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浅野姉妹は今日もつれない  作者: 明太子ラブ
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第一話

「ちょっと! ここが汚れてますよ!」

「早く持ってきなさいよぉ」

「ねー! はーやーくー!」

 あぁ、俺はなぜこんな事に……。そう思った頃にはすでにもう遅かったのだ。

______________________________________________

「えっと〜、ここを曲がって……」

 俺、氷室夕(ひむろゆう)は新たな職場までの道のりが描かれた地図を持ち、町中を歩いていた。


 小さい頃、親が事故で亡くなり数年。大学生となり、就活の真っ最中。そんな中、たまたま見つけた仕事に惹かれ、応募したところ、見事採用。4月から働くことになった。その内容は……


「しっかし、日本にも執事っているんだな〜」


 そう!執事の仕事である! 俺が応募した少し前に、使用人が数人仕事を辞め、人手不足だったそう。そのこともあり、すんなり採用してもらったらしい。

 理由が何か分からないが……そこは置いといて。

 小さい頃に親を亡くした俺は、家事などが大得意である。家庭科の成績も絶対5だったし、何とかなるだろう。


「……お! ここだな」

 そんなこんなしているうちに、目的地に着いた。

 目の前には漫画やアニメで見るような豪邸がドーンと構えている。この辺はセレブの方々が多く住むと聞くが、周りを見ても特に目立っているように感じる。

 俺は指示通り、門にある豪華なインターホンを押して、あちらの反応を待った。


 少し待ったあと、インターホンから男の声が聞こえた。


「どちら様でしょうか?」

「あ、えと、新しく配属する氷室という者なのですが……」

「あぁ、氷室さんでしたか。失礼いたしました。今、門をお開けいたします」


 男がそう言うと、すぐにギギィーと重く厚みのある音が鳴り門が開く。


「どうぞ、お入りください」


 そう言われ、俺はドアまで何メートルもある道を急いで渡っていった。


「ようこそお越しくださいました。私はここの執事長を務める田所京(たどころけい)と申します。以後お見知りおきを」

「あ、はい。俺は氷室夕です。以後、お見知りおきを……」


 中に入ると、田所という男が出迎えてくれた。慣れない振る舞いをされ、俺は少し戸惑ってしまった。やっぱり、執事ってこう、何というか……落ち着いていて頼りがいがあるというか……。

 俺もこんな感じにならんといけないのかな。イメージ湧かないけど。


 自己紹介をし終わったあと、俺は田所さんから執事の仕事について改めて教えてもらった。俺は家事はもちろん、車の運転や身の回りのお世話など、やることは様々。前々から聞いてはいたが、改めて聞くとすごい量だ。

 後は、ここで働いている人達のこと。執事が俺を含め3人、メイドが2人ということらしい。あと一人の執事と、メイドさんにも挨拶をしとかないといけないな。

 それから、設備のこと、注意することなど隅から隅まで丁寧に教えてもらった。一応メモは取ったが、抜けていることもあるだろう。少しずつ覚えていかないといけないな……。


「さっそくですが、氷室さんには部屋に行って衣装に着替えていただきますね」

「え? 俺専用の部屋があるんですか!?」

「えぇ、もちろん。ここで働く5人全員分の部屋をご用意しております」


 ほぉ〜、それは初耳だったな。とはいえ、他人と相部屋はちょっと気まずいし、ちょうどいいかもしれない。


「私がご案内いたします」

 そう言うと、彼は俺の前を歩き始めた。


 しかし、仕事ができるんだろうな、この人は。

 サラッサラの黒髪で顔も整っていてスタイルも良い。おまけにイケボときた。身のこなしも凄い。ストレスは溜まらないのだろうか……あ、そうだ。


「あのぉ、田所さん」

「何でしょうか?」

「俺が応募した時、何人か辞めたって仰っていましたよね? 理由って何かあるんですか?」


 俺が聞いた瞬間、彼はピタッと動きを止めた。

 何気に気になっていたこの疑問。彼は執事長と言っていたし、理由は知っているはずだ。

 しかし、彼は答えようとしない。

 ひょっとして、言えない……てか、訳アリだったらそんなの堂々と言うわけない、よな。

 俺、「馬鹿だなこいつ」って見下されたかも……!? と、とりあえずここは何事もなかったかのように通り過ごすのが策だろう。


「な、なぁんて! 別にそこまで疑ってません」

「氷室さん!」

「はい!?」


 突然田所さんは俺の方に体を向けてきた。その顔は先程とは違い、少し強張っている。


「氷室さん……あなたには真実をお教えしなければならないのかもしれない……」

「はぁ、って急にどうしたんですか?」

「くっ、すみません……! やはり察していましたよね? 私があなたに隠し事をしていることを」

「あ、え、はぁ……」


 嘘じゃないと言ったら嘘になる。しかし、そこまで険悪な感じになるだろうか?

 この話題になった瞬間、人が変わったように彼は独り言をブツブツつぶやき始めた。口止め、だの、やっぱり言うべきか、だの何やら一人で悶々としているようだ。

 が、突然彼は決心したような目で俺を見つめて顔を近づけてきた。イケメンのドアップについ、ドキッとしてしまう。


「氷室さん」

「は、はい……!」

「実は、ここには……」

「はぁ〜い。ストップですよ、田所さん」

「え!?」

「お、お嬢様……」


 声がした方を見上げると、そこには___





 美少女が立っていた。

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