第十三話 安泰を目指して
「よし、今晩はこれで過ごせそうだな」
虫たちの心安らぐ合唱が響き、一面に広がるシダ植物の群生に点々とする木々、苔むした岩々が転がり小川流れる森の中で、スラウブとクララは夜の闇に包み込まれてしまう前に一夜を過ごす準備を整えた。
たき火用の薪が集まり、寝床も確保した。チェルビュイを出る前に食料や飲料は亡きフィオナの協力もあって五日分ほどは確保している。だが節約のために、野ウサギを狩って木の実やキノコを採った。
「ペルーア王国まで五日くらいは長いわね……」
クララがため息をつく。二人が次に向かう先は、父親の故郷であるペルーア王国だ。亡きフィオナの話によると、チェルビュイからペルーア王国まで、五日ほどはかかるとのことであった。馬などを借りられればよかったのだが、残念ながらそうはいかなかった。
「ちょっとした旅だと思って楽しめばいいじゃねぇか」
調理台になりそうな平たくて大きい岩の上で、狩った野ウサギを調理し始めたスラウブが前向きな口調で言う。
「家が欲しいわ。フィオナの家のような……」
そんなスラウブの姿を見ながら、クララがつぶやく。
「落ち着くまで、チェルビュイのことは忘れろ」
本心は違うが、スラウブはあくまで前を向いていた。安泰を得るまで、クララを守るため、そうするしかないからだ。
「……そうね、努力してみる」
クララは思い出した。もうスラウブばかりに背負わせない。自分もスラウブを守るために強くいなければならない。そのために魔法を覚えたんだ、と。
「火は私が起こすわ」
そう言ってクララは薪に火を点けた。
その炎で、スラウブはさばいたウサギ肉をほどよく焼く。そしてトルオス王国の自宅で荷袋に詰めてきた皿にこんがり焼いたウサギ肉を置くと、採ってきた木の実やキノコを添えた。最後に亡きフィオナに分けてもらった調味料で簡単に味付けし、ウサギ肉料理を完成させるのであった。
「ウサギ肉サイコー!」
クララが舌鼓を打つ。
「だな」
スラウブも満足げだ。
「毎日これなら、あと五日頑張れそうだわ」
「毎日ウサギが狩れればの話だけどな」
「頑張りましょう。ペルーア王国まで」
「ああ」
急に様子が変わったクララにスラウブが戸惑いながら、あっという間にウサギ肉料理を平らげる。
ふと、荷袋から【指輪】を取り出して眺めた。
「いつ見ても、きれいではあるよなコレ」
「ちょっと兄さん、うかつにそんなもの出さないで」
ウサギ肉を頬張りながら、クララが慌てた口調で言う。
「盗賊にでも見られたらどうするのよ。敵が増えるだけよ」
クララが辺りをぐるっと見回す。すっかり暗くなった森に、人気は全くなかった。
「わかったわかった。でも盗賊なんてもう怖くないだろ。なんせ無敵の天才魔法使い、クララ様がいらっしゃるんだから」
「真面目に言ってるの、兄さん」
しっかり者の妹クララが、時折おちゃらける兄スラウブに手厳しくする。
「へいへい、すみませんでした。少しだけ、寝かせてもらっていいか? さすがに疲れがどっと出てきたよ。すぐに起きるから、そしたら夜が明けるまで俺が見張りやるよ」
「いいわ、ゆっくり休んで。しっかり見張っとくから」
クララが食事を済ませたところで、スラウブは即席で作り上げた草と葉っぱのベッドで大の字になった。
おだやかな表情を浮かべ、その大きな体を波打たせる兄の姿を見届けたクララは立ち上がる。
「念のため……」
言ってクララは両腕を水平に伸ばし、両手を広げる。すると、スラウブとクララの周りを囲うように紺碧に発光した半透明な壁が現れた。
「これでしばらく大丈夫」
壁の結界の中にはスラウブとクララ以外には誰もいない。壁の結界は、そう簡単に壊れることはない。
「私もかなり……疲れたわ」
クララは眠ってしまわないように気を付けることにして、横になった。
