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その56・闇を裂く名刺

▼その56・闇を裂く名刺


「えーと、ああ、またナビさん消えちゃった」

「あんた、ホントに行き先判ってるの?」

「判ってる判ってる。僕の『見えない友だち』が見える方向が正しい地上」

「ちょっと! そんなんでいいの?」

「他に何か見つける方法があるんだったら教えて」

「…………これで間違ってたらタダおかないからね!」

「……二人トモ、静カニシロ。敵ノ真上ダゾ」

「……はい」

「はい」

(……なんでこんなのが私の運命の男だ、などとと思った? タダの変人ではないか)

「えーとこっち……だろうな。少しボンヤリ姿が見えるから」

(※足音が響く)

「脱走者はまだ見つからないのか!」

「はい、現在くまなく探しておりますが……」

「通風口だ。ここまで探して見つからないなら通風口に『犬』を放て」

「『犬』ですか? あれは手加減も捕獲も機能にありません」

「この際だ、記憶データよりもネズミの始末を優先させる」

「了解であります」


「えーと、通風口にいるってバレるのは時間の問題みたいね」

「そうだねえ」

「どーすんのよ?」

「仕方がない、適当な部屋の中に出よう。なんかこういう会話で二重鍵カッコ付きで表現されるものって大体おっかない物、って相場が決まってるし」

「例の機械の中の夢のおかげで、あんたがなにいってるかボンヤリ理解出来るのが嫌だわ……」

「さ、この辺だね……よっこいしょ…………こらしょ……っと」


(※六畳ほどの大きさのロッカールーム。A、最初にロッカーの上に降りてそこから床に降りる。B、Cも同じ)


「えーと何か工具は……」


(※A、ロッカーを開ける)


「わ! こ、ここ女子更衣室?」

「何ビビってるの、まったくベッドの上じゃドラゴンのくせに」

「べっど? どらごん? ナンダソレハ?」

「コイツね、普段こんなんなのにベッドの上じゃ……」

「わー! わー! 勘弁してよ! こんな所で!」

「ソレ以前ニ、声ヲ落トセ」

「と、とにかくドライバーがあるからこれで…………と」


(※A、上に登って通風口の網からハッチ部分のラッチを閉める)


 ぎゅん!


(※何かが高速で閉めたばかりのラッチの上を過ぎる)


(た、多足歩行で両脇にマシンガン装備した自動兵器…………一瞬遅かったらあれ、こっちに落っこちてきたんだろうなあ……おっかない……)


(※A、そっと床に降りて、唇の前に指を立てる)

(※B、C、頷く)


『あー、あー、あーうん。逃亡者に告げる、逃亡者に告げる』


「!」


『私はここの責任者でY崎と言います。君たちには敵意はないのですが、仕事なので場合によっては抹殺も有り得ることをお断りしたいのです、うん』


(Y崎って……あの課長?)


『君たちをトコトン追い詰めて駆り立てる、というのも手なのですが、私は労力を無駄に使うのが嫌いです。よってこれからあなたたちの精神に訴えることにします』


「(小声)精神に訴えるって何?」

「(小声)わからないけど、覚悟はしておいたほうがいいかも」


『では、これより、君らが我々のハッピースリープアワーマシンで、自分の欲望に忠実になった際の場面を再生することにします』


「!」


『まず最初は暗殺者Cさん』



【はにゃーんにゃーん! Aくんはどうして赤くなってるのかにゃ?】


「誰?」

「誰?」

「…………」


【うふふふ、お姉ちゃんのおっぱいがあたってるから? それともCお姉ちゃんの腕の中にいるからかにゃあ?】


「!」

「!」


(※A、B、Cを見つめる)

(※C、凍り付いている)



【今日は、おかーさんもおとーさんも帰ってこないからぁ、おねーちゃんと仲良くなろう♪ ほら、触って、こんなにドキドキしてるの♪】


「…………!」

(※C、顔真っ赤)


【おねーちゃんはねー、昔っから弟が欲しかったんだー。それもAみたいに可愛らしくて女の子みたいな♪ だから最初にあったとき嬉しかったんだよォ】


【うふふふ、ほらほらーおそろいの下着だよぅ♪】


「あれ……ひょっとして……」

「ひょっとすると……」


(※A、B、Cを見る)


【うふふふ、可愛らしい。んーたべちゃいたい、色々と! さあA……お姉ちゃんの……】


「○~×■+△×@$"#×!(意味不明なわめき声)」

(※C、ドアを蹴破って外に出る。高速で疾走)

「あっ!」

「殺ス! 殺ス! 私ノ恥ズベキ幻ヲ公開シタ者ハ皆殺ス!」

(※半泣き真っ赤でナイフを握りしめたCの前にゾクゾクと詰めかけてくる兵士たち、次々と血祭りになる)

(※疾走するC、やがて吹き抜けの場所へ出る)


「やあ、出てきて下さいましたね?」


(※背広姿でメガネ、頭の薄い中年男性が出てくる)


「あなたが脱走者の中で一番ストイックだったので効くだろうと思っていましたが」


「殺ス!」

(※高速で移動するため姿がかき消えるC)


「ご挨拶を」


(※白い名刺が空中を何十枚も疾り、血飛沫)


「!」

(※C、身体中に名刺を突き立てられて仰向けに倒れる)


「自己紹介には少々多すぎましたかね? 私の名刺」


(※微笑むY崎課長)


「ですが、一枚3000円もする高級品です。三途の川を渡るには十分過ぎる価値でしょう」

(※Y崎課長の指先に新しい名刺)

「では……」

(振り下ろされるY崎課長の手)



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