表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/2

⑤マジックバッグを盗まれて大ピンチ(下)

2話連続投稿でした。

よければ、感想をお願いします。

 前回まで)暢気はスライム討伐中に、マジックバッグを盗まれる。盗人を追いかけていると、気がついたら森の奥深く。盗人は見つからず、マジックバッグも戻らない。その盗人がもしかしたら、あの大剣使いかもしれないと心配する。そんな中、巨大蛇の攻撃を受けるが、危機一髪ドライアドの種で回復し、罠を仕掛けて巨大蛇を打ち取る。マジックバッグの捜索を続ける中、傷ついた子犬を見つけ夜をあかす。その夜は巨大な狼の鳴き声が止まなかったという。


「ふぁぁ。寝たぁ」

 あんっ、アンッ。


 側に子犬がいたので、きっとその温かさで思わず熟睡していた。巨大蛇との戦いでかなり疲労もあったからかもしれなかった。

 気が付くと、子犬は僕の周りを飛び回りながら、わんわんと鳴きながら走り回っていた。


「僕はこれから村に帰るけどどうするか?」

 声を掛けて移動するが、黙ったままついてくるので、仕方なく連れて帰り道を探すことにした。


 それにしても、この子犬どうしよう。昨日は薄暗くて犬に見えたけど・・・。間違いなく、これは狼だよな。

 昨日の夜、狼の遠吠えが聞こえた気がしたけど・・・・。もしかして、この子の親かな。

 親元に返すのが一番かもしれないけど、今の状況でこの子の親に返しても、魔物に誠意が通じる訳もなく、僕が餌食となる未来しか見えない。とにかく、日が暮れる前にある程度の場所を見つけて、それから考える事にしよう。


 昼までなんとなく歩き続けたところで、見覚えのある場所に出てきた。よし、これで帰れると考えたが、そうするとこの子はどうしたらいいのだろう。しばらく迷ったけど、まだ、小さくてかわいいから自分のペットとして育ててもいいかもと考えた。


 いずれにしても、一度村に帰ることにした。トッチギーさんの件もあったし・・・。


 この子にはウルフの「ウル」と名前を付けてみた。名前を呼ぶと元気にわんわんと鳴いて喜んでいた。かわいい。


 村に帰って自宅にウルを連れて帰った後、冒険者ギルドの「シャイン」にマジックバッグの盗難届と巨大蛇の討伐証明として2本の大牙を持っていった。

 受付のサニアさんにはねぎらいの言葉をかけられて、盗人の特徴を伝えると登録しておくと言われ、マジックバッグは見つかっても返却されないだろうと言われた。


 ギルド内でトッチギーさんを探した。


 いつもこの時間にはギルド内で食事をしながらゆっくりしているはずなのに、ここにトッチギーさんはいなかった。


 受付のサニアさんに尋ねる事も出来たが、理由が思い浮かばなかった為、聞くことが出来なかった。


 お金は全てマジックバッグの中に入れていたので手持ちが全くなかった。そんな状態だったので、巨大蛇の討伐報酬は丁度よくて助かった。とにかく、数日分の食事を買い込んで自宅に戻った。


「ウル!明日はお前の親を探しに行こうな」


 その日がウルと一日遊んだ。元気がよく。わんわんと犬みたいに鳴くウルはとてもかわいかった。


 夜になって、寝床でウルと一緒に休みながら、明日もう一度ギルドでトッチギーさんを探してみようと考えていた。


 翌日、森に行くなら次いでにと、スライムの討伐依頼を受けに冒険者ギルドにいった。すると、ギルドマスターのジャングルさんが深刻な顔で冒険者達に注意を促していた。


 昨日、シャイニアンの森の浅いところでフォレストデスウルフが冒険者を襲ったというのだ。たまたま、Bランクパーティだったから、逃げ切ることが出来たが、大けがを負ったと言っていた。

 緊急討伐対象となる為に、近隣よりA~Bランクのパーティを依頼しているとのこと。その為、低ランクの冒険者はシャイニアンの森に入らないようにとの呼びかけだった。


 僕のせいだ。僕がうかつにも連れ帰ったせいだ。ごめんなさい。本当にごめんなさい。


 ギルドでトッチギーさんの事をたずねようと考えていたが、そんなことが出来る状態ではなく、僕は逃げるように走って自宅に戻った。


 しかし、そんな僕の気持ちも知らずにウルはわんわんと言って。僕にまとわりついてきた。


 返さなきゃ。僕の命に代えても、この子をフォレストデスウルフの元に返さなきゃ。


 僕はそのまま、ウルを連れて森に向かった。


 森はいつもとは様子が違った。例えれば、怒りに満ちているというのだろうか。いつもとは違う沈黙が森全体を覆っているようだった。一つ違うのはウルだけだった。


 ウルは森に入ると嬉しそうに走り回っていた。しかし、僕の側を離れることなくすぐに戻ってきていた。僕はそんなウルの様子を見ていると、その場から走って自宅に戻ってきていた。