とにかく、今自分たちが欲しいものは安泰である。父親の故郷で、落ち着ける家を得て、平和に安全に暮らしていきたい。そのためには、やはり金が必要になる。
クララにとって【指輪】の存在は忌まわしかった。だが、【指輪】のおかげで自身の病が治ったのは事実だし、自身の求める安泰を得られる可能性を秘めているのも事実だ。
一刻も早く手放したいが必要な【指輪】――大きさだけ見れば、足で踏みつぶせるようなちっぽけたものにクララは心をかき乱されているみたいで、なんだかもどかしい気持ちになるのであった。
【幕間 崩壊した王国】
「失礼いたします、プラウル様。ご報告がございます」
トルオス城謁見の間――トルオス王国軍兵士の一人が、玉座に座る独裁者プラウルの前で片膝をついた。
「ふむ、成功したのだな? チェルビュイへの侵略と、私の【指輪】を盗んだ男とその連れの女の捕獲が」
独裁者プラウルは自信ありげな笑みを浮かべ、亡き父が眠る墓の前で、ついに成し遂げた偉業の報告の言葉をどうするか、頭の中で思い描いていた。
「それが……その……」
だが兵士の口から出てきた震える言葉に、独裁者プラウルの表情が固まる。
「おい……待て……嘘だろ……」
強大な黒魔法を操るナタリア、黒魔法の力を得た専属のエリート騎士<セレッサ>の長ナバロ、ありったけの兵士を集めてその全員に魔法に耐性を持つ防具を用意していた。勝利は間違いないはずであった。
「間違いだと言え! 早く、正しい報告をしろ!」
独裁者プラウルが声を荒らげ、玉座から立ち上がる。
「そのことに関しまして、現地から、命からがら戻ってきたという者がおりまして……」
兵士は声を震わせ、頭を上げられないでいた。
「……連れてこい。言い訳を聞こうじゃないか」
そう言われたところで兵士はようやく頭を上げ、玉座の前から退く。
しばらくして、左右の兵士に掴まれた状態で連れられた一人の兵士が、玉座の前に放り出された。
「プラウル様……申し訳ございません……」
放り出された兵士は防具を身に着けておらず、脇腹辺りに赤く染まった布を巻いている。
「何があったのだ? 一切の偽りなく真のみ述べよ。話はそれからだ」
独裁者プラウルはどっしりと玉座に腰掛け、真っすぐな眼差しで放り出された兵士を見据えた。
左右の兵士に剣を首に向けられ、放り出された兵士が体を震わせながら重い口を開く。
「チェ……チェルビュイに……あまりにも強大な魔法使いがいたのです……ナタリア様など……比べものにならないような……それに……獅子の化物に変化できる剣士まで……」
「ほう……」
「決して……嘘などではございません……信じてください……ナバロ様もナタリア様も兵士たちも皆……その者どもにやられました……」
真っすぐな眼差しで独裁者プラウルを見上げ、放り出された兵士は言葉を絞り出した。
「……ああ。もちろん、信じるとも」
ゆっくりと、独裁者プラウルが立ち上がった。
「その者の首をはねよ」
そう言い残して、独裁者プラウルは玉座を離れる。
「えっ!? そんな、プラウルさ……」
放り出された兵士が〝ま〟を発することはなかった。
玉座の前に広がる血の海を気にする様子もなく、独裁者プラウルが歩みを進める。
「チェルビュイの強大な魔法使いに、獅子の化物に変化できる剣士――まさか……あの『バッソナ』に捨てたハイネの子たちが……」
だが小さくつぶやいたところで、独裁者プラウルは歩みを止めた。
「いや……そんなはずはない。そんなわけない……」
そう自分に言い聞かせ、独裁者プラウルは再び歩みを進めるのであった。
◆
トルオス城の広大な庭園の中、豪華絢爛な装飾によって彩られた父親の墓の前で、独裁者プラウルは一人たたずんでいた。
「父上……またしても、あなた様の望みを叶えるにいたることはできませんでした。それどころか、我が国の兵力を大きく損なう運びとなってしまいました。本当に……申し訳ございませぬ」
