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就活生RYO -Grand Design-  作者: 就活史編纂室
第3期「一次選考!絶望のグループディスカッション」
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第8四半期「vs 砂漠のガンマン就活生&七つの海の海賊就活生」


 リョウは、着席したまま客席を見やりました。でも、照明がまぶしくて、シズナはどこで観ているのか、特定できそうにありません。

 しかたなく、よそ見をやめると、真正面には朱雀が座っています。


 サユリが進行を開始しました。


 ――さあて、本日のテーマは……!


 大きなディスプレイに、テーマが浮かび上がっていく、――その様子を見て、リョウは漠然とコンサルタートルのことを思い出していました。


 ――こちらのテーマについて、議論していただきたく、存じます!


 そしてとうとう、その時が、訪れました。

 ――それでは、グループ・ディスカッション、開始で、ございます!



 四名の就活生は、いっせいに宣言しました。

「就活バトル――宜しくお願い、致します!」



 開始直後、カツバトを起動させ、砂漠の内定稼ぎガンマンふうに変身した隣席の就活生・ビリーが、リョウにこんな忠告をおくりました。

「ひとつ言っとくとな。――お前もう、負けてるのさ」


「え?」


「誰が、『着席』っつった?」


「あ――!」

 リョウは思わず立ちあがりました。

 そうでした、採用担当者の許可も待たず、席についてしまうなど――。


「マナー、――違反だろうがよ!」

 

 ビリーはそう言って、真上にぱあんと弾を発射。挙手がわりです。


「席についても! 宜しいでしょうか!」


 ――はいはい! どうぞ!


 と、サユリの許可をうけて、二人の就活生は我勝ちに腰を下ろしました。


 リョウは目で真向いを示しました。朱雀だって、サユリの指示を待たずに座っていたような気がしたからです。


「いや、そうじゃないね」


 斜向いから、声がしました。

 七つのブルーオーシャンでビジネスを展開する海賊就活生、アオヒゲです。右手に、鍵型の義手を装着しています。それはワニやサメに食いちぎられた――わけではなく、履歴書の書きすぎで腕がもげたからです。


「座っているようで、座ってねえ――禅問答じゃねえぜ、簡単な話さ!」


 アオヒゲはそう言って、思いっきり、朱雀の椅子を蹴飛ばしました。すると朱雀は尻もちをつく、こともなく――会場全体が、どよめきました、なんと、模範的姿勢を維持したまま、微動だにしないではありませんか。



「空気椅子、だと……化物が」

「この就活……ひと荒れきやがるぜ」



「――わたくしは!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 その朱雀が、声を上げました。前列の観衆、何名かの鼓膜が破裂しました。


 ――ファシリテーターに立候補するつもりか?

 ビリーが見当をつけ、

 ――タイム・キーパーか?

 アオヒゲが推察しました。


 しかし、朱雀は――。




「『絶対者』を担当させていただきたく存じます!!!!!!!!!!!!!!!!」




「――なにッ!?」

 ビリー、アオヒゲ、二名が唱和しました。


 絶対者? そんな役割、聞いたことがありません。


 ふつうグループ・ディスカッションの役割は、進行を司る「ファシリテーター」、議事録をつける「書記」、時間を計るタイムキーパー、それから議論の脱線を補正する「監視者」、豊かな発想力で議論を活性化させる「アイデアマン」くらいなものです。


 会場の誰もが、ひりひりと息をつめていました。それはサカミだって、例外ではありません。


 ビリーとアオヒゲは、常識を疑う、どころか破砕するまさに「絶対内定者」の就活に動揺し、そこからなかなか、抜け出すことができずにいました。


 ところがグループ・ディスカッションについて、なんの前提知識もないリョウは、この時、動揺すらできなかったのです。だから、すぐに挙手に移ることができました。


「――しまった!」


 ――ファシリテーターか、

 ――タイム・キーパーだ!

 それが、二名の読みでした。


 前者なら議論を思いのまま操ることができますし、後者なら邪魔者の発言時間をごっそり削ってしまうことが可能だからです。


 しかし、リョウがどうどうと希望したのは、唯一知っている、この役職でした。


「わたくしは、書記を担当させていただきたく、存じます!」


「ちょっと!」

 客席のシズナは思わず立ち上がって叫びました。

 が、こんなところから声がとどくはずもありません。両脇の就活生たちから不審の目を向けられながら、すごすごと、腰を下ろすほかありませんでした。


 ――馬鹿が!

 ビリーはシズナがまさに懸念している点に関して、内心ほくそ笑んでいました。


 書記は、もっとも隙の多い役割です。記録中は完全に無防備になりますし、ノートを強奪して、燃やしてしまえば成果は何も残りません。腕を負傷させてしまえばそもそも文字を書くことすらできなくなります。


 それに……。


 ――潰してやるぜ。


「――気狂い保安官の長話(シェリフズ・スター)ッ!!!」

 ビリーはカツバトの必殺技を発動させました。


 観衆の熱気は益々御上昇。これです、これこそ、カツバト時代の就活の醍醐味なのです。


 銃口のようにすぼめられたビリーの口から、一秒間に十万語以上の言葉の銃弾――自己PR、志望動機、テーマに関する主張、その根拠など――が連射されました。そして最後の一発は、壇上のサユリに向かって、

「――宜しくお願い、致します!」

 ――狙撃。正確無比な、アピール。


 喝采がとどろきました。


「なるほどなあ」

 アオヒゲは敵ながらあっぱれといった面持ちで言いました。

「これなら、メモを取ることは不可能。考えた。考えたねえ――」

 しかし必殺技なら、アオヒゲにももちろんありました。


海賊(サヴェッジ・)の流儀(サルベージャー)ッ!!!!」


 ――ビリーの脳内に直接ダイブして、沈没船のお宝を根こそぎ漁るように、言語化以前のアイデアのサルベージに成功。やはり、喝采がおこりました。


「読めたぜ。お前の意見」

 直接の、思考略取。これなら、発言を聞き取る必要すらありません。

「やるじゃねえか」

 ヒュウ、と口笛をふき、ビリーは讃辞をのべました――ライバルの「長所」を的確に見抜き、素直に称える器のでっかさ。それ自体が立派な長所で、アピールポイントなのでした。


 ところでその間、朱雀は寡黙に空気椅子を維持しているばかり。

 リョウは記録にあくせくするわけでもなく、ぼんやりとテーブルを見つめ、首を傾け、何か、熱心に考え込んでいる様子。


 そして出しぬけに、

「――わかった!」


 ビリー、アオヒゲ、両者の注意がリョウに向きました。

 どこか不穏な沈黙にみちた会場で、エリカは、心配そうにリョウを見つめています。


 そして、リョウが口を開くと――。



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