。
「フィオナ、ジュディ、力を貸して」
ラスクとの死闘で、自身の魔法の力が弱まっていることを感じたクララが、フィオナとジュディの霊体に魔力を貸すように要求する。
〝……ジュディちゃーん〟
フィオナがクララのもとに歩み寄り、後ろを振り返りながらジュディの霊体に声をかけると、
〝クララがそう言うなら……〟
ジュディの霊体もクララのもとに歩み寄った。
「せーの」
クララの掛け声で、フィオナとジュディの霊体がブルートに回復魔法をかけるクララに力を貸すように手を広げ、【想い】を込める。
だが、ブルートの様子は一向に変わらなかった。
「兄さんは……助かるの……?」
ラスクが震える声で三人に問いかける。
「どうして……?」
クララは、回復魔法に手応えが感じられなかった。フィオナとジュディの霊体の力を借りているというのに。
〝その男はー……もうー……〟
〝クララ……ごめん……〟
死者はいくら魔法でも蘇らせることはできない、それはフィオナとジュディの霊体が一番よくわかっていた。
「そんな……」
ラスクの目に溜まる涙の量が増していく。
「兄さん……兄さん……いやあああああ!」
ラスクが泣き叫びながら、ブルートの体に覆いかぶさる。
「スラウブ! クララ! 無事か!?」
その時であった。
突然、崩壊した『サントゥリオ』の玉座の間に、叫び声とともに誰かが駆けつけてきた。
「イアン!?」
スラウブが後ろを振り返ると、そこにはイアンの姿が。
「……!」
イアンが、倒れ込むブルートの姿に愕然とする。
「……やったの?」
スラウブとクララがブルートを打ち負かし、ペルーア王国を混沌の闇から救ったのだとイアンは確信した。
ところが――。
「イアン、お前の力が必要だ。再生と治癒の力に長けた、温かき炎の守護神アーフィスの力が」
「え……?」
スラウブのその言葉が、自分に何を求めているのか、イアンはすぐに察した。
「だけど……」
「このままでは、新たなペルーア王国の〝混沌〟が始まってしまう。わかるよな?」
スラウブがイアンに近づき、両肩をがっしりと掴む。
「頼むよ。きっと親父も――奴を救うことを望んでいるはずだ」
自分を真っすぐに見つめるスラウブの目から視線を下にそらし、イアンはしばらくの間目をつむる。
そして、意を決したかのように力強く目を見開くと、両肩を掴むスラウブの手をのけた。
「……わかった。僕が、なんとかしてみせる。炎の守護神アーフィスの力で!」
ブルートのもとに近づくイアンを、ラスクが怪訝な目で見つめる。
「炎の守護神アーフィスの力……? あなた……一体……?」
「僕は、炎の守護神アーフィスの力を受け継いだ者――その末裔だ」
ラスクは言葉を失った。炎の守護神アーフィスの力を持つ者は、自分だけだと思っていた。炎の守護神アーフィスの血を継ぐ者がまだ生きていたとは、思いもしていなかった。おそらくブルートも。
「再生と治癒の力を……!」
イアンの体が、紅蓮の炎に包まれていく。
やがてその場に、すさまじい衝撃波が襲い掛かった。
「イアン……!? お前……」
〝母さんから、変化のコツを教わったんだ〟
すると――紅蓮の炎によって身を包んだオオワシのような鳥が、玉座の間に現れた。
「え……?」
ラスクが絶句する。自身の変化した姿とは違う、真なる炎の守護神アーフィスの美しき姿に。
「これが……炎の守護神アーフィス……?」
炎の守護神アーフィスと化したイアンが、左右の翼を倒れ込むブルートへと向ける。まるで、その力を注ぎ込むように。
〝再生と治癒の力を……!〟
紅蓮の炎が翼の先に集まり、倒れ込むブルートを照らす太陽のように輝きを放つ。
だが、ブルートは意識を失ったままであった。
〝クソ、僕の力が足りないのか?〟
スラウブのようにまだイアンは、炎の守護神アーフィスの力を取り込みきれていないようだ。
「治癒の力で、私を回復してちょうだい!」
そう叫んだのは、クララであった。
「戦いの消耗で、魔力が十分に出せないの!」
魔力を回復させたクララと、自分の力を合わせれば――。
〝わかった!〟
イアンは、翼の先の炎をクララに向けた。
なんだか森で日光浴でもしているかのような心地よさが、クララの身を包み込む。
――これがアーフィスの、治癒の力……?