合わせる顔がない、今の独裁者プラウルほどこの言葉が当てはまる者はいないであろう。
「しかしながらこのプラウル、必ずしや再びこのトルオス王国を偉大なものにしてみせます。あなた様の望みも叶えて――どうか、どうか、どうか……今しばらくのお時間をちょうだいくださいませ」
しばしの間、父親の墓の前でひざまずいた独裁者プラウルが、ゆっくりと顔を上げる。
「一度、捨ててみることとするか……自尊心というものを――」
独裁者プラウルは父親の墓の次に、様々な色の美しいバラによって彩られた母親の墓を訪れていた。
◇◇◇
父親の故郷ペルーア王国を目指し、進み続けるスラウブとクララ。
ちょうどペルーア王国到着の目安となる五日目を迎えると、いつの間にか辺りの景色は豊かな森から、空気が乾燥していて緑が点々とする砂岩地帯へと移り変わっていた。
「確かに、少しずつ暑くなってきているわね」
「そうだな」
今日の朝の日差しは、肌に突き刺すようであった。亡きフィオナいわく、ペルーア王国の辺りは「ちょっと暑くて大変な気候」だと言うように、チェルビュイから南に進んでくるに従って、明らかに気温が上昇している。
「しんどくなったら、日陰で休もう」
先に進むスラウブが、後ろのクララを振り返って言った。
「大丈夫よ、これくらい」
「ホントに?」
「ええ」
これは自身に課せられた試練なのだ、クララは自分にそう言い聞かせた。亡きフィオナがペルーア王国は「男も女も勇敢で強い人たちが集まっているような国」だと言っていた。それならば、魔法の強さだけではなく、自分の肉体的な面や精神的な面も強くしなければならない。そうでなければ、強いスラウブとは共に暮らしていけないのだ。
自身のエネルギーを吸い取っていくかのように滴る汗と、亀裂を走らせて根元を折るかのような脚の痛みに耐えながら、クララはスラウブの背中を懸命に追い続けた。
◆
うねうねと曲がる坂道を上り、開けた場所に出る。すると――この先へ導くかのように、左右の砂岩でできた柱が、遠く彼方へと続いていた。それは明らかに、人の手によって作られたもので、太陽の光に照らされて黄金の輝きを放っている。
スラウブが連なる砂岩の柱の先に目を凝らす。気のせいであろうか、左右に小さな獅子の顔のようなものが見えた。
「ファルートの……像……?」
「え……?」
スラウブのつぶやきに、クララも同様に目を凝らす。だがクララにはその姿は見えなかった。
「本当なの……?」
「ああ。おそらく……あれは獅子の顔だ」
「ということは……」
「間違いない。この先は――ペルーア王国だ」
スラウブとクララは顔を見合わせた。
「行きましょう!」
「休まなくて大丈夫なのか?」
「ええ!」
自分の健在ぶりを示すように、クララが前に出る。
スラウブは少し驚いたような顔を見せ、先へ先へと進むクララにおとなしくついていった。
◆
「本当だわ。獅子の顔が見える!」
スラウブが獅子の顔が見えたと言った所から半分くらいの所まで来たであろうか。
クララにもはっきりと、連なる砂岩の柱の先に建つ、炎の獅子王ファルートの像が見えてきた。
「よく頑張ったな、クララ」
トルオス王国の自宅で寝込んでいた姿が嘘のような、先へ先へと進み続けるクララに、スラウブが声をかける。
「もう、兄さんの足手まといになりたくないから」
とは言うものの、もう脚が動かないといった様子は隠せないところまで来ていた。
「おぶろうか?」
からかうように言うスラウブに、クララが顔を紅潮させる。
「いいってば! 子供じゃあるまいし!」
「ははは、だよな。ま、焦ることはないし、少しだけ休もうぜ」
「……そうね、ちょっと休憩」
あと少しで着くのに、と悔しさをにじませたクララが、砂岩の柱の近くに腰掛けようとした、その時であった。
突然、前方の地面が盛り上がり、スラウブの一人分半ほどの山が現れた。
