その9・襲撃開始
その9・襲撃開始
(※場面転換。郊外の森、街道夕暮れ時)
「そこの草むらに隠れてください。そろそろ王女一行が通りがかりますよ……ほら」」
「……ああ、なんか女騎士団格好いい! なんかこう、みこやん先生の描く人と田沼雄一郎先生が描く人と環望先生、駄菓子先生が描くタイプの美人が交互に、交互に! ああ、なんかあの年下系はディビ先生風! オーガーの傭兵も女性が多くって、こっちはチバトシロウ先生やZUNTA先生風!」
「……あなた、ホントはお好きでしたよね?」
「みみみみみみなさん、一般向けの作家さんじゃないですか! ぼぼぼくは知りませんよ! 従兄弟のお兄さんがくれた成年コミックコレクションを受け継いだりしししてませんっ! 第一、みこやん先生はMCあくしずのイラストレーターですし! 環望先生は……ダンス イン ザ ヴァンパイアバンドで……」
「…………」
「弓兵隊の弩弓と鎧かっこいー! あの辺なんかこう、キャノン砲両肩に背負ってるタイプの鎧で、龍炎狼牙先生か、武藤立樹先生のデザインっぽいー! あ、あっちの女性兵士、bob先生が描いたみたい!」
「(諦めて溜息)そういえばオーガーの男のほうは獅子猿先生が描いたみたいですねえ……騎士の中には他にも西E田先生が描くみたいなエルフ美女がいるし。そういえばあなたの幼なじみ赤坂嘉彦先生デザインを彷彿ととさせますよね、特に太腿と腹筋…」
「あ、確かに言われてみれば」
「…お、あちらの馬に乗った宮廷魔導士らしい女性は上山道郎先生が描く女性っぽい凛とした感じで」
「以外とナビゲーターさんも好きですね」
「まあ、楽しいものと美しいものが嫌いな人があって? って感じですな」
「なんか通じ合えたようで嬉しいです!」
「ところで環先生の、ダンス イン ザ ヴァンパイアバンドって、なんで単語の間に『・』入らないんでしょうねえ」
「ですよねー……あ、ここでビバークなのかな?」
「でしょうね。兵站らしい人たちが組み立て式のコンロとかを荷ほどきし始めましたよ」
(※煮炊きの匂い)
「いいなあ……美味しそうな匂い……そういえば転生してから僕、何も食べてません」
「私は食べました。今日はナンチーズドッグとサラダと、ミックスジュースと軽めですが」
「いいなあ……」
(※地面が揺れる)
「え? 地震?」
「いえ、違いますよ。ほらあれ……」
「や、山が動いてる!」
「まあ、そう見えるでしょうねえ」
「……あれ? なんかカボチャの馬車……でもスケールが20倍ぐらい違うというか……何あれ!」
(※大木が倒れ、へし折れる音)
「あー……そうでした、言い忘れてましたが王女の馬車ってこれなんですよ」
「なんですか! この街道の幅を超えて周囲の木々をなぎ倒しながら、ガゴガゴギギーのドタバタギャンギャンってな、キャタピラー三菱って感じで動く何か!」
「……まあ言い訳としては王女専用の大型馬車、らしいですよ?」
「らしいですよって……これ完全に移動要塞とか、戦車とか言われる代物じゃ」
「えーと魔法エンジンで動く111王国最強の馬車だそうです。中にいるはずの王女が生まれた年に王様が『娘に悪い虫がつかないように』と作らせたらしく……と資料にありますね」
「親バカ戦車………」
「潜入にはダンボールが必要ですな」
「そうは言うがな、大佐」
「いや、田村睦心さんが声当てそうな顔で無理に声潰して大塚明夫さんみたいにせんでも」
「お約束ですから」
「あんまり胸張ったりすると見つかりますよ」
「ああそうでした……ところで、いま気付いたんですけれどあの馬車、馬が引っ張ってませんが」
「この世界じゃまだ【車】って概念はないですからねー。馬なし馬車の段階なんで」
「なるほど」
「そういえば私も今思い出しましたが、木静謙二先生風でしたね、さっき来てた例のマスク以外スッポッポンの暗殺者」
「あー、確かに!」
「何虚空に向かってブツクサいってるのよ! A!」
「あ、B」
「ここは近すぎるでしょ、も少し下がるわよ」
「そういう意味では迂闊十蔵先生風キャラなんですかね、まだあの暗殺者の雇い主のDおばさんって」
「かも……」
「ほら、なにばかいってんの! 声落とす!」
「はいはい」
「しかしこの辺の美人バリエーション、ある意味すっごく嬉しくも有り難いですね」
「まあ、パラレルワールドは可能性の世界ですから」
「その可能性の話でなんなんですけれど、あそこに忍び込むのにホントにナビゲーションで上手く行きます?」
「まあ、ナビゲーションは完璧です、あとはあなた次第」
「随分自信家だなあ」
「私もこの仕事長いですからね。毎日FPSやり込んでますし!」
「あーそういえばコールオブデューティの新作、そろそろなんですよねえ……やりたかったなあ」
「あんな死に方しなければねえ」
「うう、それをいわないで……」
「こらA、何虚空に向けて喋ってるの! いい加減にして!」
「で、どういう作戦なんですか、ナビさん」
「私の名前はナビさんですか、ま、いでしょ……というかないですよ、んなもの」
「え?」
「あくまでも作戦はあなたが立てるんです、私はナビゲート。私が全部命令や提案しちゃったら、責任が私に来るじゃないですか!」
「ひでえ……」
「大人はそういうものなんです」
「わかりました……ねえB」
「なに?」
「どんな作戦?」
「あんたも大概サイテーですな」