表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【想い】の虚像 《__漫画化しました__》  作者: 影浦ねこぼ
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/35

第三十三話 ペルーア王国の混沌 ~ロドリックの血編~

 少年ブルートと狼の少年ジェイクは、新たに<ルーク>の隊長に就任したジョアンによって、特別枠として<ルーク>に入隊させられ、ジョアンによる個人指導の過酷な鍛錬を受けさせられていた。

 少年ブルートは幼くして自身が望む道への最短ルートを進めたことに喜びを感じる一方で、難なく<ルーク>に馴染んでいくジェイクに対して劣等感を抱き、目の前で見せられた母親の無残な死というトラウマを抱えていた。

 少年ブルートと少女ラスクは、狼の少年ジェイクの家に住まうこととなり、共に近所の老夫婦の世話を受けることとなっていた。


「今日も大変だったな……」


 夕暮れ時、<ルーク>たちの鍛錬場でもある闘技場からの帰路で、少年ブルートと共に歩く狼の少年ジェイクがつぶやく。


「何言ってんだよ、ジェイクなんてもう<ルーク>の一員といっても差し支えないほどじゃん。体つきもいいしさ」

「いや、まだまださ」


 謙遜する隣を歩く同い年の友人は、いつ見ても大人の<ルーク>たちに見劣りしないほどたくましい体つきで、少年ブルートがほれぼれするほどである。


「今日はおばさんたち、何作ってくれてるんだろうな」

「さぁね……」

「また、バルカンのトマト煮込みだったら最高だな」

「うん、あれは僕もラスクも好きだよ」


 狼の少年ジェイクと同じく、近所の老夫婦が振る舞ってくれる料理を口にすることとなった少年ブルートと少女ラスクの好物は、バルカンのほどよくやわらかい肉をトマトで煮込んだものであった。


「パパもママも死んだけど、おばさんたちがいてくれてよかった。優しいし、料理はなんでもおいしいし」

「確かにそうだけど、おばさんもおじさんももう歳だから、いつまで一緒にいられるかわからないぞ。それに、早く<ルーク>として一人前になって自立しないと、お前の母親も救われないぞ。俺たちは〝救済〟してもらった立場なんだし」

「そう……だね……」


 狼の少年ジェイクの言葉で、少年ブルートは改めて厳しい自分の立場を自覚する。


「ちょっと走ってくるから。先に食事してて」

「あ? ああ、わかった。気を付けろよ」


 少年ブルートは、同居する狼の少年ジェイクの家の近くに来たところで夕食前に最後、走って鍛えることを決意したのであった。


 砂岩の建物が連なる夜の路地は、灯りで黄金色に輝いている。夜の涼しい風が吹き抜ける中、少年ブルートは昼間のように汗を滴らせていた。

 ふと角の死角から、二人組の男の声が聞こえてきた。


「覚悟はできたか? ロドリックの血の儀式、行くよな?」

「もちろんだ」


 ロドリック――少年ブルートはその名を母親からよく聞かされていた。

 かつてペルーア王国の王で、ペルーア王国の守護神である炎の獅子王ファルートの力を身に宿しながら、トルオス王国との戦いで命を落とした力なき者であると。


「炎の獅子王ファルートの力を手に入れられるかもしれないしな」

「だよな」


 少年ブルートと二人組の男がすれ違う。

 その時少年ブルートは無意識のうちに、後ろの二人組の男を振り返り、気付かれないように後をつけていた。


「血を飲んで何か起きたらどうする?」

「その時はその時だ。どっちみちあんな優男風のジョアンじゃ、ペルーア王国は守れない。絶対的な力を持つ者がいる。それはすなわち――炎の獅子王ファルートの力を持つ者だ」

