その80・進むモノ残るもの、向かうモノ
▼その80・進むモノ残るもの、向かうモノ
(※通路の奥を進みながら、拾ったM4アサルトライフルを撃ちまくるA、横にナビが突いてくる)
「はい、右転がって、左飛んで、頭下げて2時の方向に2発、あと10時、11時の方向」
「はいっ、はいっ、はいははいはい!」
(※通路のあちこちからの銃撃を避けながら発砲するA)
(はるか後方で、崩れた瓦礫に隠れたFとB、目を丸くしてその様子を見ている)
「すげえ……弾丸が見えてるみたいだ、あいつ……」
「うそ……だってあいつ、Aなのに……」
「惚れ直したか?」
「だ、だれがですかっ!(真っ赤)」
「照れるな照れるな。オレが見てもいい男だよあいつ。生涯かけて、損はしない男だ!」
(※銃撃しながら飛び出すF、追いかけるB、ふたりの手前で幾つも銃弾が弾ける、効力がなくなる前に物陰に隠れ、次のスクロールを取り出す)
「準備出来たか?」
「はいっ!」
「よっしゃ、行くぞ!」
(※飛び出すF、B。Aの後を追っていく)
(※擱座した10式戦車周辺、ヘクトパスカルを呼び込むための魔法陣が空中に浮かんでいる。E王女と暗殺者C。C、完全に腑に落ちない顔)
「どうした?」
「イエ、王女陛下。何故ニ私ハココニイルノデショウ?」
「仕方あるまい。のこのこあの建物にやってきて、妾たちがこれから戦だというのにノンビリ本など読もうしおって……暗殺者なのに妾が声をかけるまで気付かぬお主が悪い」
「……不覚」
「しかし、何の本を読んでおったのじゃ?」
「陛下コソ、何ヲオ読ミダッタノデスカ?」
「ああ、このセン・シャーとやらの動かし方の本とか、戦術の本とかじゃ……色々勉強になるな、あの建物にある本は」
「イエアノ、ソレバカリデハナイデス……」
「で、お主は何を読んでおった?」
「まんが……絵物語デス」
「マンガ? そういえばBもAもそういうものを暇な時には読みあさっておったな。面白いのか?」
「面白イモノモ、ソウデナイモノモアリマスガ……ドレモ興味深ク」
「ふむ。今度読んでみることにしよう」
「ココカラ無事ニオ戻リナサレルツモリデスカ?」
「当然じゃ。Aと我とBたちもおるし、お主は暗殺の手練れであろう? 生きて帰れぬ道理がないではないか」
「……私ガナゼ味方ニナルト?」
「ここまで付き合ってくれて、今さら裏切って妾を殺してもここは敵地、生きて帰れる確率はがくんと下がる。ここまで来たのならあとは最後まで付き合ってくれるであろ?」
「…………私ハ暗殺者デゴザイマス」
「あの本を読んでいるときのお主、まるで子供のように眼をキラキラさせておった。暗殺者としても優秀かも知れないが、お主の中には別のモノもある。そして妾はそういうものを愛でる…………人は一面のみで作られているものではないからの」
「…………」
「第一、お主なんであの時妾を殺さず、従った?」
「アノ場所デハ……私ハ仕事ヲシナイ、ト決メテオリマス」
「そういう奴、妾は好きじゃぞ?」
「シカシ、私ハ、Aヲ殺ス任務ヲ受ケテオリマス」
「そうか、ならやるがよい……妾がさせぬがな!」
(※腰に手を当て、呵々大笑するE王女)
(※残骸に隠れて狙いをつけるスナイパー)
「!」
(※C、投げナイフでスナイパーの額を貫く)
「よい腕だな、C」
「……」
「契約をしよう。この戦場では、妾の元に仕えよ。値は金貨300枚」
「……失礼ナガラ陛下」
「なんじゃ?」
「安イデス」
「ぬう、足下をみおって……ならば何枚じゃ?」
「金貨ナラ1300枚ガ最低相場デゴザイマス」
「では払おう。これは証文代わりじゃ」
(※E王女、イヤリングを外して手渡す)
「コ、コレハ……」
「金貨1500枚と引き替えの品と考えれば相場じゃろ?」
「イ、イタダキ過ギデス!」
「欲のない暗殺者じゃなあ、ハハハハ!」