「なんだ!?」
スラウブが声を上げると、クララはあわててスラウブの近くまで下がった。
山を覆っていた砂が流れるように落ちていき、中から現れたのは人間と同じフォルム――砂岩でできた巨大な人形のようなものであった。
「これは……?」
クララがつぶやいたと同時に、巨大な砂岩の人形が動き出す。
「まさか……魔物か……?」
あわててスラウブがクララの体を引っ張り、自身の背後に置く。荷袋を放り投げ、小型のクロスボウを片手で構えると、即座に正体不明の砂岩の魔物に向けて矢を放った。
矢が当たった砂岩の魔物の部位から、紺碧の波紋が広がる。矢は跳ね返るように地面に落ちていった。
「これは……魔法でできた魔物……?」
「話は後だ。クララ、剣に炎の補助魔法付けられるか?」
スラウブは様子見で放ったクロスボウの矢で、この砂岩の魔物への対処法を決めた。
クロスボウの矢はおそらく効いていない。自身のメイン武器は大剣で、おそらくこの砂岩の魔物を斬ることはできない。だが、亡きフィオナがチェルビュイでの戦いの時に付けてくれた炎の補助魔法を、クララが大剣にやってくれれば――。
「任せて!」
「早く!」
クララはスラウブが差し出してきた大剣に右手を広げた。
大剣の刀身に紅蓮のオーラがまとわれ、火傷しそうな勢いの強い熱気を感じる。
スラウブが炎の大剣を構え、クララが適度に距離を取った。
砂岩の魔物が拳のような先端をした右腕をスラウブに突き出す。炎の大剣を両手持ちにしていたスラウブはその右腕を素早くはじいた。すると砂岩の魔物はひるみ、右腕の炎の大剣ではじかれた部位から紺碧の波紋が広がった。
「あれ?」
スラウブは違和感を感じた。
――思ったより硬くない……それどころか、剣で斬ったような感覚すら覚えたぞ。
大剣に炎の補助魔法を付けたせいであろうか、それとも見かけによらず砂岩の魔物がやわらかいのか。いずれにせよスラウブは好感触を得る。
「クララ、援護を!」
「任せて!」
スラウブは砂岩の魔物の懐に素早く飛び込み、左脚を斬りつけた。砂岩の魔物が左膝をつく。続けてスラウブは炎の大剣による怒涛の斬撃を砂岩の魔物に叩き込む。池に降り注ぐ雨粒の如く紺碧の波紋が広がり続ける。
砂岩の魔物はスラウブを払いのけようと左右の腕を振るうが、スラウブに炎の大剣ではじかれ、クララの磨きをかけた魔法による結晶の針ではじかれ、一方的にスラウブの炎の大剣による斬撃とクララの魔法を浴び続ける。砂岩の魔物の波紋はやがて、紺碧のものから赤黒いものになった。
――効いてる!
――効いてるわ!
スラウブとクララは同じ感触を得ていた。
あわてたように砂岩の魔物は急な動きで右脚をスラウブに振るう。だが、スラウブの炎の大剣にいとも簡単にはじかれ、砂岩の魔物は完全に仰向けに転倒した。
「クララ、とどめを!」
スラウブが砂岩の魔物の上に上がり、炎の大剣を突き刺す。
「雷よ、我らの安泰への道をさえぎる者に、裁きの鉄槌を下したまえ」
クララが詠唱すると、砂岩の魔物とスラウブの上で雷雲が浮かび上がった。
「やれ!」
言ってスラウブが飛び降りると、轟音とともに砂岩の魔物に紺碧の雷が落ちる。水たまりに岩を落としたかのように、赤黒いものが砂岩の魔物から激しくはじけた。
砂岩の魔物が頭部、胴体、両腕、両脚とバラバラに崩れ、完全に動かなくなった。
「よし!」
「完璧ね!」
スラウブとクララがハイタッチを交わす。
ここに来るまでの道中と同様、スラウブとクララは息の合った連携で魔物を退治した。
「それにしても、こいつは一体……?」
「さぁ……なんだろうね」
スラウブは周りを歩きながら、クララはじっと目を凝らし、砂岩の魔物の死体を観察する。
この砂岩の魔物を攻撃するたびに、紺碧の波紋が広がっていた。それは、明らかに魔法と思われるものであった。
ここに、何か魔法が関係しているのか――?
