その64・禁断地帯の猫耳エルフ
▼その64・禁断地帯の猫耳エルフ
(※空を飛ぶヘクトパスカル)
(※その首に縄を巻いてしがみついているAとB、そしてF)
「いやー、ドラゴンってはええ!(F、目をキラキラ)」
「しかし風が吹き付けてこないといい感じだよねー」
「…………あんたら絶対、変! 高いのよ? 冗談みたいに、落っこちたら死んじゃうんだからね?」
「Bは高いとこ苦手? 盗賊なのに?」
「ち、違うわよ! 高すぎるの! こっからおちたら体術じゃどうしようもないでしょうが!」
「そのための浮遊のスクロールでしょ?」
「この前消えちゃったりしたじゃない!」
「あれはあの待ちの上空に反魔法の結界が張られてたからでしょ?」
「そりゃそうだけど……ブツブツ」
「まあ、確かに怖い高さではあるけど、ほら、こんな所まで来られる人間って僕らぐらいだよ……ありがとう、ヘクトパスカル!」
【まあ気にするな友よ。お前はオタ友であるからな】
「……オマケに龍と話して平気だとか、やっぱあんたおかしい!」
「かなあ?」
「まあ、エルフでも滅多にいないね、あんたみたいなのは」
「さて、そろそろ近づいてきましたよ」
「あ、あのちっちゃな森?」
「そのようですね」
【ぬ……友よ、不穏な感じがするぞ】
「え?」
(※次の瞬間、閃光が煌めく)
(※全部が真っ白に変わっていきホワイトアウト)
「え?」
(※巨大な切り株の上。撃ち込まれた金属の杭とロープで、両手両脚を大の字に縛られているA、真っ暗な森の中。そばにはヘクトパスカルとB、Fが眠っている。縛られているのはAだけ)
(どんどこどんどこどここ、どここここ……と太鼓の音)
「えっほーえーほほえのえっほっほーお、えっほーほほほのえっほんほ♪」
「な、なんだ、どこからともなく『キングコングのうた』みたいな……って、え!」
(※暗闇の中から全身をすっぽり覆うような木の仮面をつけた、腰ミノに槍もちの10~12歳ぐらいの少女たちが躍り出てきてAの周囲を回り始める)
「わわわ、なんだなんだ、この今の社会リテラシー的に色々マズイ感じの人たち!」
「(どこからともなく声)我らは猫耳エルフ……怖いだろう、怖いだろう。怖いだろう……ふふふふふ、この禁断の地に近づく愚か者よ、我らが舞いをとくと見るがよい」
(どんどこどんどこどここ、どここここ……と太鼓の音)
「えっほーえーほほえのえっほっほーお、えっほーほほほのえっほんほ♪」
「えっほーえーほほえのえっほっほーお、えっほーほほほのえっほんほ♪」
「えっほーえーほほえのえっほっほーお、えっほーほほほのえっほんほ♪」
「えっほーえーほほえのえっほっほーお、えっほーほほほのえっほんほ♪」
「うわ、チャムチャムみたいなのが輪になって踊ってる……っていうか、誰かー! なんかこれ、食われそうな流れなんで助けてー!」
(※踊る少女たちの一人が足を停める)
「あんた、やっぱりこの世界の人間じゃないんだ」
「え?」
「さっきチャムチャム、って言ったよね?それゲームのキャラの名前でしょ? それにあんただけ妙に瞬間催眠ライトのかかりが浅い、ってのもおかしいし」
「ゲームって……君たち、一体ぜんたい……」
「よかったー。文明人がキター!」
(※万歳する少女、大きな仮面を取る)
「え?猫耳少女?」
「人の耳もあるよー。アタシたちはキャーティア!」
「キャーティア?」
「……あ、そうかえーと、つまりあれだ、君西暦何年から来たの?」
「……ですけれど?」
「ああ、えーと、アメリカの大統領は?」
「トランプだかカードだかって人だったかと」
「じゃあ、あたしたちとは違う世界から来たのね。でもまあいいや、とにかく魔法じゃない機械文明の人たちが来てくれたのは有り難いわー」
「へ?」
「あらためて自己紹介、あたしたちはキャーティア、別の平行世界において、地球と友好関係を結んだ異星人!」
「いせい……じん?」
「エイリアン、宇宙人、なんとでも。まあよーするに余所の星からやってきたの」
「なんでその格好?」
「並行進化の奇跡よ! 私たちはネコから、アンタたちは猿から! 進化した末によく似た形になったわけ! これぞ奇跡! 宇宙の神秘!」
「ホントは擬態とかじゃないの? ホントはぱかーって頭が割れて中からゴキブリみたいなのが……」
「それはないってーほらほら、この尻尾、猫耳! 触ってみ、触ってみ」
「縛られてます」
「ああ、そうかそうか、ごめんねごめんね」
(※少女、縄を解く)
「なんで日本語を……いやそれは僕の特性だから判るとして、チャムチャムとか知ってるの?」
「そりゃ、好きだからよ」
「え?」
「地球文明ダーイ好き!」
(※少女の後ろで他の少女たち『ダーイ好き!』と唱和)
「だから地球に観光旅行に行くはずだったの! でも、恒星間移動する最中にエンジントラブルというか何かに巻きこまれてこの世界に落っこちてきたのよ。そしたら戦乱最中だし、魔法文明だしで、宇宙船の修理もままならないから、仕方ないんで、救援隊がくるまでココを結界で覆って、近づけないようにしたってわけ」
「はー……つまり遭難者?」
「そーなんです、はい!(ニッコリ)」
「駄洒落まで言うぞ、この宇宙人……」
さて、シッチャカメッチャカになってきました
行き当たりばったりなのでここが醍醐味




