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就活生RYO -Grand Design-  作者: 就活史編纂室
第5期「二次選考!ジンジィランドの死闘」
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第1四半期「リョウとシズナ」

 リョウはいきさつの報告をおこなった。

 ひさびさに話すからか、すこし緊張した。


「……そう」

 目を伏せて、ただそれだけ、シズナは言った。


 キョウカとの対話の件は、――打ちあけたものか、どうか。話がそこに差しかかったとき、正直まよった。ペンダントは、遺跡のどこか奥深くで、ひろったことにでもしようかと思った。

 でも、ポーカープレーヤーとして優秀なリョウではなかった。シズナのほうから察して、こう言った。


「キョウカね」


「……あの……」

 隠しごとをしようとした後ろめたさに、言葉がつまった。

「どうして?」


「……どうしてもなにも、こんな大きなマナの結晶が、そうあるはずもないし」


 そして、すこし間を置いて、わずかに表情をほころばせて、こう言った。


「……なんてね。これ、……わたしがあげたものなの」


「え? ――シズナさんが?」


 シズナは、うなずいた。


「わたしが、……プレゼントしたの。キョウカに」


 そのときの思い出を、聴かせてくれるのではないか。そう思って、リョウは待っていた。けれどもシズナは、

「座ったら?」


 と椅子に目をやってうながしたっきり、


「――悪かったわね」


 聴きのがしかねないくらい小さな声で、そうつぶやいただけだった。キョウカの話は、それきりだった。


 つぎに、話題はこう移った。

「カツモンたちにも、()()を言わなきゃ」


 リョウはシズナの真意をさぐった。知っているのだろうか、カツモンたちの最期を……? もしかしたら、そのうえで……? でもそれは、思いちがいだった。


「いろいろ、気をつかってくれたの」


 ――知らないらしかった。お礼、それは貢献に対してじゃないのだ。生きていると思っているのだ、みんな。またすぐ、当たり前に会えると思いこんでいるのだ。


「わたし、もっと、うまくやれると思う。これからはもっと……力を『使う』なんてかたちじゃなく、『借りる』っていう考えで――」


 うぐっ、とリョウの喉がなった。シズナの言葉が、とぎれた。


「どうしたの?」

 シズナは、不安そうに尋ねた。


 リョウは、

「……シズナさん」

 と覚悟をきめて告げかけてすぐ、いや、でも……と、心揺さぶられた。


 もうすこし、待ったほうがいいかな?

 いまこうして、話ができるくらいに回復してきてはいるものの、まだ万全の状態じゃないはずだ。

 もうすこし、復調するまで、待ってから……。


 けれどもシズナが、


「……ねえ。どうしたの……?」


 と目を合わせるのも怖がりつつ重ねて問いかけたとき、突然、リョウに決壊のときがきた。



 ぼたぼた、大粒の涙を溢れさせながら、リョウは無言で、物語の本を差しだした。

 シズナも無言で、読んでいた。

 くちびるに、きゅっと緊張がみなぎった。


「ちょっと」

 シズナはようやく言った。

「ひとりにしてくれる?」


 リョウはすぐに立ち上がった。







 たっくさんのノート。

 膨大な画用紙。

 すみずみまで有効活用されたチラシの裏。


 どさーっとシッポはぶちまけた。

 かたっぱしから、あさりまくった。

 使えそうなものだけ、ピックアップしていく。


 作業台には、先日港で()()()()()あの真っ白い作業服と、リョウの泥んこジャケットが、でろりと横たわっている。


 ――考えてみりゃ、変な話だよ。


 ただの土いじりに、なんでこんな重装備が必要なのか?

 なにか、ヒミツがあるにちがいない。

 アンちゃんが、言ってた。「マナ」がどうの、光がどうの。

 タナカの横で、シッポも説明を聞いていたはずが、くわしいことはぜんぜん覚えていない。きちんと聴けていなかったのだ。こっちの頭は、そのとき別件に占められていたから。


 ――オイラだって、やれるんだ!

 無限枚ありそうなデザインをひとつずつ吟味しながら、シッポは内心声をあげつづけていた。

 ――やれるんだ! オイラ、作るんだ!


 アンちゃんのための、スーツ。

 二次選考に、間に合わせるつもりだ。


 リョウは、世間一般の意味での「カツバトユーザー」ではないらしい。港で、荷台で、遺跡で、なにより一次選考で、バトルでない、ソウゼツな就活を戦っていた。そして、それは敵もおなじだった。


 世界のいったいなにがどう変わろうとしているのか、シッポにはもちろん理解なんてできていない。するつもりもない。それはシッポの「仕事」ではないからだ。


 シッポの仕事、それはカツバト以前の、いやもしかするとそれ以上に危険な就活を戦うリョウのための、強靭で、軽やかで、そして、できれば「スタイリッシュ」なスーツを仕立てきることだ。


 ――オイラ、できるかな?


 できそうだった。だって、やってやるからである。


 そもそも、シッポは一次選考の結果だってまだ聞いていない。聞きもしないうちに、二次選考むけのスーツをつくろうとしているのだった。その二次選考の内容だって知らない。――それはいい、どうでもいい、のかもしれない。できることを、じぶんの仕事をやるだけだから。


 ただひとつ、もやもやするのは――。


 ――エリカ姉ちゃん。全然、来ないな。




 それは、リョウも気がかりに思っていた。

 二次選考の結果はいちおうメールで報告したけれど、返事がない。

 電話をしてみても、つながらない。


 シッポならなにか知っているかも、とも思ったのだけれど、部屋の前まで来たとき、


 ――トン、カン、トン、カン!


 とあの快音が高らかだったので、邪魔するのははばかられた。


 エリカ、どうしたんだろう?

 シッポのところにいるのなら、それでいいのだけれど……。

 でも作業中、シッポはエリカを部屋に上げるだろうか?

 公園に行ったあの日、エリカは訪問を遠慮していた。


 ――考えすぎかな。


 べつに数日くらい、音信不通になることは誰にだってあるだろう。つとめて、そう思いなおそうとした。

 二次選考が、ちかづいている。胸さわぎは、しずめなければならなかった。





 花鏡院には、胸さわぎなどなかった。

 あるはずもなかった。

 ただ、いらだちのみだった。


 ――あの、エリカとかいう女。


 連絡がつかない。これがあの女なりの、拒絶の示しかたか……?


 ――いや。


 あの女に、そんな大胆な真似ができるはずがない。

 そんな度胸はない。だいいち、行くあてがないはずだ。


 ウツロ教授も、なにも知らないという。嘘をついている様子もなかったし、虚偽の証言をするメリットもない。


 ゴーダは慌てるばかりで話にならない。ほとんど錯乱状態だ。


 かもめ亭にも、面倒事に発展しないよう、ものものしい表現は避けそれとなく探りを入れてみたが、匿っている様子もない。


 ――どこだ? どこに消えた?


 許しがたい。

 この、花鏡院醇麗の計画を遅滞させるなど。

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