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ep9 最強でお荷物でギルドリーダー

「ボス、俺の勝ちだな!!」

「ああ、完敗だよ」


 サズが自慢気な顔でリビアエリア占領の報告をする。俺はまだニジェールエリアを占領できていないため今回の勝負は俺の負けだな。


「勝者のお前にはこんなものをやろう」


 俺はある地図をサズに手渡す。


「ボス?」

「だいぶ前にダンジョン攻略したときにドロップした分身魔剣用の神器の眠っている場所の記されている地図だ。俺には使えないし、お前にやるよ」

「マジかよ!! さすがだぜ、ボス!! ……エジプト?」

「ああ、このまま東に侵攻すればすぐに行けるだろう。このまま励め」

「ああ、ボスはどうする? 引き続き南を攻めるのか?」

「いや、一回サン・ピエトロ大聖堂に戻る。新メンバーもいるし他の進行具合も気になる。特にナミのところな」

「え? ナミ様が一番信用できるんじゃ」

「あいつ個の力は最強だけど他はいろいろ欠けてるからな……とにかくいろいろ不安要素が多すぎる」

「え……? じゃ、じゃあなんでナミ様がギルドリーダーなんですか? ナギさんがした方がいいんじゃ……」

「俺も何度そう思ったかわかんねえよ。でもダメなんだなこれが」

「何故です?」

「秘密だ」


 そううっすら微笑んで口の前で人差し指を立てた俺にサズは不思議そうに首をかしげたが、手に持つ地図に視線を落とすとにやけた顔でその場を離れて行った。


 俺は飛行機でイタリアのサン・ピエトロ大聖堂に戻った。サン・ピエトロ大聖堂に既に戻っていたのはフランス侵攻をしていたカグとブルガリア上面のアマテラスの二人だった。アフリカの方はスサノオもサズもチュニジアエリアに一度戻っている、つまり戻っていないのはナミだけだ。俺はその現状に思わずため息をつきながらも、とりあえず今いる奴に話しかける。


「……いない奴もいるけど、とりあえず各々の戦況を聞こうか。まずはアマテラス」

「ウチが主導するブルガリアエリアの戦いはトルコエリアから侵攻してくるニソックカロルギルドとの戦争が激化しております。占領にはまだ時間がかかりそうです」

「ニソックカロル? えーと序列15位とかだったか?」

「ええ」

「そうか。増援がいるだろう。他の様子を聞いてから、誰を増援に送るか考えよう」

「助かります」

 

 15位か、そのレベルになるとレベルが落ちた三貴神と十神3人だと厳しいよな。


「次だ。カグ」

「フランスエリア、つまり対ソーラープラネット戦線は膠着しています。ですが思ったより抵抗が激しいです。それと、イタリアとフランスの国境が山なのも大きいですね。こちらは海沿いに攻めるしかありませんが敵もそこに戦力を集めてきますから」

「ここはしばらく膠着しそうだな。ならオオヤビコだけおいてワタツミとお前は戻ってこい」

「ハハッ」


 フランスエリア侵攻はひとまず延期ということにしてオオヤビコには国境の防衛を任せよう。


 アフリカ侵攻もアルジェリア側は一段落着いたし、あとの問題は本当にナミの所くらいだな。


「で、ナミは? 俺は何も聞いてないんだけど」

「私も何も……」

「ウチも何も聞いてないです」

「やっぱりか……」


 うちのギルドで一番問題を起こすのはギルドリーダーのナミだ。だからまあ、いつものことといえばいつものことなのだが、その後処理をさせられる俺としては本当に勘弁してもらいたい。


「チャットも見てないみたいだしな……仕方ない、ちょっと俺が行ってくる」


 2人は反対しなかった。俺の実力を最もよく知っているからだろう。


 ということで俺はすぐにオーストリアエリアとの国境に行ったが、そこにはナミたちの姿はなかった。それどころか敵の姿も見えない。オーストリアは競争率が高い地域で、俺たちとソーラープラネットで試合をしたように領地の支配権をめぐる試合が行われたはずだ。それに勝ったチームが弱いわけがない。それをこの短期間で制圧したのか……? それとも……


 そんな疑問が頭をよぎりつつも俺はオーストリアエリアに足を踏み入れた。そしてかなり移動して、オーストリアエリア第一都市・ウィーンに到着した。この間、出会った敵はゼロだ。


「あっ、ナギ様!!」


 ウィーンに入った途端、アマノサカホコメンバーらしき人が話しかけてきた。


「ナミは?」

「ナミ様ならミヒャエル宮殿にいらっしゃいます。ご案内いたしましょうか?」

「頼む」


 街の雰囲気的にもここはもうアマノサカホコの領地なんだろう。なら連絡くらい入れて欲しいのだが。

 町の様子を眺めながら歩いているといつのまにかミヒャエル宮殿が目の前にあった。ここもストーリー上ではダンジョンになっていた。なんかオーケストラの指揮者みたいなのがいて、それにあわせて大量の子分が攻撃仕掛けてくるんだ。

 そんなことを考えているうちに何人かのアマノサカホコメンバーが出てきて門を開ける。宮殿の中には豪華な装飾品が並んでいる。そして宮殿の最深部、その奥の豪華な椅子にはすっごい偉そうな態度でナミが座っていた。


「よく来ましたね、いざなふぎゃッ!?」


 ナミが台詞を言い終わる前に神速で近づいて頭をはたいた。


「ちょっと! 何すんのよ!!」

「こっちのセリフだ、何してんだお前。連絡も入れずに」

「あ、えーとそれは……」


 ナミが目を泳がせる。俺はナミが座っている周囲を見渡した。さっきまでの道と違いここには中世西洋っぽくない、ナミ好みの装飾がされている。もちろん素晴らしいことには変わらないが、明らかにここの空間だけ装飾が異彩を放っている。明らかにナミが自身のスキル・物質生成で作ったとしか思えない。


「まさかオーストリアを制圧してからこのマイルームを作るのに夢中で連絡等一切しなかったんじゃないだろうな」

「一切じゃないわよ!! 今もイワビコとイワヒメがハンガリーを攻めてるわ!!」

「はぁ!? 聞いてないぞ!!」


 仕事をしているとアピールをしているつもりだったナミがさらに怒鳴られた驚きで少し涙が出ている。だいたい自分は働いてないじゃねえか。

 

「ご、ごめん……」

「はぁーーー、もういいや。こうなったらお前も行って責任をもってハンガリー取ってこい。終わったらそれ以上の侵攻はせずにサン・ピエトロ大聖堂に戻ってくること。いいな!!」

「はい……」

「不満そうな顔しない!!」

「はい……」


 変わってねえよ……

 結局、ナミは5日ほどでハンガリーをしっかり占領してきた。



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