 ごめんなさい。ごめんなさい。ウルがかわいくて、どうしても無理です。


 その日は自宅でウルと一緒に遊んですごした。しかし、その夜になると、シャイニアンの森の浅い場所から狼の遠吠えが一晩中鳴りやむことはなかった。


 僕は布団にくるまって、ウルを抱いて寝た。遠吠えで一睡もできなかったが・・・。


 翌朝も、部屋から出ずにウルと遊び続けた。遊べば遊ぶほど、ウルは僕のいうことを聞いてくれてうれしそうにしていた。その姿を見ると、外の事はどうでもいいと考えていた。

 もうすでに、誰がマジックバッグを盗んだかなんてどうでもよくなっていた。


 僕がウルを親に返さなくても、冒険者パーティがあのフォレストデスウルフを討伐してくれる。そうしたら、もう、安心してウルを僕の者にできるからね。かわいいね、ウル。


 僕はひどい事を言っているということは自覚出来た。そして、そんなひどい事を言っているのに、ウルは笑顔で僕の方を見てわんわんと嬉しそうに鳴いていた。


 その日の夜も、遠吠えは続いた。


 僕は家から出ずにウルと遊び続けていた。


 しかし、次の日の朝はいつもと違った。


 朝になっても、フォレストデスウルフの遠吠えが止まなくなったのだ。

 そして、その日の午後になると、フォレストデスウルフの遠吠えの数は2匹に増えていた。


 そして、2匹のフォレストデスウルフの遠吠えは夜になってもやむことはなかった。


 村の入り口からシャイニアンの森に近い方では、家の中からでも聞こえるくらい冒険者たちのざわめきが聞こえて来た。


 今日、明日中には強いパーティーが来ると冒険者達はうわさをしていた。


 いくら強い冒険者のパーティが来たとしても、フォレストデスウルフが2匹もいたら、もしかすると死人が出るかもしれない。


 僕のわがままの為に人が死んでもいいのか?僕は僕のわがままの為に、人の人生を終わらせる権利があるのか?


 だめだ。


 やっぱり、だめだ。


 僕の責任は僕が償わなきゃだめだ。


 ウル、行くよ。ごめんね。


 僕は家のドアを開けた。すると、ウルは突然シャイニアンの森に向かって走りだした。


 ウルだめだ。お前を親の元に届けないと、もしも、別の魔物に殺されたら・・・・。


 僕もウルの後を追って走り出した。しかし、ウルのスピードに僕が走った所で追いつくはずがなく、アッという間においていかれた。


 気がつけば、僕は真っ暗な暗闇の中にいた。ウルの事しか目に入ってなく、まっすぐに追いかけた結果だった。僕はこのままウルを探すか、それとも引き返すか迷っていた。


 時間にして数分間の事だったはずが、突然、僕の背後に恐ろしい殺気を感じた。いくら、鈍感な子供で会っても、これだけの距離で放たれた魔物の殺気に気がつかないはずがなかった。


 そして、その殺気、いや、その魔物の姿が2匹いた。フォレストデスウルフが2匹だ。


 体の大きさは像かと思えるほどの大きさの狼が2匹そこにいた。


 僕はその時、恐怖よりも、ウルが無事に親に合うことが出来たかを考えていた。

 不思議と恐怖はなかった。この後に、怒るであろう惨劇は容易に推察出来たが、それでも、恐怖はなかった。


 僕のわがままで、他の人が死ぬよりも、僕が責任を取って死ぬ方がよっぽどいい。

 その時は、そう思えたのだった。


 そして、目をつむって、決意した。


 ・・・・わん、わん。わん、わん。


 聞き慣れた鳴き声が目の前から聞こえて来た。目を開けると、なぜかよく見えなかったが、そこにはウルがいた。くるくる回ってわんわんと鳴いていた。


 その時僕は正面にいたフォレストデスウルフの事は完全に忘れて、ウルとじゃれ合っていた。


 よかったな。ウル。親に合えたんだな。

 良かったな。


 そして、ゆっくりとウルを地面に降ろした。


 フォレストデスウルフよ。思い残すことはないよ。


 僕はそう呼びかけた後、目をつむって、両手を広げてフォレストデスウルフの前に立った。


 わぉぉおおおおおおーーーーーーー。

 わぉぉおおおおおおーーーーーーー。


 正面でフォレストデスウルフの遠吠えを受けて、僕はしりもちをついた。


 僕はゆっくりと目を開けるとそこには、ウルを真ん中に3匹の背中が見えた。


 しかし、それも、数秒で暗闇の中に消えていった。


 それから数時間僕はぼぉーとしたまま、その場で座り込んでいた。

 夜が明けて、朝日が差し込んできたころに、ふと目の前に僕のマジックバッグがあった。


 それだけでなく、側には男の死体があった。

 手には大剣を持っていた。

 方から上はなかったので、顔はわからなかったが、なんとなくトッチギーさんではない気がして安心した。


 ウルが見つけて来てくれたのか、それとも、その親がもって来たのか、もしくはその場所でその冒険者が死んだのかは謎だったが、この日を境に僕の中で何かが変わった気がした。


 この日以後、ウルに会うことはなかったが、目をつむると、僕の目の中にはいつもウルの元気な姿が思い出すことが出来た。


 後で耳にしたが、トッチギーさんは休養中だったにもかかわらず、仲間からの急な依頼があり、1週間程度の魔物討伐に行っていたということだった。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

今回は暢気の葛藤を描いてみました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