【おまけ】ちびカラスの成長日記
私はクリスティーナ。
私の双子のクリストファーとは生まれたときからずっと一緒。
今日も二人で森の中を散策しているの。
お友達はいるんだけど……。
それよりもクリストファーと二人で森の中を歩いているほうが楽しいの。
多分それはクリストファーもおんなじなんだわ。
だって私たちは双子だもの。
「ティーナ。ここにもあったよ」
クリストファーの指さす先を見た。
最近よく来るようになった森の中腹部に動物の絵が描かれた古びた看板を見つける。
今日はウサギだ。
その前はリスだったりキツネだったり。
川が近くにある時は川の絵。
猟師小屋もこの絵のおかげで見つかることができた。
「なんなんだろうね。
でも僕たちみたいな子供が描いたような絵だよね」
手を顎に置き大人のような仕草で考えこむクリストファーに私は提案する。
「分かったわ! クリス! 姉さまと兄さまに聞きましょう!」
「まぁそうしてみようか」
私の閃きに納得したクリスと二人で屋敷に戻り、姉さまと兄さまを探した。
2人はお庭でお茶をしていたのでそこにクリスと突撃する。
「姉さま! 兄さま! 私たち聞きたいことがあるの!」
年の離れた二人は私たちの頭をそれぞれなでながら
「どうしたの?」
と聞いてくれる。
森の中にある看板の話をすると姉さまが少し悲しそうな顔をした。
兄さまも悲しそうな顔で微笑みながら教えてくれる。
「君たちには僕とファリーナとフリッツという兄さまと姉さまが3人いるだろう?
けれどファリーナとフリッツの間にもう一人……。
君たちにはアイラという姉さまがいるんだよ」
「あなたたちがまだ赤子の頃にマグネ公爵のところへお勉強をするために引き取られたの……」
私たちは初めて聞いた話に驚きが隠せなかった。
「おとなしい、きれいな子だよ。
銀色の髪で……。
君たちと同じように森が大好きでよく森の中で一人で遊んでいたね。
だからそれはアイラが作ったものだと思うよ」
私はその話を聞いて見知らぬアイラ姉さまが私たちに残したプレゼントだと勝手に思うことにした。
それから、今まで以上に頻繁に森に向かうようになったクリスと私。
すると看板の通りにでてくる動物たちと仲良くなり遊ぶようになった。
キツネなどの賢い動物は私たちの求めていることがわかるようだった。
私たちが木の実やベリーを探しているときは、たくさんなっている場所に連れて行ってくれる。
そうやって動物たちと遊ぶようになってすぐに私たちもマグネ公爵のもとで教育を受けることになった。
私たちはマグネ公爵の別邸のイースト邸で生活するようになった。
イースト邸は森の中に建っていて、その森でもたくさんの動物と仲良くなった。
ある日、本邸の訓練場に呼ばれて観覧席で隠れるように指示された。
「ねぇ。クリス。私たち何の訓練なのこれ」
「分からないよ。でもおとなしく言うこと聞いてよう。ティーナ」
私が反論しようとするとにわかに訓練場がざわつき始めた。
「来た! 相変わらずお綺麗だ……」
「今日はやけにカラスの数が多いと思えば、戦闘狂カラス姫の訓練の見学か……」
「毎回、漆黒のカラスも見に来てるらしいぜ」
聞こえてくる噂話に誘われて私とクリスはそっと顔を上げて訓練場の様子を見た。
そこには銀色のキラキラした髪をなびかせて、令嬢がお茶会に出るようなドレスにフリルのついた日傘を持ったお嬢様がやってきた。
「えっ……?」
思わず声が漏れた。
お嬢様が一瞬こちらを見たような気がする。
けれどその後、気にした様子もなく近くのカラスと話しはじめるお嬢様。
3人のカラスは現役の市井に紛れているカラスだ。
4人は和やかに話しているように見えたが次の瞬間、戦闘が始まった。
あっという間に3人とも地面に縫い付けられていた。
「うわぁ今日も瞬殺……」
「お前どうやったか分かるか?」
「いや……わかんなかった……」
するとどこからか声が聞こえる。
見えない誰かが説明を始めてくれた。
「日傘を武器と思わせるモーションで3人の視線を誘導し、空いた左手で袖に隠した暗器で三人に攻撃した」
「今のは漆黒の……?」
「俺初めて声聞いた……」
私たちの近くにいる見学しているカラスの声に私たちも驚きを隠せなかった。
クリスが突然私の手を握って言う。
私も思わず強く握り返す。
「あれが……僕たちの姉さま……」
その言葉に思わず唾液をごくりと飲み込んだ。
「ねぇクリス……」
「なぁティーナ……」
「「いつか姉さまの役に立てるように、頑張ろう!!」」
もし一目惚れがあるなら、私たちはあの時初めて見た姉さまの姿に一目惚れしたんだと思う。
それから姉さまに見つからないように何度も訓練を見に行った。
やっと、ひなガラスから一人前のカラスになった私たちは伝令カラスとなった。
初めての任務は姉さま付きのカラスとなり、二人で手を繋いで大喜びした。
今。私たちはずっと会えなかった姉さまのそばで、侍女兼専属伝令カラスとしての日々を送っている。
クリスも侍従兼専属伝令カラスといてそばにいる。
看板を見つけたときから気になって、一目惚れして……。
今まで一緒に居られなかった日々を埋めるように姉さまと過ごす毎日はとても幸せだ……。




