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41 アイラ、王子と向き合う(2)


私はジョエル様の話を聞いて安堵すると同時に、また色々な疑問が湧き出てきた。


「あの……。実は先ほど公爵様からお話があって……」



なんと伝えればいいか分からずどうしても辿々しくなってしまう。

そんな私を安心させるようにジョエル様は優しく私の手を握り私が話すのを待ってくれていた。

 


「……公爵家の……養女にならないか……と……」


「あぁその件か。もちろん既に公爵とは話をつけている。

それこそアイラがカラスである事を確信した時に。

だから安心してくれ」

 

私はジョエル様が言うことの意味が分からず思わずコテンと首を傾げる。

その私を見てジョエル様の顔が真っ赤になり、腕で顔を隠すようにして顔を背けてしまった。


「その……。アイラ……。コホン」

「どうかされましたか?」


「いや……なんでもない。まずは話をしなければ……だな」

そう言って私に視線を戻し話を続けるジョエル様を私もしっかりと見る。

 


「アイラをカラスと確信したのは僕が初めてアイラをお茶会でエスコートした時だ。

あのお茶会でアイラは暗殺者らしき者に襲われただろう?

実は僕はそれを見ていたんだ」



私は驚愕のあまり目を瞬かせながらジョエル様を見る。

ジョエル様は私をみて微笑んで話を続ける。



「あの時、アイラが暗殺者を撃退してお茶会に戻ってきてごく普通に過ごしていたのでアイラに聞くことはしなかったんだ。


そもそも王子教育の中には国の歴史を学ぶ分野がある。

僕達がそれらを学ぶ方法は独特で、その中にカラスの存在を匂わせる部分があるんだ。

そしてカラスがマグネ公爵家の裏の顔だという事も。


それを読み取り、カラスの存在に行き着いた者だけが国王となる権利を得れられる。

もちろん兄上も私よりももちろん早くカラスの存在を知っていたと思う」



王子教育の内容はもちろん明かされていないので私は知る由もない。

その中にカラスの存在が匂わせてあることも。

そしてサイラス様もご存知だと言うことに私はこの先これ以上に驚くことがたくさんある日は無いのではないかとさえ思った。



「君が帰宅の途についた時、ただ僕はアイラが心配で帰宅する君の後をこっそり馬で追ったんだ。

すると君を乗せた馬車は伯爵家のタウンハウスではなく公爵邸に向かった。

僕はそこで確信したんだ」



私は思わず目を瞬かせる。

私はずっと公爵邸に住んでいることを世間には隠している。

世間では伯爵家の小さなタウンハウスに数人の使用人と住んでいる事になっている。


私が公爵邸に向かった事が分かれば当時のジョエル様は私がカラスだと考える事も理解できた。



「それでは公爵様とはその時に話されたのですか?

私達は当時12歳でしたよね?」

私の疑問にジョエル様が苦笑しながら答える。


「そうだ。公爵と話したのもその時だ。

だから先ほど言っただろう? 僕は一目惚れで8歳からずっと君が好きだったと」



ジョエル様の言葉に思わず頬が熱くなる。

先ほども言われたが再度言われると何故か恥ずかしさが募ってくる。


私が頬を染めるのをクスリと笑いながら、私の頬に手をやりそっと撫でながらジョエル様は話を続ける。



「僕が君を追って公爵邸に辿り着いた時、公爵が分かっていたかのように僕を待っていたんだ。

そして屋敷に通されて話を聞いた時に言われたんだ。


『アイラを将来的に養女にするつもりだ。

だからもしアイラと結婚したいならば、王族籍から抜け公爵家に婿入りしてもらうことになる』

とね。僕は一も二もなく頷いたよ」


「しかし!!」

言い募る私にジョエル様が私の頬を撫でていた手の人差し指を私の唇に押さえるようにする。

続きを言いたくても言えなくなってしまい、私は黙った。



「僕は君と添い遂げる事をを第一としているんだ。

それは今も変わらない。

そして元々、国王には兄上がなるべきだと思っていた。

確かに兄上は王族の色を纏っていない。


しかし、僕も父上も色の事は全く重要視していないんだ。

そんなことよりも国民を導く才のあるものが国王になるべきだと。

だから僕は兄上の治世を支える臣下でいたい。

僕が公爵家に婿入りする事に兄上も父上も異論はない」



私はジョエル様がきっぱりと言い切ったことで納得するしかなくなった。


ジョエル様がそう決めているならば……。

そして私もジョエル様と……。

私はジョエル様に強く頷いた。



「私は公爵家の養女になります」



私の言葉にジョエル様は嬉しそうに微笑んで頷いてくれる。

そして私は更に言葉を続けた。



「ジョエル様……。エル……。

私はあなたが好きです。

私と結婚して公爵家を支えてくれますか?」



言いながら恥ずかしくなってしまい思わず俯いてしまう。


「…………………………」


ジョエル様からの返事が無くそっと様子を窺うように顔を上げるとジョエル様は顔を真っ赤にしながら硬直していた。

それを見て思わず嬉しくなります微笑んでしまう。


そんな私を見てジョエル様が今度は私の唇を親指でなぞるように触る。

擽ったくて思わず身体をビクリとさせてしまった。


「アイラ……。君を愛してる。ずっと……」


そう言ってジョエル様の顔が近くなる。

私はそっと目を閉じると唇に柔らかい感触が伝わった。

ジョエル様とキスしている。

心もとろとろと柔らかくなったかのようだった。


そっと唇を離しジョエル様が感極まったかのように強く私を抱きしめた。


 

「アイラ!

今までも……そしてこれからも君を愛してる!」



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