その81・その10秒に命をかけて……の筈ですが
▼その81・その10秒に命をかけて……の筈ですが
(※完全に防衛戦が張られている最深部からの間断なき銃撃に撤退するAたち)
(※Aたち、10式戦車の主砲で吹き飛ばされた天井部の瓦礫の陰に隠れる)
「さすがにいくら高速進軍でも、ここまで来るまでの間には敵も陣地を構築しちゃうか……」
「ところで、聞くの忘れてたけど、この先に何があるんだ、A?」
「そういえばあたしも聞いてない」
「えーと、早い話がこの魔王の国をボクらの世界に繋いでいる魔法の源があるんだ。機械仕掛けの魔導具みたいなもの」
「それを壊すっていうことか? 爆薬で間に合うかね?」
「ふふーん。ちゃーんと一計を案じてあるよ」
「ああ、ヘクトパスカル様か」
「う……」
「E王女様にのろしになる魔法を展開して貰ってヘクトパスカル様を誘導して、さっきのセン・シャーの大砲みたいに吹き飛ばして貰うんだな?」
「ああ、Aさん……言いたくはないんですが、なんかこういう風に『練りに練った計画』が実行前に明かされるのってあんまり……」
「成功しない、ってパターンですよね」
(※奥から100名以上の特殊部隊が登場、魔法の個人用障壁……盾のようなモノ……を展開しながら突っ込んでくる。手には剣と短槍、およびスタンスティックなど)
「あー、これは白兵戦ですね」
「えー! 苦手なのに……人を殺すのは嫌だなあ」
「安心して下さい、彼等は全て人型機械で、モノホンの人間はいませんから」
「それ聞いて少し安心!」
(※A、腰の後ろからダガー抜いて両手で構える)
「サポートよろしく!」
(※ナビに言って飛び出すA)
「え? あ、ばか!」
(※B、自分に言われたと勘違いし、慌ててショートソードを抜いて後を追う)
「まったく、妬けちゃうねえ」
(※F、苦笑いしながら片手半剣を抜いて追いかける)
(※激しい戦闘、敵は人型ドローンなのでフルパワーで床や壁を砕く力で殴ってくる。ナビの
指示に従って相手のナイフや棍棒、槍などをかわして急所部位にダガーを叩き込むA、さらにその後ろを守るB、二人を援護するように脇の連中を片付けていくF)
「ほい、これで20体目!」
「こっちも!」
「こっちもなんとか30体……うわー、まだいる-」
「こういう自動兵器の面倒くさい点は、大抵量産されて大量投入されてくる、ってことですね……はい、右に飛んで次伏せて!」
「わわ!」
「人的資源は枯渇気味のようですな」
「冷静な分析はいいですから、こいつら動かしてるWi-Fiみたいな奴どこかにないですか?!」
「それが……いやあ、ここまでくると自律型AIだけなんとかなるみたいですな…………後ろです身体捻って!」
(※言われるままにA、あれこれ敵を交わして急所にダガーを刺して倒す)
「んな暢気な!」
「でもま、とりあえず第一波は防ぎましたね」
(※見回すA、とりあえず敵はいなくなっている)
「でも奥の防御は完璧に固められてしまいましたねえ」
(※ナビの指摘通り、奥の扉の前には魔法陣やら装甲板やらで頑丈に固められている)
「どうする? あんまり手間取ると奥まで行けないぜ?」
「あーもう、ヘクトパスカルー早く来てえええ!」
「勇者なんですから少し考えた悲鳴を上げましょうよ」
「んなこといわれてもー!」
「こういうときにまで妄想の友だちと話さない!」
「ひいいい! 何かもー。体力ゲージが真っ赤ですよお!」
「さすがに、あたしもへたってきた……」
「まあ、あと一回、体力回復の神薬はあるけどな」
「使っちゃったら一時間でぶっ倒れる奴でしょ? モンスターエナジーより怖い」
「なに、そのモンスターって」
「ああ、すげー強い酒だな。魔王軍に雇われてるときに飲んだことがあるが、あれはヤバい」
「いや多分それストロングゼロ……」
「で、どうする?」
(※F指差す先から今度は銃器を構えた部隊が突入してくる)
(※撃ち出される銃弾、慌てて瓦礫に隠れる)
「今度は銃撃戦に逆戻りかよ!」
(※F、MK46を撃ちまくる)
(※場面転換)
(※地下施設奥。水槽から人影が立ち上がる)
「ふう、今回は部品が無いので不本意な形になりましたねえ、うん」
(※人影、降り立つ、慌てて駆け寄る職員。しなやかな身体からバスタオルで水滴を拭う)
(※別の人影が衣装を差し出す)
「もっと露出の多い衣装が欲しいですね。せっかくこの外見ですから、うん」
(※場面転換)
(※通路、銃撃戦。武器を奪って撃ちまくるA、B、とF)
(※次から次へとドローンの敵が攻め込んでくる)
「どうするこんな波状攻撃、何度もやられたらそのうち全滅だぜ?」
「ここまで来たんだから待避してヘクトパスカル様を待ったほうがいいんじゃ?」
「その前に標的の扉をキチンと開けないといけないんだ。ヘクトパスカルの電撃を集束させて、目標周辺の扉を撃ち抜いたら威力が減衰する。そしたら奴らは超人的な復旧技術とかバックアップで元に戻しちゃう。やつらの怒りを切り離し、同時に奴らの全てのシステムをぶちこむには扉をどけた状態で撃たせるしかないんだ。チャンスは一回!」
