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1 アイラの王宮での情報収集任務


くるくるとカラフルなドレス達が舞う王宮の舞踏会。

今日もアイラは第二王子と華麗に舞う。



『立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花』

を見事に体現したアイラは、共に踊る第二王子の婚約者として今日も静かに装うのだった。



見た目はクールビューティーと呼ばれるに値した銀色のストレートヘアで目は透き通った水色。

まるで氷の姫か月の姫のような容姿。

滅多に変化することのない微笑を浮かべ第二王子の相手をそつなくこなしていた。



「今年から最終学年だが、私は生徒会長の任もあり少し忙しくなりそうだ」


踊りながら言う王子に

「そうですか」

と静かに納得する風のアイラ。


心の声は

へぇそうなんだ。でももともと、ほとんど会うこともないのに、なんで報告してきたんだろ。まぁいっか。

とかなり淡泊めだった。



王子とのダンスが終了し、あらかたのご挨拶を終わらせる。

やっとのことで解放された私はいつものごとく公職家での社交教育で培った、ステルス能力をフルに使用してそっと会場から出た。




会場を出て、特に行く場所は決めていない。

が、こういう日は絶好の機会であることを知ってる。

噂を含めた情報収集の機会である。



会場では周りの目もあるため

「おほほ。うふふ。あはは」

と大した話はされない。



ただ会場から一歩外に出ると会場の余韻もあって、昂ぶった気持ちのまま普段話さない会話をする輩たちがいるのだ。



今日もそんな人たちを探し、ステルス能力をフル稼働してアイラは王宮の廊下を音もなく移動していた。


すると廊下の奥まった場所。

ほんの少しだけ会場から離れた暗がりで、数人の男女が会話している姿を目視で確認した。



すっと彼らの視界に入らない場所を確保する。

耳を彼らの会話に傾ける。


「……であって……だよ」


最初のほうがうまく聞き取れず軽く歯噛みしていると、どこぞの令嬢が懇切丁寧に復唱してくれた。



「第二王子は実は第一王子の婚約者のロレッタ様に懸想されているということですか?」



その発言を聞き、思わず口角が上がりそうになるのを奥歯を噛んで自制した。



「ああそうだ。

それに加えて王太子の座も見据えておられるらしい。

確かに王族の色を纏っておられるのは第二王子だからな」


「ではアイラ様は今だけの見せかけの婚約者ということですか?」


「まぁそうだろう。

貧乏伯爵家の次女では王子妃になったとしても、縁も何もないからな」



知っている。わかっている。


私は貧乏伯爵家の次女であり王子妃にふさわしくないということを一番わかっているのは私自身だ。


わざわざ他人に言われるまでもない。

と心の中で反論する。


第二王子ジョエルが第一王子の婚約者であるロレッタ様に懸想しているという点をじっくりと思考してみる。


………うん。ない。


しっかりと自己完結したところで再度耳を澄ましてみる。


「しかしロレッタ様に懸想しているというのはいささか……。実は私ちょうど1週間前、第二王子が王宮に来ているマリア伯爵令嬢と散策されている様子を目にしまして……。

私だけではなく複数人が別の日にも目にしたという話が……」



新しい登場人物の話に、脳内の貴族名鑑と学園の生徒名簿を急いでめくる。



なるほど。

マリア伯爵令嬢が第二王子の懸想相手ならばありえる。


最近、急に名を揚げだし、なおかつ伯爵本人が第二王子派を豪語しているその娘である。

柔らかなブロンドに柔らかな紫色の目を持つ小柄なマリアを思い浮かべる。


伯爵の情報はある程度知っているが、娘マリアの情報が不足していることに歯噛みしつつ、情報を整理する。




現在、王太子の有力候補者は第一王子であるサイラス。

婚約者はこの国の最も有力な貴族として知られるゴダール公爵家の末娘である。


ゴダール公爵家の長男は跡継ぎとしてもかなり優秀で次代の宰相としても有力視されている。

そして、次女は隣国の王弟に見初められ嫁いだ。

正に有力な後ろ盾となっている。


ただ第一王子自身が金髪碧眼で、この国の王族の色ではない。さらに母である王妃は侯爵家出身であるため、側妃よりも格が劣るということで、いらぬ輩が第二王子派として対立している。



一方、私の婚約者である第二王子のジョエルは王家の色といわれる黒髪に紺碧の瞳で隣国の王女を母に持つ。

側妃とされながらも地位は盤石であるのに、なぜか婚約者が名もない貧乏伯爵家の私である。


そこに婚約者が入れ替わり、同じ伯爵家でも現在輸入事業で盛り上がっているハイナス伯爵家の娘になれば第二王子派はさらに勢いづくことができる。



「私の友人にマリア様と親しくされている方がいるのですが…… 。

マリア様は第一王子派の方々の嫌がらせなどが恐ろしくジョエル様のそばに立てないとおっしゃって……。


それをジョエル様が容認なさり、未だサリム伯爵令嬢のアイラ様と婚約破棄なされていないのだとか」




この名も知らない奥様の発言に思わず「よしっ」と頷きながら



私は一時の仮の婚約者で囮婚約者!!!!!!



そっと顔を出し噂をしている面々の顔を確認し、後程しっかりと全員の素性を調べる予定にして、その場をそっと後にした。



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