「俺たちは運がいい。ジョアンの側近の呼びかけに触れることができたんだからな」

「ああ。きっと、俺たちは選ばれたんだ。これは運命さ」

「そうだな。俺は必ず、炎の獅子王ファルートの力を手に入れてみせる」

「俺も!」


 少年ブルートは吸い寄せられるように、そんな会話をする二人組の男の後を気付かれないように追い続けた。

 やがてたどり着いたのは、ペルーア王国神殿であった。ここは、ペルーア王国の守護神である炎の獅子王ファルートが祀られた神殿である。 

 二人組の男がペルーア王国神殿の中へと入っていく。少年ブルートも、辺りの様子をうかがいながら、慎重にペルーア王国神殿の中へと足を踏み入れた。

 奥に堂々とした姿でそびえ立つ巨大な炎の獅子王ファルート――その像の下で、豪華絢爛な棺を取り囲むように、人々が集まっていた。

 二人組の男が集団の中へと入っていく。


 ――何をしているんだろう、あの人たち……?


 少年ブルートは身をかがませながら、神殿内部左の柱の一つに身を隠し、謎の集団の様子をうかがうことにした。  

 

「今宵、ここに集いし、絶対的なる力を持つペルーア王国の新たなる守護神となる覚悟を決めた者たちを歓迎する」


 中央の人物が口を開く。よく見るとその人物は、新たなる<ルーク>の隊長ジョアンの側近となった人物であった。そのすぐ横には、司祭と思われる人物が立っている。


「この棺に眠る、かつての王であり、その身に炎の獅子王ファルートの力を宿すロドリック――彼を失った我々ペルーア王国の民たちは、その危機にも屈することなく立ち向かい、最強の戦闘集団<ルーク>を結成し、世界を支配する体制を整えた。だが唯一欠けているもの、それは――絶対的なる力を持つ者である」


 集団は一般の男たちの他に、数人の女もいれば、数人の<ルーク>もいた。


「ここに眠るロドリックの力、すなわち今なおロドリックの身に流れ続ける炎の獅子王ファルートの血、これよりそれを摂取し、ペルーア王国の新たなる守護神を生み出す!」


 ジョアンの側近の声が、ペルーア王国神殿に響き渡る。


 ――ペルーア王国の新たなる守護神……。


 少年ブルートが、集団の隙間から豪華絢爛な棺にくぎ付けになっていると、数人の<ルーク>が重厚な棺の蓋を開けた。

 棺の中には、たくましい体つきの人物が――。


 ――あれが……ロドリック……?


 棺の中で眠るロドリックは、驚くほど安らかな表情を浮かべていた。

 しばらくの間、その場に集う皆が棺の中で眠るロドリックにくぎ付けになる。


「最初に……血の力を望む者よ、挙手せよ」


 震えるジョアンの側近の声が響く中、束の間を置き、一人の男が手を挙げた。

 集団をかき分け、男が棺の中で眠るロドリックに近づくと、ジョアンの側近が司祭から(さかずき)のようなものを渡される。

 ジョアンの側近がナイフを取り出し、棺の中で眠るロドリックの手首を切る――すると、死んでいるにもかかわらず、ロドリックの手首から血が流れた。それを、ジョアンの側近が司祭から手にした(さかずき)の中で受け止める。

 ロドリックの手首から流れる血は、なぜかほんのうちに収まった。

 男が、ロドリックの血が入った(さかずき)をジョアンの側近から受け取った。

 辺りを見回し、男が「飲むぞ」といった顔をした後で、ロドリックの血を口にする――。

 柱で身を隠す少年ブルートと、棺の中で眠るロドリックを囲む集団が、その様子を見守った。


「どうだ……?」


 ジョアンの側近が声をかけたその時、


「う……う……う……」


 男が自身の体を押さえ込む。


「あ、あああ! あああああ! あああああ!」


 突然、ペルーア王国神殿に絶叫が響き渡り、男の体が発火し始めた。

 棺の中で眠るロドリックを囲む集団がパニックになる。


 ――な、なんだよ……あれ……!