クララは自身が持つ魔力以上の力が湧き上がってくるような、そんな感覚を覚えた。
「……やれるわ」
クララが再びブルートの胸に手を置き、すーっと大きく息を吸った。ブルートの体が、紺碧に光る。
「フィオナ、ジュディ、また力を貸して」
クララの呼びかけで、フィオナとジュディの霊体が再びクララに力を貸すように手を広げる。
〝ジュディちゃーん!〟
〝はい、先生!〟
三人が回復魔法をブルートに集中させると、
〝僕も、手を貸すよ!〟
クララを治癒したばかりのイアンも、再び癒しの炎をブルートに集中させた。
ブルートの体が、暖かみのある橙色に光る。それはまるで、クララにフィオナとジュディの霊体の回復魔法と、イアンの癒しの炎が、一緒に合わさったような色合いであった。
クララが、ふーっと大きく息を吐く。すると――。
すぅーっという息を吸う大きな音が響き渡った。
「兄さん……?」
それは、ブルートの呼吸であった。
「兄さん……兄さん!」
ラスクがブルートの体を揺らす。
「ラスク……?」
ついに、ブルートが目を覚ました。ラスクが泣きじゃくりながら、ブルートの体に抱きつく。
蘇生に成功したことを確信したクララが、二人から距離を置き、その様子を見守る。そしてうなずきながら、フィオナとジュディの霊体と炎の守護神アーフィスに変化したままのイアンに感謝の意を示した。
ところが――。
「ラスク、離れてろ!」
目覚めたばかりのブルートが、ラスクを後ろへ放り投げるようにして離し、スラウブやクララたちと間合いを取って戦う構えを見せる。
「バカ野郎! 俺たちは、お前を助けたんだぞ!」
そんなブルートにスラウブが声を荒らげた。
「何をバカげたことを! ペルーア王国に混沌をもたらす者どもが!」
その時、ラスクが即座に起き上がり、ブルートを止めるかのように背後から体に抱きついた。
「兄さん! もうやめて!」
「ラスク……?」
「ペルーア王国の混沌はもう、終わったのよ……終わったの……」
スラウブやクララたちに襲い掛からんばかりであった、ブルートの動きが止まる。
「何を言っている?」
「もう、戦わなくていいのよ……兄さん」
自身の背中で顔を密着させながら涙を流すラスクを、ブルートは感じ取る。だが、そんな涙ながらに訴えかけているラスクをブルートは振り払った。
「我に、敗北は許されぬ! 我は、ペルーア王国を守るのだ!」
ブルートが叫ぶ。
「ラスクよ! 炎の獅子王ファルートの力を、再び我に与えるのだ!」
「兄さん、もうやめて!」
スラウブやクララたちを倒すために、ブルートが炎の獅子王ファルートの力をラスクに求めた時であった。
〝よすんだ! ブルート!〟
その場に、何者かの声が響き渡る。
「な……」
ブルートは聞き覚えのある声に、再び動きを止めた。
「え……?」
突然クララの前に、紺碧のオーラに包まれた筋骨隆々の狼男が現れた。
それは、ジェイクであった――。
〝もう、その力は必要ないんだ〟
唖然とするブルートに、ジェイクの霊体が歩み寄る。
〝王が、戻ってきたんだ〟
クララはなぜジェイクの霊体が現れたのか理解していなかったが、それは間違いなく、召喚の力によるものであった。
ラスクの話を聞き、ジェイクはブルートの親友であることを知った。その親友が、同じく親友であるブルートを止めたいという【想い】が、自身の魔力を通じて現れたのであろうかとクララは思った。
〝任せよう、彼らに。お前はもう、背負わなくていいんだ〟
ジェイクの霊体がブルートをなぐさめるようにして言う。
「ジェイク……」
死んだはずの親友との再会に、ブルートが膝をつき、大粒の涙を流した。
「ブルート!」
ジェイクを追ってきたかのように、大声とともに突然玉座の間に現れたのは、グスタスであった。
「グスタス……?」
「無事でよかった!」
グスタスがブルートに駆け寄り、膝をついて抱きしめる。
すると、ラスクとジェイクの霊体もブルートを抱き寄せた。
「みんな……」
嗚咽を上げ、ブルートが泣きじゃくる。それは、スラウブとクララはもちろん、イアンも初めて見る、ペルーア王国の暴君ブルート王の姿であった。
「本当は……こんな風になりたくなかった……ただ……みんなと……平穏に暮らしたかっただけなんだ……」
泣き叫ぶブルートの姿はまるで少年のようで、これまで見せてきた暴君ぶりからは想像もつかないような姿に、スラウブやクララたちは唖然とした。
「わかってる。わかってるわ、兄さん」
〝わかってるさ〟
「わかってるよ! ブルート!」
