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ep2 治める地

 ラスボス討伐の翌日、討伐レイドの面々は帰路につく。そのはずだった。

「僕たちはここに残る」

「は?」

 勇者・フォルドとそのギルドが魔王城に残ると宣言した。

「は? お前、ここがどこかわかってんのか?」

「ああ、もちろんだ。僕たちは最初の拠点をここにする」

「ばっかじゃねえの!?!? ここ!! 世界最高峰の山!! エベレストの山頂!! こんなアホ寒い所を拠点て!!」

 そうなのだ。このゲームの運営はよりにもよってエベレストの山頂に魔王城を作りやがったのだ。その山道で何人か遭難したし、崖崩れでダメージを負ってラスボス戦に参加できなかった奴もいる。しかも道中でる魔物もアホ強い。

「もう決めたことなんだ」

「……?」

 皆が絶句する。つーかこいつそんなアホだったか? ただ高い所が好きとか?

 勇者パーティーの他のメンツを見る。

 強化魔法使い・ステラ、頷く。

 防御魔法使い・リアン、頷く。

 回復魔法使い・ダイア、頷く。

 毒麻痺薬使い・シド、頷く。

 勇者パーティーってまともな奴おらんの!?!?

「ってことで、みんなと一緒に戦えてよかったよ。次会う時は敵同士だけど、また会おう!!」

 さわやかな笑顔で送り出してくれる。

 みんなはもう下山し始めた。え? あれあのままなの?

「ざ、ザイン?」

「考えるな、ナギ。勇者パーティーなんて俺たちに理解できる代物じゃなかったてことだ」

 ということで勇者パーティーを除いた26名で魔王城を後にした。


 エベレスト下山後、俺たちはそれぞれどこを拠点にするか話し合った。もちろんここにいる者のほかにも強い奴はいるが、もし揉めたら戦って倒せばいいということで合意した。

 ここにいるギルドは全部で21組。各ギルドの精鋭中の精鋭が集まっている。2人以上いるのは俺が所属するアマノサカホコ、主に武将の格好をした人の多い武士道ギルド(ハラキリギルドっていう名前とだいぶ揉めたらしい)、アンドレアのいるニューフォルニア(ニューヨークとカリフォルニアの地名からとったらしい)。こう考えると勇者ギルドの5人は相当すごいことがわかる。

「どうしますか、ナミ様?」

 ギルドリーダーのナミに問う。

「ナギはどの辺がいいと思う?」

「そうですね、やはり地中海周辺、もしくはスペインなど。簡単に言えば南欧ですね」

「その心は?」

「それなぞかけのやつ!! 本当の歴史でもこの時代はその辺の国が強かったと思うからです」

「なるほどね。私もそれでいいと思うわ。では私たち、アマノサカホコは南欧、ギリシャ、イタリア、スペインこのどこかの地域を所望します」

「では、武士道ギルドは?」

「我らは無論、日本国を所望いたす」

「ショ、ショモウイタス」

 めっちゃ片言の奴おるやん。このゲームは自動翻訳機能搭載だからこの片言の黒人は下手な日本語で話しているということだ。

「では、ニューフォルニアは?」

「もちろん、北米全部!!」

「ふざけんなー!!」

「適当抜かしてんじゃねえぞ!!」

 いろんなところから罵声が飛ぶ。そりゃあ許されないよね。

 どうやらニューヨークとカリフォルニアどっちを取るかで揉めたらしい。それで間を取って全部って言ってみたらしい。結局ニューフォルニアはカリフォルニア統治で決まった。


 結局、俺たちの統治するのはイタリア、ギリシャになった。できればスペインも持っていきたかったけど、仕方ない。いずれ攻めればいいだろう。

 そして統治する場所が決まった時点で、魔王討伐レイドは解散となった。俺たちはこの後、各自の統治する場所へ向かうことになる。

「じゃあな、ザイン」

「ああ、またな。ナギ。ちなみに俺のギルド、ブリテンクロックはイギリスだから。比較的近いし仲良くしようぜ」

「ああ、お互い頑張ろうぜ」

「おうよ!」


 俺とナミ、カグのアマノサカホコの3人は飛行機でネパールからギリシャに移動する。

 このゲームの良い所の一つとして移動手段が充実しているところだ。本来1400年にはあるはずもない飛行機がある。ただしこの飛行機は操縦するのはコンピューターのため絶対に戦闘には利用できない。つまりこれに乗って爆弾を落としたりは出来ない。もちろんハイジャックも不可能なように設計されている。これはほかの移動手段にも言えることだけどね。


