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14 憤怒の放課後(マリア視点)2


ある日の令嬢が集まるお茶会で、第二王子の取り巻きの令嬢たちとの話題で最近の昼食の話になる。


今までは、私が誘ってあげて第二王子との昼食会に参加できた令嬢たちだ。



「それにしてもアイラ様は運が良かったですね。

なんでも義務でご一緒に昼食をとられているとか」


「第二王子も大変ですね。

マリア様達とご一緒したいでしょうに」


「我々もマリア様にお誘いいただいて第二王子にお名前も覚えていただけたのに」


口々に言う令嬢たちに私は内心満足しながら、しかし表情は悲しそうな表情を作って口を開く。


「仕方ないですわ。

婚約者との時間をとっていることも公にしなければ……。

いろいろと……」


含みを持たせて言う。


「そうですわね。

マリア様も寛大でジョエル様も助かられていると思いますわ」


思った通りの返答に更に満足しながら、私は本題にさりげなく入る。



「この間の夜会で、私……。

誰かにぶつかられて……。

こけてしまったのですわ……。

痛かったのですが、それよりも本当に恥ずかしかったんですよ」


もちろん嘘だが。


「まぁそれは大変ですわ。

誰がそんなことを……」


「顔などは分からなかったのですが、紺色っぽいドレスの令嬢でしたわ」


それだけ言うとアイラに不満を持っている令嬢たちはまんまと

「まぁ紺色といえば……」

と口にする。



この国では婚約者がいるものは婚約者の髪か瞳の色のドレスを纏うことがおおい。


もちろんアイラも毎回、紺色のドレスいつも着て参加している。


ただ、第二王子を未だに狙う令嬢は第二王子の目に入りたいがために紺色を纏うことはよくあることだ。


しかし、アイラに不満をもっている者たちは勝手にアイラと決めつけてくれる。



「私、本当にはずかしくて悔しくて……。

その方も同じ目に合ってしまわれればいいのに……。

と醜くも思ってしまいましたの……。

でもそんな考えはよくないと……思いなおしました」


悲しそうに、愁傷にそういえば令嬢たちは


「まぁ素晴らしいわ! マリア様。

マリア様がそんなことをする必要はありませんわ」


「そうよ。

マリア様が直接その方に仕返しすることなんてありませんわ」


思った通りに事が進んで、あとは学園でどうなるか楽しみにすればいいだけだ。


このお茶会は私の満足いくものになった。




それから数日後。

何人かの令嬢令息とともに食堂のカフェテリアに放課後向かうと、何人かの令嬢が集まって盛り上がっていた。


あの令嬢たちはこの間のお茶会で一緒になった者たちだった。

良い報告が聞けそうだ。

と全員でそのテーブルに近寄り、声をかけた。



「皆様、楽しそうに何を話してらっしゃるの?

ご一緒してもいいかしら?」


いつも通り可憐に見える様に問うと、いつもは感じないよそよそしい雰囲気が漂う。



そのテーブル座っている一人の令嬢が焦ったように口を開く。


「マリア様すみませんっ。

そろそろ我が家の馬車が到着するのでっ」


急いで礼をして立ち去る令嬢。

そこに居る令嬢たちも全員が続々と立ち去ってしまう。


手をギュっと握ってイラつきを抑え、なんとか笑顔で見送る。



「まぁみなさんお気をつけて」





すかさず一緒にいた令息が

「こちらに座りましょう」

と促してくれたので少し気分を持ち直し別のテーブルについた。




すると一人の令嬢が言いにくそうに

「実は……」

と言い出すので笑顔で続きを促す。




「実は変な噂を聞きまして……。

アイラ嬢がつまずいた令嬢を毎回抱きとめて

『大丈夫ですか?』

と姫君のように扱ってくれるそうです。

そのため助けられた令嬢たちはまるでアイラ嬢を憧れの殿方のように見ているそうです」



思わず

はっ!?

と声が出そうになったが寸前で表情を作りる。


なんとか

「まぁ」

とだけ言った。


すると他の令嬢や令息が口々に話し出す。



「なんとはしたない!」


「今までマリア様に優しくしていただいていたのに!」


「アイラ嬢もアイラ嬢ですわ!」



盛り上がる者たちの注意が引くように、悲しそうに表情を作る。



「皆さんそんな批判なさらないで。

私は彼女たちを友人だと今も思っております。

しかしそのようなことで傍から離れられるのも寂しいものですね。


アイラ様も私から友人を奪って楽しいのかしら……。

彼女たちが私を思ってやってくれたことでしょうけど、こんな結果になるなんて……。

お願いです。皆さんは私から離れないでくださいませ」



私は令息たちが座っているほうを、ちらりと見ながらハンカチで涙をぬぐうふりをする。


すると、私に想いを寄せているだろう令息たちが勝手に盛り上がり始める。



「マリア嬢から友人を奪った上に平然とした態度!!」


「許せない!」


「あぁ許せないな」


また今回も私の思った通りになってくれた。

今度こそ上手くいくはず。

内心ほくそえみながら帰宅の途についた。







マリアは自分の部屋でクッションを投げながら怒ってた。



「なんで!! なんでなのよっ!! 」


ソファに座って爪を噛みながら考える。

令嬢たちをうまく誘導して、いろいろなことをしたはずなのに!!


上からものを落としたが、下を見ると落としたはずのものが無傷でそこにあるだけ。

アイラはその少し先を平然と歩いていたらしい。



唯一、少し成功したと思えたのは……。

ジョエル様との昼食の前に水浸しにして、行けなくなったアイラの代わりに私がジョエル様と昼食をと考えたものだった。



これを提案してきた令息に言われ、私は生徒会室近くに隠れていた。

水をかける令息を今か今かと待っていた。


しかし、来たのは肩を少しだけ濡らしたアイラだった。

申し訳なさそうにこちらに来る令息に、なんとか微笑みを浮かべ、食堂に行った。


私自身もアイラに足をかけられて転ばされたと泣けばいいと考えた。

しかし何度も試みたがすべてアイラに抱きかかえられて阻止された。



「大丈夫ですか?お嬢様」


抱きかかえられ見つめらる。

確かに素敵だと思ってしまい、自然と頬が染まってしまう自分にもイライラする。






そして極めつけは、今日だった。


朝、ジョエル様がアイラを教室までエスコートしてきたのだ。



入学以来、仲睦まじい婚約者同士が朝、婚約者をエスコートして教室まで送るところをよく見ていた。


もちろん同じ学園に婚約者がいないものや、政略やそこまで仲良くない婚約者たちはエスコートをしない。


しかし、エスコートする方もされる方も一種のステータスのように憧れがあるのだ。



学園に入学してから一度もジョエル様がエスコートされることはなかったのに急に!!!


朝だけではなく昼食の時もそして、帰りも!!!


どういうこと!! 


思いっきりクッションを壁に投げつける。






もうこれはもう『あれ』をするしかない……。



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