ブルートを囲む三人が抱き寄せる力を強める。
自身を束縛していた何かに解放されたのか、ブルートは次第にどこか安堵の表情になっていった。
そんな四人にスラウブが歩み寄る。
「任せてくれ。お前たちやペルーア王国のことは、必ず守る。みんなの平穏な暮らしを、必ず守る。トルオス王国とは――いつか必ずケリをつけてやる」
「スラウブ……?」
顔をしかめるクララの視線の先でスラウブは、この地を故郷とする父親から受け継いだ特別な力とともに、この世界の未来を背負っていく決意を固めるのであった――。
◆
イアンの母親は、<ルーク>たちを打ち倒した<ガーディアン>の一員である、ドレッドヘア―で筋骨隆々のトカゲの顔をした女ミシェルに守られながら、息子の帰りを待っていた。
イアンは自宅を襲いに来た<ルーク>たちが全滅するやいなや、母親をミシェルに任せ、スラウブとクララのもとへと駆けていったのだ。
「大丈夫よね……? あの子。スラウブとクララも……」
玄関の扉を開け、互いを治療し合う怪我を負った<ガーディアン>たちを心配そうに見つめているミシェルに、イアンの母親が声をかける。
「大丈夫さ、イアンは強くなった。スラウブとクララもきっと、偽りの王を打ち倒してくれるはずさ」
「そう……よね」
イアンの母親はわかっていた。息子がこれまでずっと強がり、自身の弱さを隠していたことを。でも今は違う。スラウブによって、心身ともに鍛え上げられていたのだ。それもわかっていた。何より――イアンは守護神アーフィスの力に目覚めたのだ。
「未来を……世界を……変えてくれる。あの子たちは、きっと――」
そうイアンの母親がつぶやいた時であった。
〝ペルーア王国のみなさん。私はクララ。今魔法の力を使って、みなさんに呼びかけています。どうか、闘技場にお集まりいただけないでしょうか。ペルーア王国に――新たなる王が誕生しました。新たなる王から、みなさんにお話しさせていただきたく、お願い申し上げます〟
いきなり隕石でも落ちてきたかのように、外から声が響く。間違いなく、その声はクララのものであった。
「なんだ……?」
ミシェルが空を見上げる。周りの住民たちも、何事かと言わんばかりに外へと飛び出してきた。
「行ってみましょう、ミシェル」
「え……?」
イアンの母親が車椅子をこぎ、ミシェルのもとに行く。
「さぁ、ほら。私も一緒に、闘技場に連れてって」
◆
闘技場には夜遅くだというのにもかかわらず、続々とペルーア王国の民たちが集まっていた。
その中に、ミシェルに付き添われたイアンの母親の姿もあった。
闘技場のフィールドには、スラウブを中央に、その左右にクララとイアンの姿が――。
「イアン……」
ひとまず息子の無事を確認できたイアンの母親が、ほっと胸をなでおろした。
「やったのだな……スラウブ、クララ」
ミシェルがフィールドに目をやり、つぶやく。スラウブの手には、砕けた大剣が握られていた。
「ブルート様……」
「ブルート様……」
「ブルート様……」
ペルーア王国の民たちも、状況を察する。ペルーア王国の民たちは〝事が済む〟まで外に出ぬよう、スラウブとクララの耳には入らない形で、あらかじめ<ルーク>たちによって伝達させられていたのであった。子供たちは眠りについていたが、大人たちは緊張のせいか、こんな時間でも眠りにつくことができなかったようだ。
闘技場の席から通路まで、余すことなくびっしりとペルーア王国の民たちが集まったところで、スラウブが口を開く。
「諸君、こんな夜遅くにもかかわらず集まりいただいたことに感謝する。我が名はスラウブ。ペルーア王国の王ブルートを打ち倒し、炎の獅子王ファルートの力を継ぐ者にして、新たなるペルーア王国の王なり!」
闘技場が騒然となった。
「ブルート様……そんな……」
「ブルート様……」
「ブルート様……ウソよ……」
イアンの〝救済〟時にスラウブの正体が知られてから、ここ最近ペルーア王国の中でもスラウブの影響力が増していたとはいえ、ブルートを支持し崇拝する者がペルーア王国の民たちの中ではほぼ全てであった。
「みんな安心してくれ。ブルートは無事だ。生きている。妹のラスクも、そして<ガーディアン>の長ジェイクも、完全に死んだわけではない。見ていてくれ」
言ってスラウブがクララの方を見てうなずく。すると、クララはネックレスの《想応石》に手をやり、目をつむった。
しばしの間を置いて、クララの前に現れた、紺碧のオーラに包まれた筋骨隆々の狼男――。