 こうしてギリシャに降り立ったギルド”アマノサカホコ”の3人。3人の目の前にはあの有名なパルテノン神殿がある。

「何度来てもここはすごいわね」

「だな。何というか……圧巻だ」

「ここのボスを倒したのももう4年前ですからね」

 そう、ここパルテノン神殿は結構前にダンジョンとして使われていた。確か頭に葉っぱの冠をかぶった、まさに”王”って感じのボスだった。

「じゃあここを拠点にします?」

 そう、今の俺たちの目的は観光ではない。土地と民を支配するための拠点探しだ。

「そうね。確かにここも悪くないかもね。ナギはどう思う?」

「ここもいいけど俺はイタリアの方がいいかな。あっちの方が栄えてるイメージあるし」

「カグは?」

「僕はここでいいかと思いますが、確かにまだイタリアは見ていませんしここに決めてしまうのは早計かもしれませんね」

「では、次はイタリアに行きましょう」


 俺たちはイタリアのサン・ピエトロ大聖堂に来ていた。

「ここも懐かしいな」

「そうですね。確かギリシャの次のボスでしたから」

「ここのボスはいかにもな”女神”って感じだったわね」

「あー、そうだそうだ!! あの見た目なのにめちゃめちゃ獄炎魔法使ってくるんだよな」

「そうそう!! あの時はボスが火炎無効持っててカグが全く役に立たなかったのよね!!」

「そんなこともありましたね……。でもあの時はナギさんも炎刀なのにただの剣士みたいでしたよ」

「そうだったわね!! あのボス戦はうちのナンバー2とナンバー3が揃ってほぼ使い物にならなくなるもんだからレイド会議で肩身が狭かったのを覚えてるわ」

 あんまり思い出したくない過去だ。当時、ギルド序列3位だった俺たちアマノサカホコがあのボスの時だけはほぼ役に立てなかったんだよな。ここは強引にでも話を変えるのが良いだろう。

「拠点ここでいいんじゃないか? ここを拠点にしてるプレーヤーも多いみたいだし、悪くないんじゃないか?」

「確かに、ここもよさそうですね。どうですか? ナミ様」

「私もここ気に入ったわ。ここでいいんじゃない?」

「じゃあここに他の”アマノサカホコ”メンバーを呼ぼう。そういえばテラスとツックー、スサノオたちとかの魔王にやられちゃった奴らは今どこにいるんだろ?」

「彼女たちもデス数0の精鋭だったのに……、さすがに魔王は強かったわね」

 魔王戦は各ギルドの上位中の上位の精鋭たちで挑んだ。その結果、その精鋭部隊の7割ほどの犠牲を出し、魔王討伐に成功した。

 現在、ギルド序列2位の俺たちアマノサカホコは最上位9人が参戦し生き残ったのはナンバー1のナミ、ナンバー2の俺・ナギ、ナンバー3のカグの3人だった。順当に強い奴が生き残った感じだね。

「ま、すぐ来るでしょう。とりあえずこのサン・ピエトロ大聖堂ダンジョンの中を拠点のために改修しましょうか」

「チョーっと待ったぁぁ!!!!」

 そうサン・ピエトロ大聖堂の中に入ろうとすると、何やら後ろから声をかけられる。

「「ん?」」

「ここは我ら!!」

「ギルド・ピッツァ・マルゲリータの縄張りだ!!」

「ケンカと言うなら!!」

「相手をしよう!!」

 早速、戦闘の予感。





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