12 アイラの戸惑い任務(2)
「よっ」
気軽にミレッタに挨拶をするアーロン。
ミレッタが
「なんでついてきちゃってるのよぉ」
と少し不満そうだった。
2人の間に入って、今日の昼食での話をミレッタに伝えると満足そうにうなずいた。
「なるほどぉ?
ジョエル様はアイラを守ろうとされてるのねぇ」
そういえば、守るとかなんだか言われた気がする。
別に大丈夫なんだけどなぁ。
小首をかしげながら考える。
「こらぁ。アイラぁ。
別に大丈夫なのはわかってる。
でもジョエル様は事情を知らないんだから、大人しく守られときなさい。
それにしても、アーロンという人選は素晴らしいわねぇ」
感心していうミレッタにアーロンが気軽に話す。
「驚いた。
本当に友人になっていたんだな。
アイラ嬢は口数が少ないし、表情もあまり変わらないからお前とどうやって過ごしてるのかと思った」
「ちょっと失礼よ~」
アーロンとミレッタの会話がポンポン流れていく。
「最近さぁ、ジョエル様の周りもややこしくてさ。
ここでできる話じゃないから、いつか三人で集まって話し合い出来ればいいんだけど……。
どうだ?」
確かに三人ともカラスだし、今回の任務は特に極秘とされていない。
それにみんな少しづつ関係しているから、情報共有しておくほうが今後にいい気がする。
「いいと思う。
アーロン、今後はアイラと呼んで?
話し方もミレッタと同じように」
そういうと二人とも渋い顔をしてこっちを向いてきた。
え?
なんで?
なれなれしかった?
いやでも二人ともカラスで今は学園で近しい距離なはず……。
どんどん自信がなくなり、アーロンを小首をかしげて見た。
「あぁなるほど。なるほど。
これか。うんうん。
いやもちろんよろしく頼んだ。アイラ。
但し、お互いジョエル様の前では今までのようにしよう。
さすがにこれは拗ねるし、色々長くなるわ」
前半は聞き取れたのだが後半がうまく聞き取れなかった。
でもまぁ、アーロンが納得してくれたならいいか。
「それじゃ、俺はジョエル様のもとに戻らないといけないからあまり長居できない。
すまん。
近々、三人で集まれるように手配しておく」
じゃっ。
と、手を挙げてアーロンは戻っていった。
「騒がしいわねぇ。
でも三人で集まれるなんて嬉しいわぁ。
ところで、アイラ今日は違和感をかんじることはあった?」
少し考えてみる。
「そういえば今日は何も落ちてこなかった。
私の近くで転ぶ人もいなくなったし、水をかぶることもなかったよ」
苦笑いのミレッタが続ける。
「それならよかったわ。
今のアーロンの話である程度、把握したけど……。
ジョエル様は帰りもエスコートしてくださるの?」
「うん。
昼間に今日はジョエル様が授業後、教室まで来てくださるって言ってた。
ジョエル様が来れない日は、アーロンが来てくれるって」
「私も休憩時間には、だいたいアイラのところに行ってるし。
まぁ問題は起こしようがないけど……。
念のためあまり一人にならないでね。
あとなんでも一人でどうにかしようとしないでね。
アイラほど運動神経とかはよくないけど、私だってアイラの力になれるんだから」
そういわれて、胸の中がほんわりと温かくなった。
「ありがとっ」
私は笑顔でお礼を言った。
ミレッタに言われた通り、できるだけ人目につく場所にいるようにして午後を過ごした。
今日の最後の授業が終わったので帰宅の準備をする。
教室の外に出ると、すでにジョエル様が待っていた。
「すみません。お待たせしました」
「いやさほど待っていないよ。さぁ行こうか」
ジョエル様の隣に並んで門へ向かって2人で歩く。
ジョエルは第一王子サイラスと変わらない王子として申し分無いたたずまい。
身長も高い。
ある程度、剣の鍛錬などもしているので適度に筋肉もついている。
真っ黒な髪は前髪を後ろに流してすっきりとみせており、紺碧の瞳と相まって夜の王子のようである。
隣を歩くアイラも、すらっとした体形で身長は平均より少し高めであるが手足が長い。
歩く姿は淑女の鑑のである。
銀色のストレートヘアと、色白の肌に大きいけれどスッとした水色の瞳で、氷の姫や月の姫と呼ばれている。
はたから見れば、夜の王子と月の姫としてとてもお似合いなので、政治や派閥に関係ない生徒たちは見とれるばかりである。
しかし、もちろんそう思わない輩もたくさんいて、教室の窓から憤怒の表情で二人を見下ろすものがいた。