 紅蓮の炎が男の全身を包み込み、男はもだえ苦しみながら断末魔の叫びを上げ続ける。

 それは少年ブルートにとって、目の前で母親を惨殺された悪夢の再来と言っても過言ではないような光景であった。

 やがて、男が倒れ込み、炎が収まると、そこには黒焦げの人型のオブジェが横たわっていた。

 おぞましい臭いが漂う神聖なる空間に集った者たちが絶句し、固まる。


「そ……そいつは……選ばれなかったようだ。炎の獅子王、ファルートに……」


 ジョアンの側近の声は、明らかに動揺していた。


「つ……次……ペルーア王国の新たなる守護神の資格を望む者よ……挙手せよ!」


 男が落とした(さかずき)を拾い上げ、ジョアンの側近が声を上げる。

 すると集団が表情をこわばせる中、一人の女が震える手を真っすぐに伸ばした。


「わ……私が……ロドリック様の力を継ぐ、ペルーア王国を導く女神に……!」


 女が、強がるような声とともに棺の中で眠るロドリックのもとに歩み寄る。


「よ、よかろう」


 ジョアンの側近が再びナイフを取り出し、棺の中で眠るロドリックの手首を切り、(さかずき)をロドリックの血で満たす。

 女がジョアンの側近から(さかずき)を受け取り、その身にロドリックの血を流し込んだ。

 自身の様子をうかがうようにうつむきながら、女はその場で静止する。


「女神よ、目覚めたまえ」


 ペルーア王国の新たなる守護神の誕生を望むジョアンの側近の声、だがその通りにはならなかった。


「う……う……う……」


 女がその身に宿った暴れる子をなだめるかのように、自身の体を押さえ込む。


「あ、あああ! あああああ! あああああ!」


 焼け焦げた男と同様、紅蓮の炎が女の全身を包み込み、ペルーア王国神殿に絶叫が響き渡った。再び起きた、悪夢の光景。黒焦げの人型のオブジェが、一体追加される。そんな中でも棺の中で眠るロドリックは、安らかな表情を浮かべたままだ。 


「つ……次……ペルーア王国の新たなる守護神の資格を望む者よ……挙手せよ!」


 もはやペルーア王国の守護神の血は、人々を焼き尽くす呪いの血と化していた。それでも、そこに集まった者たちは恐怖に震えながらも、ロドリックの血を飲むことをやめなかった。少年ブルートも、なぜかその場に留まり続けていた。

 ペルーア王国の新たなる守護神の誕生どころか、次々と生み出されていくのは黒焦げの人型のオブジェだけであった。


「あ、あああ! あああああ! あああああ!」


「あ、あああ! あああああ! あああああ!」


 炎の獅子王ファルートの力を夢見て、少年ブルートを悪夢の神殿まで導いた二人組の男も、焼け死ぬ。

 気付けば、棺の中で眠るロドリックを囲む集団は、数えられるほどしか残っていなかった。


「つ……次……ペルーア王国の新たなる守護神の資格を望む者よ……挙手せよ!」


 残された集団の恐怖は絶頂に達し、命を懸ける覚悟は消え、残されたのは人体が焼け焦げた臭いのみで、ペルーア王国の守護神炎の獅子王ファルートが祀られた神殿が静まり返った。 

 と、その時――棺の中で眠るロドリックに近づく、一人の少年の姿が現れる。


「僕が――」


 少年ブルートだ。突然現れたあまりにも意外な人物に、棺の中で眠るロドリックを囲む集団が唖然とする。


「お、お前は……ブルート……?」


 少年ブルートが棺の中で眠るロドリックに目を落とし、じっと見続ける。


「力が……欲しいの」


 ジョアンの側近は、無表情でつぶやく不気味な少年ブルートに、なんだか恐怖心に似たものを抱いた。


「死んだ母さんの誇りになりたい……強靭な体が欲しい……誰にも負けない、圧倒的に打ち負かす、あらゆる者をひざまずかせる、力が欲しい……<ルーク>の隊長になって、頂点に立ちたい……ペルーア王国を導く、王になりたい……ペルーア王国の、新たなる守護神になりたい」