「ジェイク……?」
「ジェイクだ!」
「ジェイク! 生きてたのね!」
霊体のジェイクが、ペルーア王国の民たちに手を振った。闘技場が、ペルーア王国屈指の戦士であり、治安を守りし<ガーディアン>の長の復活に歓喜する。
「みんなはもう、暴力の世界に囚われる必要はない。その昔――ペルーア王国は温厚な人々が暮らす平穏な所だったという。争うことのない笑顔が絶えない人たちの王国だったとある者から聞いた」
スラウブの言葉に、闘技場が再び騒然とした。
ブルートのように混沌のペルーア王国しか知らず、その中で生きてきた者たちにとっては、スラウブの言葉は信じられないといった様子であった。
「人は互いに傷付けず、血を流さず、良き方向へ向かうために、考えることができる。話し合うことができる。変わることができる。団結することができる。ペルーア王国は、暴君の国などではない! 他国や他地域への侵略や略奪、他者への支配など、必要ない! ペルーア王国の民同士で傷付け、苦しめ合うことなど必要ないのだ!」
ペルーア王国の民たちが、スラウブの演説に聞き入る。
「取り戻そう! 我が父ロドリックが王として統べていた、誇り高きペルーア王国を! 我々は、決して弱者などではない! 昔も今も、そしてこれから先も、永遠にな! みんなのことは、必ずこの俺が守ってみせる! ペルーア王国の侵略など、いかなる時も決して許さない! この力で! 必ず、約束は守ってみせる!」
言ってスラウブが今度はうなずいて見せたのは、イアンであった。するとイアンが目をつむり、己の力を引き出すべく集中する。
やがて、イアンの体が紅蓮の炎に包まれていった。
「なんだ……?」
「あの痩せたニンジン野郎、何を……?」
「ウソでしょ……?」
ペルーア王国の民たちがイアンの様子に唖然とする中、すさまじい衝撃波が襲い掛かる。
突如闘技場のフィールドに現れた、紅蓮の炎によって身を包んだオオワシのような鳥――。
「あれは……?」
「炎の鳥……?」
「なんなの……? あれ……」
長年の間、一部の者以外その存在を隠され続けていた炎の守護神アーフィスが、ペルーア王国の民たちの前であらわになる。
ペルーア王国の民たちに向けた手品のような出来事は終わらない。
今度は、スラウブの体が紅蓮の炎に包まれていく。
またしてもすさまじい衝撃波が闘技場を襲い、炎の獅子王ファルートが現れた。
「おおお……!」
「炎の獅子王ファルート!」
「我らが守護神……!」
スラウブが炎の獅子王ファルートに変化したところで、クララがスラウブに手を広げると、スラウブを包む紅蓮の炎が、紺碧の炎へと変わっていく――。
「え……?」
「今度はなんだ……?」
「炎の色が……」
スラウブの背中から、紺碧の炎が燃え盛る天使のような翼が上下左右に四枚生える。それだけではなく、手にしていた砕かれた大剣から、紺碧の炎の刃が現れた。
「おいおい、なんだよあれ……」
「すげぇ……」
「あんな炎の獅子王ファルート……知らないわ」
新たなる炎の獅子王ファルートと化したスラウブが、大剣を掲げて声を上げる。
〝改めて名乗ろう! 我が名はスラウブ! 元ペルーア王国の王にして騎士団長ロドリックの血を継ぐ者なり! そして、新たなる炎の獅子王ファルートなり! この者はクララ! 我が妹にして元チェルビュイの女王ハイネの血を継ぐ者にして至高の魔法使いなり! この者はイアン! 我に炎の獅子王ファルートを授けし、温かき炎の守護神アーフィスの力を継ぐ者なり!〟
もはやペルーア王国の民たちは、何がなんだかわからないといった具合で絶句し続けていた。
スラウブはそんなペルーア王国の民たちに声を上げ続ける。
〝改めて誓おう! 皆の者は、必ず我らが守る! そして――いつか必ず、我はトルオス王国とケリをつける!〟
その声に一転して、闘技場に大歓声が沸き起こった。
「スラウブ王!」
「スラウブ王、あんたについていくぜ!」
「スラウブ王、万歳!」
この瞬間、スラウブは新たなるペルーア王国の王として、ペルーア王国の民たちの心を掴んだのであった。
「ジェイク……」
ミシェルは、霊体として再び姿を現した愛する者と共に、そして新たなるペルーア王国の王スラウブと共に再び、ペルーア王国を守る決意を固める。
イアンの母親が、優雅に羽ばたく我が息子をしばしの間見つめ続けた後、新たなる炎の獅子王ファルートに目をやり、つぶやく。
「お帰りなさい、ロドリック。ペルーア王国の誇り高き守護神、炎の獅子王ファルートよ――」




