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10 赤色カラスの過剰労働(アーロン視点)


最近、俺働きすぎじゃね? 


今までが暇すぎたといえば、そうなんだが…。



最近はもっぱら『アイラ可愛い講演会』をジョエル様から拝聴するのが仕事である。

もうアイラが手作りランチをジョエル様の分も準備してきた日には……。


「もう今日はアイラ嬢の手作り料理の味を忘れないために何も食べない!!」

と宣言するジョエル様をなだめるのに必死になった。


結果、次の日からも手作り料理が食べれることが分かり、落ち着いたが……。



さぁ今日もジョエル様に呼び出されて私室に向かっている。



最近俺ばかり呼び出されるせいで、他の取り巻きから良い風に思われていないのは明らかだった。

しかし、それを俺は特に気にすることもない。


だってあいつら後ろ暗いところがあるから、できればジョエル様から離したかったので丁度よかった。


ジョエル様も腐っても王子だからその辺はわきまえていた。

しかし、いかんせんアイラに関することが最近多すぎて、無意識に他と距離を置き、俺を重宝している感じはある。



まぁその判断をしたのはジョエル様だし、まぁいいか。

考えて改めて、ジョエル様の私室に入室許可を得て、部屋に入る。




部屋に入るとソファに座ったジョエル様が制服の上着を握りしめて赤くなったり青くなったりしていた。


「ジョエル様……?」


声をかけるとジョエル様を勢いよく話だした。



「聞いてくれ!! アーロン!!

僕はもうコロンを変えないぞ!

アイラ嬢が……僕の……僕の香りを好ましいと!!!」



上着を掲げて立ち上がるジョエル様をなだめて座らせる。



「今日アイラ嬢が水をかけられたそうなんだ。

昼食を死守したために上着と首筋から肩にかけて濡らしたそうなんだ。

そっ……それで……。

アイラ嬢のブラウスが……す……透けていた……。

いやっ! 僕は断じて見てないぞ!

いやっ少しは見たが……。

すぐに上着を貸したし!!」



「いやジョエル様そこは大丈夫なのですが。

アイラ嬢が水をかけられた事を詳しくお願いします」



「いや僕も詳しくは聞かなかったんだが、生徒会室にむかう途中で水をぶっかけられたらしい」



なるほど。

これは帰ったらミレッタと話すか。

と考える。


ジョエル様はしょんぼりとした様子で話し出す。


「僕はアイラ嬢に何ができるだろうか。

他にも何かされていたりするのだろうか」


そう真剣に悩むジョエル様には悪いが、そうそうアイラがどうなることもない。

しかし真剣にアイラのことを心配するジョエル様をとても好ましく思う。



「ジョエル様……。

とりあえず今回の件はアイラ嬢は気にした様子もないですし、できるだけ話を聞いてあげてください」


俺の言葉に力なく

「わかった」

とジョエル様はうなずいた。




帰宅して公爵家別邸の自室で着替える。


アイラのように本邸で過ごすものはごくわずか。

アイラはジョエル様の婚約者のため本邸で過ごしているが、俺たちのようなカラスは、それぞれ別邸に振り分けられ生活している。



そのなかでも幼馴染のミレッタとは所属時期もほぼ変わらない。

貴族出身のミレッタだがその辺の偏見は無いらしく、今でもいい関係である。



私服に着替えミレッタの部屋をノックする。


「は~いどうぞぉ」


気の抜けた返事が聞こえた。

扉を開けるとどうやら報告書を書いていたのか、書き物机に座っていた。


「アーロンどうしたの? ジョエル様が何か?」


察しのいいミレッタに感謝しつつ本題に入る。


「あー。今日アイラが水をかけられたのは知っているか?」


「あら水? それは初めて聞いたわ」


特に驚くこともなく平然と答えるミレッタを不思議に思う。



「心配してないわけじゃないのよ。

ただあなたにも情報共有している以上にアイラの周りに同じようなことが起こりすぎてて……。

そしてアイラが無意識回避しててアイラが自覚してないことがおおすぎるのよねぇ」



なるほど。俺は自分の眉間に少し皺が寄るのがわかった。 



「そうよねぇ。

その心配はわかるわぁ。

こんなに何しても反応がなければ相手もむきになる可能性があるものねぇ」



そうだな。納得しながらも不安はぬぐえない。



「まぁ起こらないようにするのも大事だけど……。

今回ばかりは相手の尻尾があるようでないから難しいわね。

アイラを信じるしかない部分もあると思う」


「まぁそうだな。

アイラは戦闘狂カラス姫で宝の持ち腐れのカラスだもんな」


「そうよ。

カラス姫としてカラス内では負けなしの戦闘技術なんだから。本人無自覚だけど」


そういって二人で笑いあった。



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