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43 アイラ最後の任務(2)


次の日、お母様と王宮に向かう馬車の中。

私は王宮舞踏会の時に王妃様から頂いたドレスを身に纏っていた。


「そのドレスにしたのね」

「大丈夫でしょうか?」

「もちろんよ。多分すごく喜ぶと思うわ」




その言葉通り、王妃様は会うや否やものすごく嬉しいそうに褒めてくれる。


「まぁ! そのドレスを着てくれたのね! 

とても似合うわ! 嬉しいわ!

絶対アイラにはこれが似合うとずっと思っていたから処分せずに置いていたのよ。

私のお古だから嫌かも知れないけれど、まだまだあなたに似合うドレスをとっておいているの!

それもいつか着てくれるかしら?」


「もちろんでございます。ありがとう存じます」


挨拶も早々に王妃様が嬉しそうに話してくれるので、私も嬉しくなってしまう。

そしてまたドレスをいただけるなんて。


「アイラ。そんな堅苦しい話し方はよして。

あなたはサリエラの娘になったのでしょう?

それなら私の親友の娘だもの。

それにあなたは私の息子の婚約者。

いずれ私の義娘になるのだもの」



王妃様の言葉に私はどうしていいか分からず、お母様の方を見る。

するとお母様は微笑んで頷いてくれるので私は王妃様に再度向かい合いお礼を伝えた。


「嬉しいです。お義母様。

ドレスも着れるのを楽しみにしております」




そう言うと王妃様は私をギュッと抱きしめてくれた。


「ごめんなさい。あなたが側妃から嫌がらせをされている事に気づかなくて。そして守れなかった。

許して欲しいとは言わないけれど、これからあなたの事を大事にするから……」


王妃様の言葉に胸がギュッする。

私は王妃様に腕を回してそっと抱きしめる。


「ありがとうございます。これからよろしくお願いします」




少ししんみりとなった空気をお母様が入れ替えるように手をパンっと叩き話し始める。

「さぁ。まずはお茶にしましょう。

そして私達は話す事がたくさんあるのだから!

時間は有限よ!!」


お母様の言葉に王妃様と顔を見合わせて笑い合い、私達は席についた。




「さぁ。それではジョエルとアイラの婚約がまさしくお互いの心が通いあって成ったんだから次は結婚式ね!」


「そうよ! アイラちゃんのドレス考えなきゃ」


「サイラスの結婚式の前にジョエルが式を上げなきゃ慌ただしくなるって昨日議会で話が出たそうよ」


王妃様とお母様の言葉に思わず目を丸くする。

サイラス様の結婚式は既に公式に発表されており、既に1年半後に迫っていた。


「多分決定はまだだと思うけれど、1年後が目安になるわね。

ジョエルとアイラの学園の卒業が3ヶ月後だから忙しくなるわ」


私の目は溢れ落ちてしまうのではないかと言うほど見開かれていく。

そんな私を見てお母様が楽しそうに私に言う。


「思っていたよりも早かった?

でもこれが王族との結婚なのよ。

それにジョエル様は我が家に臣籍降下するから、色々忙しくなるの」


「ごめんなさいね。アイラちゃん。

ジョエルも、もたもたとアイラちゃんに本当の事を中々言わないから予想よりも遅くなっちゃったわ」


私は王妃様の言葉に「……いえ」としか返せずにいた。


「まずは何よりもアイラのウェディングドレスね!」


「そうね! どうしましょう! 楽しみだわぁ」


「もちろん私がドレスを依頼しているデザイナーとお針子を使うけれどまずはアイラの好みが知りたいわ。

アイラは何色が好きなのかしら?」


王妃様とお母様の勢いにタジタジになりながらもなんとか答える。

「…………あの……黒が好きです」




私の言葉にお2人が黙り込んだのか静かになってしまう。

黒と言ったのはいいが、この国で結婚式では比較的明るいピンク色や黄色などの色が用いられる。

貴族だと相手の髪や目の色のどちらかの色に近い明るい色を選択する事が多い。



そこに黒という色を伝えてしまったのがいけなかったのかと少し怖くなって俯いていた顔をそっと上げて2人の表情を確認する。


すると王妃様とお母様は2人とも同じように口に手を当てて目を瞬かせていた。

私と視線が合うと王妃様が嬉しそうに話し始める。


「ジョエルだけの気持ちが強いと思っていたけれど……。アイラもちゃんとジョエルの事を好きなのね……」


「はい。ジョエル様の事を好きです」



感慨深げに言う王妃様に私は小さな声になりながらもハッキリと伝える。

私の返答に王妃様もお母様も嬉しそうに微笑みながらドレスについて話を再開しはじめた。


「アイラちゃんの銀の髪と水色の瞳に黒のドレスはとても映えるでしょうね。素敵だわ!」


「重くなりすぎないように、早急に軽い黒の生地を探すように手配しなきゃ! ねぇ、サリエラ? 私すごく素敵な事を思いついたの。

ジョエルの結婚式の正装は王家の騎士服のデザインでしょ?」」 


「そうね……。そうね! 良いと思うわ!」


2人で何やら通じ合ったようで手を取り合いはしゃいでいる。

私はそれを見ながら幸せを噛み締めていた。




王妃様とお母様がウェディングドレスの話で終始盛り上がっているところにジョエル様が顔を出す。


「母上……。あぁよかった。まだアイラがいた」

ジョエル様は立とうとする私を制してそのまま私の近くに寄る。


そして私の額にキスを落とす。


「「まぁ!!」」


王妃様とお母様が同時に感嘆の声を上げるので恥ずかしくなりながらも私はジョエル様に声をかける。


「ジョエル様どうされたんですか?」


「アイラ。王妃の前でもエルと呼んで良いんだよ?」

私の顔を覗き込みながら言うジョエル様に負けて、再度言い直す。


「エル。どうしたの?」


「アイラが来ていると聞いて急ぎ執務を終わらせて会いに来ただけだよ」


言い直した私を満足そうに笑顔で見ながら準備された椅子に座るジョエル様。

やけに距離が近い気がする。

「……あのっ……エル……近いです」


私の言葉にジョエル様は

「嫌かい?」と言いながら優しく頬を撫でる。


「あの……嫌では無いんですが……そのっ……。

王妃様もお母様もいらっしゃるので」


「あらぁ。私達の事は気にせずに。

私達はあなた達の結婚式について2人で盛り上がっておくから。ねぇ? サリエラ」


「そうよ。私達の事は気にしないで」


私の言葉に王妃様もお母様もニヤニヤと笑いながら返してくれる。

しかし恥ずかしいものは変わらない。




「ほらね。お2人もそう言っているんだから」

ジョエル様の言葉に私は頷く事しかできなかった。



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