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その49・戦雲戦乱、嵐の中を(4)


▼その49・戦雲戦乱、嵐の中を(4)


(※疾走する傭兵部隊。敵の陣地から魔法の波動。同時に周囲に居た幻影部隊が次々と消えていく)


「どうやら幻は破られたようだな」

「いつまでもごまかせるものじゃないですよね」

「魔法防壁のスクロールは前方に集中させるぞ。側面からの攻撃に耐えさせるほど残ってないしな。それと魔法(エンチャント)付与(ウェポン)兵器はギリギリまで使わない……これでいいか?」

「はい。その代わり側面には片っ端から爆炎魔法を撃ちまくらせて下さい」

「了解だ、A軍師殿!」

「軍師じゃなくて盗賊ですってば!」

「だいぶ状況はマズイですね。ヘリが七機、フル装備燃料満タンで離陸します。拠点防衛用に残してたチェンタウロが3台。さらに拠点防衛要因300人、こちらは今200人ですから」

「判ってます。それでもナビゲーションお願いします、僕らが一人でも多く勝てるように」

「わかりました……難しいですが、やってみましょう……あれ?」

「どうしました?」

「いえ、こちらの観測ミスですかね? あ、ヘリが来ます!前方11時、13時の方角!」

「総員対空防御スクロールを!」

(※Aの命令に合わせて全員スクロールかざす。打ち込まれたロケットランチャーやバルカン砲を受けて魔法陣発動、激しく震動&しなった後色が薄くなる)

「こりゃあと三回ぐらいが関の山だな……敵陣まで300メートル!」

「チェンタウロがこちらに照準を合わせました。45口径120mm滑腔砲じゃなくて52口径105mmライフル砲ですね」

「ライフルだから威力が小さい、じゃないんですよね?」

「ええ、ライフリングが刻まれてる砲で、こっちのほうが口径は大きいです」

「前方に残った防御スクロールを展開、押し出すぞ!」

(※チェンタウロ装甲車砲撃開始、さらに横に居る歩兵たちがロケットランチャーなどを発射、次々と防御魔法陣に命中して魔法陣の輝き……強度が下がっていく)

「思ったよりも火力が強い!」

「二分持たないぞ!」

「判っています……うわあ!」

(※魔法陣が破裂するようにして消失、砲弾が飛んできてAの側に着弾、AとF、放り出される)

「!」

(※地面に落下するときに受け身を取るがそれでも勢いよく転がって砲弾で掘り返された土にぶつかって停まるA)

「く……あ……」

「しっかりして下さい、打撲と着弾で耳がおかしくなってる以外は無傷ですよ!……って耳やられているから聞こえないのか」

(※A、フラフラと立ち上がる)


(※魔王軍陣地)

「こんな子供までいるのか……」

(※魔王軍の陣地で狙撃ライフルを構えた兵士)

「(指揮官から通信)外見に騙されるな、異世界人だぞ!」

「了解!」

(※狙撃スコープの真ん中にふらふらと立ち上がって周囲を見回すAの心臓が入る)

「おやすみ、坊や」

(※スナイパー、引き金を引く)


(※銃声)


(※地面に倒されるA、Bの顔アップ)

「え? なんでこんな所にいるの?B!」

(※Bの背後で彼女が放り投げたと思しいスクロールが大量の煙を発生させている)

「王女様を安全地帯まで送ったから戻ってきたの! そしたらなんでフラフラ歩いてるのよばか!

「あれ? そういえばどうして……そうだFさん!」

「A? なんかBの声もした気がする……オレももうダメかもなあ」

「いた!」

(※地面を這うようにして駆け寄るAとB)

「うわ……右の太腿から骨が」

「治癒スクロール持って来ました」

「ありがとうよ……くそー砲撃受けて骨折るなんてオレも堕落したもんだぜ」

「だめ……スクロールが小さすぎて骨は元に戻ったけど傷口が……あと一つあるから……!」

「包帯と薬草が右のパウチに入ってる」

「あ、はい」

「それと……右肩と左の足首も折れてるみたいだ。オレは置いてけ。部下を頼む」

「…………残念ながら今の砲撃で、他の皆さんは全滅しました」

「…………もう、誰も残ってません」

(※A、身体中震えてる。よく見ると周辺にさっきまでの仲間の「残骸」が転がっているのを見たせい)

「じゃあますますだ、オレを置いて二人で逃げろ……B、やっぱり本妻だな」

「本妻じゃありません! 本妻はFさんです」

「いいさ、無理して譲らなくても。好きな男はしがみついたら離れるんじゃねえぞ」

「…………」

(※Bの目から涙が溢れる)

「ダメです、せっかく生き残ったんですから見殺しに出来ません」

「オレを置いていけ! 無駄に死ぬな!」

「くそ…………」

「残念ながらFさんの言うことが正しいです。現在ヘリもチェンタウロも狙撃兵もこちらへ狙いを定めています。あと二〇秒後には指揮官の命令一下、攻撃が始まります、急いでここを離れないと!」


(※敵陣)

「子供ですよ! 降伏勧告をするべきです」

「ダメだ。異世界人だぞ、Y田とT中が捕虜にしたのはあのガキだ。あの二人がどうなったと思う?」

「それとは別だ、今ここであの少年達を始末しなければ、恐らく、奴らは俺達を甘く見る……つけあがらせるよりも恐怖を刻印する。撃て。カウントダウン8」

「……了解。8、7……」

「了解……6、5……」


(※Aたちの周辺にヘリがホバリング、チェンタウロ装甲車の砲身もこっちに狙いを定め、スナイパーのレーザーポインターがAたちの上に点を作る))


「A、早く行け! 生き延びろ!」

「くそ……でも……っ!」

「あ、ちょっと待って下さい、今こっちの観測に……」

(※空に閃光)

「え?」

「何?」

(※空に走る閃光、一瞬で魔法陣を作り上げる。そこからさらに赤みがかった光が無限の線となってヘリを落とし、チェンタウロを両断、敵の陣地の土壌に含まれていた水分が水蒸気爆発を次々に起こす)

「な……」

(※呆然と空を見上げるAとB、魔法陣の中から古龍の姿が現れる)

「あれは……」

【久しぶりである、我が友A!】

「古龍、ヘクトパスカル……」

(※空をよぎる巨大な影)


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