「ペルーア王国に行けば、何かわかるかも」
「そうだな」
急に不穏な気持ちになるスラウブとクララであったが、二人にはこのまま進み続ける以外に選択肢はなかった。
◆
やがて、ついに遠くから見た獅子の像の近くまでスラウブとクララはやってきた。
やはり、この砂岩でできた獅子の像は炎の獅子王ファルートのものであった。
「すごい……」
クララが間近で見る砂岩でできた炎の獅子王ファルートの像を見上げ、圧倒される。
それはチェルビュイの噴水の広場に設置されていたものと比べ、毛並みやしわ、表情や筋肉にいたるまで、まるで本物のように細かく彫刻されており、迫力が桁違いであった。
「ここで……間違いねぇな」
左右の炎の獅子王ファルート像に挟まれるように、巨大でオオワシのような鳥が羽を広げた姿が彫刻された荘厳な門がそびえ立っている。
「どうやって入るのかしら?」
「おーい! 誰かー!」
スラウブが叫び、門を叩いた、その時であった。
左右から何かが落下してきた音がしたかと思うと、
「動くな!」
「止まれ!」
男と女の叫び声がした。
左のファルート像の前には、獅子の横顔のような装飾が施された金銀の斧を持った筋骨隆々の狼男が、右のファルート像の前には、ドレッドヘア―で両手に曲剣を握った筋骨隆々のトカゲの顔をした女が、スラウブとクララを挟んだ。筋骨隆々の狼男は上半身裸で金銀のやや派手な防具を身につけ、剣闘士のような格好をしており、筋骨隆々のトカゲ女も革の防具を身につけ、剣闘士のような格好をしている。
――こいつら、いつの間に……!?
全く気配を感じなかった。どうやら筋骨隆々の狼男とトカゲ女は、左右のファルート像に隠れていたらしい。かなりの高さから落ちてきたようだが、なんともないようだ。
さらに門が突然開き出すと、中から筋骨隆々の狼男とトカゲ女よりは小柄だが、革の防具を身につけ、剣闘士のような格好をした筋肉質で弓を構えた男女が現れる。
スラウブとクララを囲む四人は、いかにも強靭そうな見た目で、その左上腕には盾の焼印のようなものが刻まれていた。
「貴様ら、ここに何をしに来た?」
斧を持った筋骨隆々の狼男がスラウブとクララに詰め寄る。
「私たち……」
「逃げてきたんだ。俺たち、兄妹で、トルオス王国から」
クララを制するようにスラウブが筋骨隆々の狼男に口を開いた。
斧を持った筋骨隆々の狼男は、スラウブよりやや背丈が高く、その分厚い体はスラウブより筋肉量が豊富だ。
「トルオス王国からだと?」
「悪いことをしに来たわけじゃない。頼む、中に入れてくれないか?」
スラウブの言葉に、筋骨隆々の狼男が他の仲間たちに目をやった。
「単眼望遠鏡で見させてもらったぞ。少なくとも、いとも簡単にゴーレムを倒してみせたお前たちは、ただの一般の民ではない」
「ゴーレム……?」
あの砂岩の魔物のことであろうか。
筋骨隆々の狼男がスラウブとクララの方に首を振ると、筋骨隆々のトカゲ女と弓を構えた筋肉質な男女が近づいてきた。
「荷物を全て渡しな! その武器も!」
「貴様らを、くまなく調べさせてもらう!」
「話はそれからだ!」




