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24 赤色カラスの残業と金色カラスの楽しい聴取


✳︎赤色カラスの残業(アーロン視点)✳︎



花祭りを後にした俺は帰宅しようと見送るつもりでジョエル様の馬車についていった。


すると先に乗り込んだジョエル様に思いっきり手を引かれ馬車に誘拐された。



「アーロン今日は私の部屋で夕食をとろう」


ものすごい笑顔で言うジョエル様に俺はうなだれながら

「はい……」と言うしかなかった。




ジョエル様の部屋に通されて、メイドに入れてもらった茶を一口飲んだ時、バーンッと大きな音をたてて扉が開いた。


…………第一王子サイラス様だった。


「あぁ」と右手を額にあてて上を向いてしまった。

もうこれは不敬ではない……。




「さぁジョエル今日の成果を聞かせてくれたまえ!

私はロレッタに花輪ではなく黄色の花で作らせた帽子をプレゼントしたんだよ。

もうロレッタは花の妖精のよう……。

いや!! あれは花の妖精だったのではないかと僕は思うんだ!!」


「サイラス様、今ジョエル様はお着替えに行かれているので、少々お待ちください」



冷静にお伝えして、メイドが置いて行ってくれたお茶のセットからお茶を入れ、サイラス様の座るだろう場所においた。



「なるほど。では少々待たせてもらおう。

ではアーロン。君はミレッタ嬢と進展はあったのかい?」


いきなりの流れ弾に思わずお茶を吹きそうになったのを寸前で耐えた俺を誰か褒めてほしい。



「まぁ……。私はジョエル様とは違うので……。

きちんと口説いてますよ」


「なるほど」


面白くなさそうにソファに座りお茶を飲むサイラス様。

そのあとすぐにジョエル様が戻ってこられ、なんとかそれ以上流れ弾をくらうことは防げた。



「兄上!!!! 僕はやりました!!」


そういって今日1日の流れを事細かく詳細に説明するジョエル様に、少し進展したことに俺も胸をなでおろす。



しかし俺たちと合流する直前にマリア嬢と遭遇した話を聞き、眉間に皺が寄る。

俺が発言しようとしたときサイラス様が先に話だした。



「そのマリア嬢と一緒だった令息はゴルダン伯爵令息マレック、ギード子爵令息ミランとガルーダ子爵令息マリオで合ってるかな?」


「兄上その通りです。予想通りとも言えますが……。

もう少しこのまま泳がせるつもりです」


すぐに表情を王子のそれに切り替えてジョエル様が言う。

それを聞いたサイラスは満足そうにうなずいた。



すぐに空気はもとに戻って各々の『婚約者かわいい討論会』に戻った。


俺もミレッタのこと話したい……じゃなくて帰りたい……。







**************


✳︎ 金色カラスの楽しい聴取(ミレッタ視点)✳︎



噴水広場に到着し私とアイラは一緒に馬車に乗り込んだ。

私は今日、夫人に夕食をおさそいいただいているのでアイラと公爵邸に向かっている。


アイラはよっぽど今日楽しかったのかニコニコと馬車の外を眺めていた。


「アイラ楽しかった?」


聞くと満面の笑みで「うん」と答えてくれる。


こういう時のアイラは普段、氷の姫や月の姫と表現されるクールな印象から大きく離れてかわいい女の子に見える。

表情が乏しいなんて嘘の様だ。

ジョエル様がぞっこんになるのも分かる気がする。




公爵邸に到着して、客室で夕食用の楽なドレスに着替えアイラの部屋にお邪魔する。

アイラに部屋に通されてソファに座り、マナー違反にならない程度に部屋を見渡す。



かわいらしい水色に統一された部屋でたくさんの本が本棚に埋まっていた。


「アイラ、あなたってものすごい読書家だったのねぇ」


思わず感心してしまう量の本だった。



「私じゃないの、ジョエル様がすごい読書家みたいで。

昔、月一のお茶会のたびに本の話をされるから、そのたびに夫人が話題に出た本を買ってくれて……。

読まないのも悪いし読んでいたの」


アイラの話を聞きながら本棚の前に立って本のタイトルを確認する。


「大陸のすべて」「領地経営と国家運営」「薬草一覧」「おいしいお茶の淹れ方」

などなど、なんとも幅の広い本の分類に驚く。


「アイラ、これ全部読んだの?」


聞くとなんともないようにコクンとアイラは頷いた。

それを見つつ心を落ち着かせるために再びソファに座りお茶を一口飲んだ。



「あっミレッタに渡したいものがあるの。

ミレッタとアーロンにお礼がしたくて今日買ったの」


そういってかわいい袋をアイラはカバンから取り出す。


渡されたものを受け取り開けると、赤い飾り紐に緑のガラス玉のついた華奢なブレスレットだった。

おもわず自分の顔が熱くなることが分かる。


「えっと……。ありがとう嬉しいけど少し恥ずかしいわね。

でもアイラからのプレゼントだし大事につけるわね」


言いながらブレスレットを左手の手首につけた。

手首をみて思わず微笑んでしまう。


「喜んでくれて私もうれしい」


そういうアイラの首元に同じようなガラス玉が揺れているのが目に入る。


「アイラそのネックレス……」


「ジョエル様にもらったの」


頬を染めながら恥ずかしそうに言うアイラはとてもかわいかった。





夫人と3人で夕食の席に着く。


食事中、今日のアイラとジョエル様の話を夫人と二人で最初から最後まで事細かく聞いた。

終始、あまりのかわいさに身もだえそうになった。


夫人も同じように「まぁ!」「あらぁ!」

と感嘆の声をあげていた。


今日の話を満足いくまでアイラから聞いて3人でお茶を飲んだ後、私は夫人に呼び出されて夫人の応接室にお邪魔した。


「ミレッタちゃん、お疲れ様。まぁ座って頂戴」


ソファにつき、お茶をいただいて夫人のお話を待った。


「今日のアイラちゃんの話だと、二人の婚約破棄をこちらからお話しすることは無さそうね。

でもやっぱりハイネス伯爵とマリア嬢は要注意ね。

あと今日の取り巻きはこちらのカラスの報告によると話にあった令息は……。

ゴルダン伯爵令息マレック、ギード子爵令息ミランとガルーダ子爵令息マリオの3人ね。

ミレッタちゃんも学園で念のため注意して頂戴。

もし変な動きがあればいつも通り報告を」


「承知いたしました」


頭にしっかりとメモをする。


「ところで、アイラちゃんの話はたくさん聞いたけどミレッタちゃんのお話を聞かせて頂戴。

アイラちゃんもかわいいネックレスしてたけど……。

あなたもアイラちゃんからかわいいプレゼントもらったのね」


何もかもお見通しのカラスの女王には隠せず今日のアーロンとの花祭りでの話をすべて話す事になった。

自分に与えられている客室に戻ったのは空の月が輝きだした頃だった。





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