 少年ブルートが淡々とつぶやく。


「血を……ちょうだい」


 ジョアンの側近は不気味な少年ブルート暗示をかけられたかのようにロドリックの手首を切り、(さかずき)にロドリックの血を注いだ。そして(さかずき)を、少年ブルートに渡す。

 少年ブルートが、(さかずき)に満ちたロドリックの血を見つめた。


 ――死んだ母さんの誇りになりたい……強靭な体が欲しい……誰にも負けない、圧倒的に打ち負かす、あらゆる者をひざまずかせる、力が欲しい……<ルーク>の隊長になって、頂点に立ちたい……ペルーア王国を導く、王になりたい……ペルーア王国の、新たなる守護神になりたい……!


 目をつむり、心の中で再びつぶやく。


「お前……妹がいるんだろう?」


 ジョアンの側近が少年ブルートを気にかけた。

 だが、少年ブルートに迷いはなかった。惨劇を目の当たりにし続けたのにもかかわらず。


「大丈夫、ラスクは強いから。今はそばに、ジェイクがいるし」


 ジョアンの側近には、少年ブルートが正気を失っているようにさえ見えた。


「きっとこの血は――僕を選んでくれる」


 少年ブルートは、(さかずき)に満ちたロドリックの血を一気に飲み干した。


 ――生まれ変わりたい……! 弱い自分はもういやだ……! 炎の獅子王ファルートよ……僕に力を……!


 体の中を、熱い何かが駆け回る。徐々にそれが、強い熱を帯びていく。 


 ――ああ……やっぱりダメか……でも……もういいや……これで終われる……何もかも……それでいい……。


 少年ブルートは自身も、周りに転がる黒焦げの人型のオブジェに仲間入りするのだと覚悟した。

 だがほんの少しの間だけ、苦しみに耐えれば、もう楽になれるのだと思うと、なんだかそれでいい気もしていた。


 ――ラスク……こんな弱い兄でごめん……どうか……幸せになってくれ……。


 ところが、しばらく経っても自身の体が発火する様子がない。


 ――あれ……? どうして……?


 ペルーア王国神殿が沈黙に包まれる。


「まさか……」


 ジョアンの側近が、少年ブルートに歩み寄った。


「ブルート……お前……選ばれたのか……?」


 少年ブルートが左右の手のひらをじっと見つめる。


 今まで感じたことのない、力がみなぎってくるような感覚――。

 今まで感じたことのない、全身の細胞が活性化するような感覚――。

 今まで感じたことのない、あらゆる者をねじ伏せられるような感覚――。


 そして、今まで感じたことのない、自信――。


 間違いない。炎の獅子王ファルートの力が、自身の身に乗り移ったのだ。


「どうだ……? 体に変化を感じるか?」


 ジョアンの側近が少年ブルートの顔をのぞき込むようにして訊ねる。


「……うん。感じるよ。僕は強大な力を手に入れたんだ。こんな風にね!」


 次の瞬間、少年ブルートがジョアンの側近の腹部に拳を入れた――。


「ぐほっ……!」


 屈強な体のジョアンの側近が膝をつく。すかさず少年ブルートは、後ろからジョアンの側近の首を絞めた。


「お前……何を……!?」


 ジョアンの側近の言葉と、ぐきっという嫌な音が聞こえたのは、ほぼ同時のタイミングであった。


 ――これは……僕のものだ!


 突然の出来事に、呆気にとられる残り少ない集団に、少年ブルートが襲い掛かった。素早い動きで、少年とは思えないほどの力で、人体の急所に打撃を入れ、残り少ない集団を次々と殺害していく。


 ――誰にも渡さない……!