「めんどくせーこと考え付きやがって……」
「二回撃てばいいじゃない、素早く!」
「無理、一発撃って最初の崩壊が始まった瞬間に敵は次の手を打つ。そういうシステムでこの要塞は出来てるんだ」
「はい、その通り」
「まるで魔物そのものだねェ」
「結局、扉をあけるのがあたしたちの使命、ってわけね」
「で、扉ってのは200メートル先のあれか?」
(※F、MK46で弾幕を張りながら、瓦礫の要塞と化した防御陣の彼方の扉を指差す)
「閉まってるぞ、どうやって開ける?」
「さっきやっつけたドローン兵の中枢部分で」
(※A、ドローン兵士の首を掲げる)
「それで開くのかよ?」
「えーと、ここを、こうして……こうして……でいいんですよね?」
「そうです、そこの配線を繋いでください、で、そこの右から2番目……いやそれ3番目です!」
「ああ、そうかそか。えーと2番目のチップを……」
「外して、一番目と取り替えてください」
「あ、LANアダプタが出た……なんか不思議……こんなにハイテクなのにLANケーブル使うのか……」
「まあ、最後はアナログで何とか出来るようにするのが軍事兵器の肝ですから」
(※A、背負っていた革袋から厳重にプチプチと革で梱包されたミニPCを取り出す)
「……で、これにアキバのラジオ会館から持って来た、このミニPCを繋いで……と」
(ミニPCの画面に山のようなプログラム言語が表示される)
「うわ……プログラム言語……見たこともないのが……」
「気にすることぁありません。ミニPCにUSBメモリを繋いでください」
「は、はい」
(※USBメモリをミニPCに刺すA、あっという間に別のプログラムが書き換えていく)
「ENTERキーを押せば、10秒、あの扉は開きます!」
「その間に扉のコントロールシステムをぶっ壊して……じゃない、同じ様にこのUSBメモリを突き刺して、ですよね?」
「できれば。そうじゃなきゃ次善の策を立てます」
「よし、B、Fさん! 1分だけ時間作って!」
「弾薬が残り少ねえ、1分フル稼動したらオレらは撤退するぜ」
「構わない、Bを頼みます」
「ちょ、ちょっとA! 一人で行くつもり?」
「一人なら帰りも楽だ。10分経って戻らなかったら、いや5分で戻らなかったら失敗、ヘクトパスカルと一緒にココカラ帰って」
「……あんた、ホントに勇者なんだよね?」
「何とか頑張ってそう呼ばれるヨウニする」
「……」
(※B、Aにキス)
「戻ってきなさいよ、そしたらあたしが攻めだからね!」
「……この前みたいに?」
「……(真っ赤)」
「じゃあね」
(※にこやかに笑ってENTERキーを押す準備をするA)
「いくよ、3、2、1」
「ゼロ!」
(※機関銃を撃ちまくるF、Bも同じく。さらにA、ENTERキーを押して実行しながら走る)
(※殺到してくる重火器部隊)
(※その真ん中に先ほどのドローンの首を投げ込むA、頬を銃弾が掠めて疵)
(※ドローンの首が爆発して閃光)
(※その間に滑り込むA、ドローン兵器たちの後ろでドアが開く)
「このおおおっ!」
(※A、スライディングして滑り込む)
(※ドア、閉まり始める)
(※辛うじてAが通り抜けた瞬間に扉が閉まる)
(重々しい油圧の音とともにドア閉まる)
「ま、間に合った……」
「こちらもですねえ、うん」
(※真っ暗な室内に照明が一斉に灯る)
(※腕で眩しさを一瞬防いだA、目の前の人影を見る)
「え……誰、この爆乳腹筋セミロングの美人」
「しかも褐色です……」
(※ナビ、姿消える)
「君のナビゲーターはココでは姿を現せません、うん、中国からのサイバー攻撃を防ぐために完全なファラデーケージにしてあるので、うん」
「あの、田中敦子さんみたいなお声で喋ってますけれどひょっとして……」
「ええ、Y崎です、どうも」
「うわあ、ホントは女性だったのか」
「いえ、これは他業務で色仕掛けを仕掛けるときの義体です。さすがに立て続けに壊されたので、戦闘用のものはなくて」
(※そういってY崎課長、アサルトライフルを構える)
(※間一髪横に飛んで銃弾を避けるA)
「ふむ、やはりハニトラ用の義体では命中精度が良くないですね、うん」
「Aさん、Aさん」
「あ、ナビさん、出てこれないって……」
「大丈夫、この程度のファラデーケージならチョチョイと弄れば……とはいえ、あんまり長い間はいられません」
「先手必勝!」
(※突っ込んでくるY崎課長、射撃で逃げ回るA)
(※咄嗟に構えて狙いをつけるが引き金が引けない)
「どうしましょう、ナビさん」
「どうしたんですか? 大丈夫です、アノ義体はこれまでのドローンと能力は変わりません、ちょちょいと本気出して同じ急所にダガーを撃ち込めば機能停止しますよ」
「でも、あの……あの腹筋、褐色の肌、ちょっときつめの美貌、ドストライクなんですよ! 僕の! 理想の形そのものなんです! 筋肉で太すぎず細すぎず、そしてどーんと大胸筋で吊り上がってるロケットみたいな爆乳! くびれた上に浮き出た六つの腹筋、そこから伸びるすらりとした、でも鞭をより合わせたような長い足!」
(※ポカンとするナビ)
「あんた……アホですか!」




