表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/87

その72・裏切りの銃弾


▼その72・裏切りの銃弾

「せーの」

(※圧縮空気で火種を作るファイヤーピストンで火をおこすA)

「おー、器用だねえ」

(※燃え上がる焚き火)

「えーと、塩と胡椒……っと。ラジオ会館の1階にあるコンビニに色々残ってて良かった」

(※グツグツと煮えている布を枠に張っただけの『布鍋』中で煮えている香草と鶏肉へ、味塩コショーの類いをかける)

「カレー粉持って来りゃ良かったかな?」

「なんかさりげなく禁断のモノを持ち込んでませんか?」

「まあ、これぐらいは……しかし布鍋はホント、燃えないなあ」

「上手いこと思いつくわよね、昔の人は」

「水は一〇〇度以上にならないからねー。耐水布なら水も漏れないし。紙でも出来るってきいたことある」

「そんな勿体ないことできるのは王侯貴族ぐらいだと思うけどな……お、そろそろ煮えてきた」

(※F、煮えた鍋の中身をスプーンで木の椀によそっていく)

「そうか、この世界じゃ紙の量産とかむっちゃ難しいもんなあ」

「そういえばあのビルの中、冗談みたいに本がいっぱいあるけど、凄いわよね」

「なんだそりゃ、そんなお宝の山があるのか?」

「うん、まあね……多分、他にも色々あると思う」

「他にもって?」

「彫刻みたいなやつとか、まあ色々」

「ふうん……」

「というか、あの建物は武器だから」

「武器?」

「うん、たぶん。今の戦いが終わったら、あれは盗賊都市最大の武器になると思う」

「???」

「それちょっとわかんない……あれは武器にしちゃうといやだな、あたしは」

「……???」

「文化侵略ってそこそこに強力なんだ、うん……まあそれにヘクトパスカルも暗殺者のCさんもあそこがあると喜ぶし」

「そうね……」

「おいおい、あの暗殺者Cとお友達なのかよ?」

「あのビルの中だったら、だけどね」

「へえ…………まったくお前等、大した奴らだよなあ。どうだ、盗賊辞めて、いやそのまま傭兵ギルドに来ないか? 優遇するように上に掛け合うぜ?」

「え?」

「うちら傭兵だってさ、先の事を考えないとやっていけねえ世の中だろ? そのファイヤーピストンみたいにさ、色々大事だと思うんだよね。これからの世の中、色々動きそうだし」

「この先かぁ……考えたコトも無かったなあ。ふつーにまた盗賊見習いに戻るだけ、そうさっきもBと話してました」

「ま、そうしちまうような盗賊ギルドなら先は見えてる、ウチに来い。出世させてやるぞ」

「ちょ……」

(※怒りそうになるBの腕を掴むA)

「うーん、分不相応の出世はそれはそれで僕の望みじゃないですし、そこまで盗賊王のG様が愚かだとは思ってません」

「まあ、そりゃそうだろうが、大きな組織で、しかも商人とつるむと大抵、変な見栄だの年功序列だのが幅を利かせるからなー。そこんところはB、あんたも自覚してるだろ?」

「う……」

「まあ、あんたらヒト族はオレらエルフよりも寿命が短い。ろくに出世もさせてくれないところで、変な義理立てして使い潰されるようなら、ぽんと出てこい。オレはいつでも付き合ってやるぜ? 長く生きすぎるより、短く激しく生きたいからな、ハハハハ」

「ゴーカイさんですねえ。Fさんは」

「エルフとしちゃあ雑だがよ、相棒としてはBと同じぐらい頼りにしてくれていいんだぜ?」

「な、なんでそこであたしの名前が……」

「ん? 生まれた時からの幼なじみだろ? そりゃ普通最高の相棒じゃないのか?」

「そ、そういう意味なら判りますけれど……でも、コイツが従、あたしが主ですから!」

「そうなのか?」

「まあ、ハイ」

「ふうん……ベッドの上じゃ大抵……」

「わー! わー! わー! わー! わー!!」

「わーわー! わー! わー! わー! わー! わー!!」

(※AとBふたりとも真っ赤になってワタワタ)

「仲いいよなあ、お前ら、ホントに」(※呵々大笑(かかたいしょう)するF)

「…………」

「……か、からかったんですね?」

「いや、今のは割と本気だった」


(※F、素早く銃を抜いて撃つ)


「!」


(※B、腹部を撃たれて倒れる)


「すまないね(※Fの口からY崎課長の声)」

「な……なんで? ナビさん!」

「すまないが、量子干渉でこの周辺にはもう君が頼りにする『天の声』はとどかないようにしたんですよ、うん」

(※Fの顔から全身がブロック状に分解し、Y崎課長に変形)

「さて、満腹時に人間が撃たれるとどうなるか、ご存知ですか? 特に胃の場合」

「…………いつすり替わった!」

「彼女が狩に行ってるときですよ、うん。君の『天の声』もそのあたりから遮断してますが、彼女との共同作業で気付かなかったようですね、うん? 油断大敵です、うん」

「…………」

(※ぎりぎりとAの奥歯が鳴る)

「さて、満腹時に胃を撃たれると人間がどうなるか? の答えです、うん。まあ大抵胃の内容物が体内に漏れるとそれだけで炎症を起こし、甚大な内臓への損傷を起こします。ショック死も起こりかねない…………まあこの世界の人間は我々よりも多少頑丈のようですが、それでもその身体からすれば出血と内臓へのダメージであと10分以内に手当てをしないと死にますよ」

「!」

(※治癒のスクロールを取り出そうとするA、銃弾でスクロールを吹き飛ばすY崎課長)

「これで治癒魔法は使えませんね、うん」

「貴様……」

「まあ、君があの『天の声』なしでは平々凡々な人間で良かった」

「取引だろう? でなければBをこんな目にあわせるもんか」

「そう、君にはお願いがあります、うん」

「…………いってみろ」

(※Y崎課長、笑う)

「察しのイイ人は好きですよ、うん…………」

「早く言え!」


「E王女を暗殺しなさい、うん」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