その68・勇者暗殺計画
▼その68・勇者暗殺計画
「…………なるほど、三角測量ですか。さすが宇宙人」
「いやーそれほどでもー♪」
「デタラメというか豪快というか」
「あらら」
(※コケるキャーティア少女たち)
「でもまあ、そういうものでしょう、宇宙人だし」
「そんな軽い納得でいいの?」
「しかたないんじゃないですかね。時は元に戻せませんし……というか逆に量子アンカーが彼女たちの宇宙船を巻きこんだとしたら、彼女たちが出て行くタイミングで逆探知が出来ますよ?」
「なにそれ? 量子アンカー? 宇宙船があたしたち以外にもいるの?」
「えーと、じつはですね……」
(※宇宙船格納庫、眠り続けているヘクトパスカル、B、Fたち)
「…………というわけで」
「へー。すげーさすが日本腐ってもマーヴェラス!」
「トコトン肯定なんだ……」
「そりゃそーよ、地球文明がバイオレンスと宗教と欲望にまみれてるのは知ってるもの! だからこそ面白いし楽しいし、だーい好きなの!」
(※それまでゴロゴロしてた他のキャーティアたち、いきなり立ち上がって「ダーイ好きなの!」と唱和)
「えーと、遠回しに馬鹿にされてるのかリスペクトされてるのか判らなくなってきたんですが……」
「こういうときにいい言葉があります『考えるな、感じろ』」
「それって山ほど訓練したら下手に状況を判断することで脳のリソースを消耗するんじゃなく、状況をコントロールするように無意識下でやったほうがいい、っていう効率の話だったよーな」
「あら、やなことを言いますね」
「ブルース・リーは、ウェブの会話でやたらマウント取る人が多い時期があったんで、個人的に色々調べたことあるんです」
「なるほど」
「でも量子アンカーかー、それならあたしたちの宇宙船を巻きこんだわけねー、その時ワープ中だったから、多分アンカーに引っ張られて下敷きになったんだわ」
「フクシューだー!」
「フクシューダー!」「むしゅーだー!」
「こらこら、あたしたちがそういうこと言っちゃ駄目でしょー」
「ちぇー」
「ちぇー」
「ちぇー」
(※場面転換)
(※明るいオフィス、迷彩服の男性がY崎課長の前にいる)
「あの計画書、通ったんですか?」
「そうだ、うん。だから君に部隊を指揮して欲しいO山君、うん」
「構いませんが、課長、AI判断とはいえ、いいんですかね?」
「効率の問題だよ、うん。……間違っていても実行が速ければ結果も早く出る、修正も出来る、うん、いいことです」
「確かにそうですが。転生勇者ということは本当に公開しちまうんですか?」
「当然ですね、それぐらいで戦意が下がるような人間は要らんです、うん。むしろ危険ですね。金づくで危険を買う連中が欲しいですね、うん。だからO山君、君に束ねを任せるわけです、うん」
「判りました……ですが、あの最終兵器、本当に使うんですか?」
「当然だ、それが今回の重要ポイントだからね、うん」
(※Y崎課長、マウスをクリック)
「まあ、せっかく手に入れた最終兵器なんですからね、うん。こういう所で惜しみなく使わないとね、うん……私が肉体を失った甲斐がないというモノです、うん」
(※画面に映る金属タンク)
「それと、例の龍に対抗するもっとも安価な手段ですからね」
「本当に大丈夫なんですか?」
「まあ、こちらの処置が解けたとしても、あの中身と龍は相打ち、生き延びたとしてもボロボロでしょうからこちらの手でトドメをさせばいいです、うん」
「しかし、量子アンカー周辺がまるっきり近づけないというのは困りもんですね。相変わらずレーダーもドローンも無効化ですか。奴らがあれに気付いたら厄介なのでは?」
「そこは気にしないでもいいでしょう、うん。彼等は魔法文明で、なんとか我々の世界で言う所の20世紀初頭のテクノロジーレベルにきた、というところです。量子論まで到達はしていない。それに、いざとなったらアンカーごと解除すればいいのですから、うん……いやむしろ、先に彼等を叩くという手もありますね、うん。量子アンカー付近を調査させましょう」
「そういえば調査部が最初に設置するときに妙な波があったという話ですが……」
「五回前の時もありましたが、問題はありませんでした。AI重役たちが問題視しないのなら大丈夫でしょう」