 気付けば、ペルーア王国神殿に残されたのは、司祭と少年ブルートだけになっていた。


「な……何をしているのだ……?」


 突如現れた、小さな悪魔に司祭が腰を抜かし、尻もちをつく。


「何って……生まれたんだよ。新たなる、ペルーア王国の守護神がね」


 少年ブルートが、左の口角を吊り上げた。命乞いをするかのように後ずさりする、聖職者の司祭を見下ろしながら。


「僕は――新たなる炎の獅子王ファルートだ。唯一無二の」


 言って少年ブルートは、ジョアンの側近のナイフと落とした(さかずき)を拾うと、棺の中で眠るロドリックのもとに再び行き、手首をジョアンの側近のナイフで切る。


「それを証明してやる」


 (さかずき)をロドリックの血で満たし、司祭のもとに歩み寄った。


「これを飲め」


 少年ブルートが司祭にロドリックの血で満ちた(さかずき)を突き付ける。


「選ばれたのは、僕だけなんだ。きっとそのはず。弱者だった僕に――炎の獅子王ファルートは、力を授けてくれたんだ。新たなる、ペルーア王国の守護神に選んでくれたんだ。母さんの無念を――晴らしてくれたんだ!」

「少年よ……炎の獅子王ファルートは――今の君のような、暴君などではないのだぞ」


 司祭が、炎の獅子王ファルートの力におぼれる少年ブルートをあわれむように言う。


「うるさい! 飲め!」


 少年ブルートは司祭の胸ぐらを掴むと、(さかずき)のロドリックの血を無理やり口に流し込んだ。


「ぐふっ……! げほっ……! げほっ……!」


 必死の抵抗もむなしく、司祭の体にロドリックの血が流れ込んでいく。


「炎の獅子王ファルートよ、選んだのだろう? 僕のみを。それを今、証明してくれ!」


 少年ブルートが背中越しにそびえ立つ巨大な炎の獅子王ファルート像に語りかけ、司祭の様子をじっと見つめる。

 司祭は、自身に入ったロドリックの血を吐き出すように、激しく息を吐き続けた。


「う……う……う……あ、あああ! あああああ! あああああ!」


 やがて他の者たちと同じように、司祭の体は発火し、あっという間に全身が紅蓮の炎によって包まれていく。


「やっぱり……!」


 もだえ苦しむ司祭を眺めながら、少年ブルートが声を上げる。


「やっぱり……!」


 司祭が、黒焦げの人型のオブジェと化していった。


「ほら! やっぱりそうだったんだ! やった! やったぞおおおおお!」


 少年ブルートの歓喜の雄たけびが、ペルーア王国神殿にこだまする。

 

「ありがとう! ありがとう! ありがとう!」

 

 絶大なる力を得て、死屍累々とする神聖なる悪夢の空間で残された少年ブルートは、これまでの苦難の道を思い起こしながら、巨大な炎の獅子王ファルート像に向かって両手を広げ、一人叫び続けるのであった――。


        ◆


 少年ブルートが、狼の少年ジェイクの家に戻る。

 

「兄さん!」

「お前、ずいぶん遅かったじゃないか。また何かあったのかと思って心配してたんだぞ!」


 すでに近所の老夫婦が提供してくれた夕食を口にしていた少女ラスクと狼の少年ジェイクが、帰りの遅かった少年ブルートに腹を立てるかのような口調で声をかける。


「ごめん、ごめん。つい、走りすぎちゃって」


 にこやかな表情で少年ブルートが食卓につく。


「バルカンのトマト煮込みだ! うれしい!」


 ずっと心配していたのが馬鹿らしくなるほどの声を出し、バルカンのトマト煮込みを口にし始める少年ブルートに、少女ラスクと狼の少年ジェイクがややあきれた顔を浮かべ、食卓に戻った。


「兄さん、お願いだからこれ以上心配をかけないで」

「悪い悪い。でも、もう大丈夫だから」


 反省する様子のない兄に、少女ラスクがため息をつく。


「それで、走り込みの成果はあったのか?」


 狼の少年ジェイクも眉間にしわを寄せ、上機嫌な顔で次々と食事を口に運ぶ少年ブルートを問い詰めるようにして訊ねた。


「うん。成果があったどころの話じゃないよ」

「あ? どういう意味だ?」


 少年ブルートが頬を膨らませながら、笑みを浮かべて言う。


「力を……手に入れたんだ!」




【続く……】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