その74・暗殺者のための休息
▼その74・暗殺者のための
(※治癒魔法の光)
【大丈夫か、友よ……嫌な予感がしたので急いで戻ってきて良かった】
「あ……ありがとう、ヘクトパスカル」
【あまり喋るな、傷口は癒やしたが、体力は消耗しておる】
「……」
【しかし、お前の相棒はなにをしておったのだ?】
「申し訳ない。急にAさんに接続出来なくなって、焦ってたんですが、その30分前後の間に……」
【まあ、敵の技術力は狡猾なほどに上だからな。恐らくお前の介入をさせずにBとFを掠ったのだろう……で、奴らは何を要求するつもりなのだ?】
「わから……な……け……ぶん」
【喋らずとも良い、思考を読む】
(※頷くA)
【なるほど、E王女との取引か。お前ではなくFとBを奪うというのがいかにも奴ららしい。まあ、お前の場合スキルが発動すればやつらの災難になるからな】
「弱りましたね……下手に量子アンカーを辿ろうとすれば恐らく、彼等に見つかる。向こうもバカじゃないでしょうから警戒しているでしょうし」
【とりあえず、ここはひとまず撤退であろうな。敵の本拠地への道は判った……友よ、気をしっかり持て、ここからが長いことになる】
(※翼を広げるヘクトパスカル、飛翔)
(※その背中でぐったりしているA)
(※やがてヘクトパスカル、地平線の彼方へ。そして盗賊都市付近で巨大な魔法陣の上に集結しつつあるE王女の軍隊の上に降りていく)
【しばし進軍は待たれよ!】
(※仰ぎ見る兵士たち、竿立ちになって怯える馬、そして天幕から出てくるE王女)
「何事だ、古龍よ!」
【人質が出た、Aが重傷を負った。進軍すれば罠の中へ飛びこむ可能性がある】
「なんと! Aは? 人質とは誰か!」
【BとFだ王女よ。Aもかなりの深手を負った。】
(※ヘクトパスカル、自分の上に乗せていたAを魔法で地面に降ろす)
(※宮廷魔法使い、Aの状態を測定、深刻そうに首を横に振る)
「Aを私の天幕へ」
「は」
【では後を頼むぞ王女。我にはやることがある】
「判った古龍よ、任せて貰おう」
(※ヘクトパスカル、羽ばたいて空へ)
(※布と棒で出来た担架で天幕へ運ばれるA)
「大丈夫か、A……」
「E王女……」
(※憔悴しきったAの前髪を書き上げるE王女)
「BとFを連れ去られたとは辛かろう」
「僕が……」
「言うな。お前があの二人を守る為に戦ったのは判る。恐らく手ひどく小賢しい手段を使ったのであろう。古龍が治癒魔法を使ってもなお、お前が憔悴したまま、というのをみれば、どれだけ痛めつけられたか判ろうというもの……よよよ」
「……」
「ともかく、今は休め。進軍も出来ぬ。どちらにせよ時間はある」
「……はい、王女様」
「Eでよい、といったではないか」
(※E王女、優しく微笑む)
「薬師を呼べ。二、三日はここでAの回復を待つ」
「は」
(※E王女の横に、口元をマスクで覆った薬師が来る)
「頼むぞ」
「はい」
(※薬師、Aの脈を取ったり熱を測ったり)
「Aさん、しっかりしてください。あとで対応対策を考えましょう……いまは眠ってて下さい」
(※A、頷く。消えるナビ)
「…………」
(※薬師、助手たちを読んでAの服をゆったりしたものに着替えさせる)
(※枕元に畳んでおかれるAの服とセマーリンの納まった胸に装着するタイプのホルスター)
(※薬師たち、かいがいしい介護。薬を飲ませ、手首に魔法道具のブレスレットを填める)
「龍の脳に出来る宝石で作った治癒効果アイテムです。二日もつけていれば、自力で立てるようになると思います。どうぞお休み下さい」
(※薬師、麗々しく頭を下げて下がる)




